混迷、元義妹の絶叫。
気を取り直し、俺とれみが隣同士に座り、そして先輩と健が移動して、さぁこれからってときに、異変がおこった。
「あの、れみ?」
「はい、なんですか? 瞬さん」
「・・・・・・・・・」
「れみちゃんなんで腕組んでるの?」
この際、瞬さん呼びしているのは置いておこう。そんなことよりもだ、
健の指摘したとおり。れみは俺の腕を抱えるようにして、抱きしめている。それは恋人同士がよくやるような腕組みの形だ。
そのせいで服越しにれみの体が当たったせいで無駄にドギマギする。接触する面積が広いから、余計に田。なんとも忙しない心理状態に陥りかける。
「普通です・・・・・・・・・」
「えっと、れみちゃんのお父さんとお義母さんは常日頃誰かと会っているときでもそんな風に腕を組んでいるの?」
「そのとおりです」
「嘘だろ!?」
「本当です」
だってあの家で暮らしていたときそんな二人見たことなかったぞ!?
「兄さんが出ていってから二人はこうするようになったのです。私も幼いながらにこんな夫婦になりたいと憧れる理想の姿です」
だとしたらなんとなくショックだよ俺は。
「なるほど・・・・・・・・・」
「じゃあしょうがないか。リアリティーあるし」
「いやいやいや! さすがにこういうときくらいはあの二人離れてるだろ!?」
「いえ、家にお客様がくるときでも地震がきても火事になっても常にくっついています」
「あの二人頭おかしいんじゃねぇの!?」
「なんてこと言うんですか」
お前はいいのか!? そんな両親で! 俺はなんかやだよ!
「では兄さんは嫌なんですか? こ、これも私達の将来のためでしょう? 私はそうおもっています。しょ、将来のためのよ、予行演習なので・・・・・・」
「う・・・・・・」
それを言われると、弱い。
俺とれみが二人に認められる、ある意味仲の良い関係に戻る将来のため。そのための予行演習なんだから。れみもそれだけ真剣ということなのだ。
「わかった、じゃあこのままでってことで・・・・・・」
「まったく、瞬さんはしょうがない人です」
「いや、だから今の俺はお前の父(正)だからな?」
できれば早く終わってほしい。落ち着かない。
心の中で必死にれみを意識しないように唱え続ける。
「ちょ、もじもじしないでください」
「しょうがないだろ?」
なんとも落ち着かない状態だけど、そのまま何度目かの予行演習はスタートした。
「ええ~~っと、久しぶりだね、瞬くん?」
れみとくっついているせいで、演技に集中できない。無駄にドキドキしちゃって、僅かな旨の膨らみを意識しないようにれみは妹、大切な妹だと自制し続けなくちゃいけないんだから。
「え、えっと・・・・・・・・・うう・・・・・・・・・」
お前もかい。
俺以上に恥ずかしくなってテンパってんじゃねぇか。
体温上がってるの肌で感じるぞ、物理的に。
「しゅ、瞬さん。私達の息子が会いに来てくれて・・・・・・・・・それで・・・・・・・・・あれ?」
ほら、役柄までわからなくなってるじゃないか。正じゃなくって俺の名前呼んじゃってるじゃないか。
だからあれほど瞬さん呼びはやめろと!
「お義父さん! 多くは語りません! 今日はお願いがあってきました!」
一旦中止したほうがいいんじゃないかって心配してたタイミングで、先輩が大声で叫んでおもわずビクッとした。
「娘さんと会うことと、この家とあなた達の財産を根こそぎ全部ください!」
「なに最低最悪なお願いな仕方してんだあああ!」
そして先輩は土下座の状態で動かなくなった。
「お願いします!」
「あんたにとっては俺がそんな最低なことする人間に見えてるのか!? ショックだよ!」
「お願いします!!」
「しかもなに続行してんの!?」
「それとあなた達の生命保険の受取人を俺にしてこの家で終生養ってください!」
「続きがあったよ! 寄生する気満々じゃねぇか!」
「了承してくれるまで頭上げないしここから一歩も動きません!」
「しかも下からお願いする側のくせに要求が強すぎんだよ! あつかましい! しろってか!? 本番で俺にそうしろってか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「れみも! 黙らないで! それは俺がそうなるって不安からじゃないよね!? 違うって言って!」
「えっと、私は今お義母さんで瞬さんは兄さんで夫で先輩が兄さんで・・・・・・・・・あれ? 兄さんが二人?」
「まだ誰が誰を演じているかわからないからだったああああ! よかったあ!」
いや良くない!
このままじゃ成立しない。
「だめだ健! 一旦止めるぞ! 中止!」
「なぁ、瞬。飲み物なにもらっていい~~?」
「飽きるなああああ! せめて最後までやり通せええええ! 演じきれええええ! 飲み物とりに冷蔵庫まで行くなあああああ! こっち戻れえええええ!」
「はっ!? 兄さんが二人!?」
「お前の兄さんは俺だけだよ! しっかりしてくれ!」
「お義父さん! お願いします!」
「あああああ! うるせえええええ!」
我慢できなくて、立ち上がろうとしてしまった。れみが俺に抱きついているのを忘れていたほどに。
「きゃ!?」
れみの小さい悲鳴で、ハッとして支えようとしたけど、そのまま引っ張られて二人とも倒れこんだ。
「あ」
「えっ」
れみを押し倒す体勢で、そして咄嗟に庇おうとしたせいで、腕がれみの体の下に。反対の手はれみの頭の下。そのせいで腕が床と挟まれる形になって、二人分の体重の重みと打ちつけた箇所が、痛みで痺れている。
けど、少しの間が空いて顔になにか柔らかい物に触れているのをゆっくり自覚していく。
体の上半身、主に胸に顔を埋めているのだと。
「!?!?」
もう頭の中はパニックだ。
「あらま」
「お?」
「い、い、い、」
金縛りにあったときみたいに動けずにいて、やっと状況把握ができ起き上がろうとしたとき。
「き、」
俺よりさきになにがおこっているか判断したであろうれみは、全身が震えている。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そして、絶叫が響き渡った。




