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予行演習

と、こんな流れで予行練習が行われているわけだけど、上手くいかない。


「もう、瞬くんなにやっているのよ。あなたさっきからツッコんでばかりいるから全然上手くいかないじゃない」

「ツッコまざるをえない台詞と人選に問題があるのでは?」


 俺だって好きでツッコんでいるわけじゃない。


「それには同意します。特に健さんが演じているお父さんには、違和感がするのです」

「え、デジマ?」


 自覚なかったんかい。


「そうかぁ~~。じゃあ役それぞれ変えてみるか」

「そうね、そっちのほうがいいかもね」


健=瞬

瞬=れみ

先輩=母親

れみ=父親


 という具合で役が決まったけど、性別すら変わっちゃったよ。また変な流れになりそうだな。


「ええ~っと、私がお父さんで兄さんが健さんで兄さんが私で・・・・・・・・・先輩がおかあさんで??」

 

 れみもテンパっているのか、ブツブツと呟いている。


「れみ、大丈夫か?」

「兄さんの分際で私の心配なんて何様ですか?」

「

「人の心配をする暇があったらご自分の役をしっかりと演じてください。兄さん・・・・・・いえ瞬さん」

「なんで下の名前呼び?」


 俺の役はれみなのに。

 

 よっぽどテンパってるってことか。大丈夫だろうか。


「瞬・・・・・・・・・あなた、大きくなったのね・・・・・・・・・」

「お、おおう・・・・・・」


 また予行練習がスタートしたわけだけど、先輩の演技力が凄まじい。


 母親とは長いこと会っていないし、今の母親がどうなっているかはわからない。けど記憶の中にある母親の性格と俺達の事情、そして経た年月からこうなっているんじゃないかってくらい、先輩の演じている母親は、らしい。


 俺だけじゃなくってれみまで目を瞠っているくらいだ。


「ご、ごめんなさいね瞬・・・・・・・・・私のせいで・・・・・・・・・う・・・・・・」


 遂には嗚咽を漏らしはじめた。もう母親の生き霊が乗り移っているんじゃないか?


「え、えっと。母さん。積もる話はあるだろうが今はそれくらいで。今は瞬くんとれみの話だろう」


 れみも慌てたかんじだけど、やっぱり常に暮らしている家族だからか様になっている。喋り方、態度が堂に入っている。


「それで、瞬くん。以前私が話したことを覚えているだろう。だのに、なにをしにきたんだね?」

「はい! お義父さん! 今日はお願いをしにやってきました! ね~~、れみ!?」

「そ、そうですね兄さん」

「ちょっと待ってください兄さん」

「なんで!?」


 れみからストップが入った。え、どこかおかしいとこあった?


「兄さん呼びじゃなくって、そこは瞬さん呼びで」

「そこ拘る必要ある!?」

「嫌なんですか?」


「様々な呼び方を試すことで相手がどんな反応をするか、たしかめるのも必要でしょう」

「あ、それいいわね」

「んじゃそうしようぜ」

「え、ええ~~~?」

「兄さんも我が儘言わないでください。このままでは進みませんよ」

「我が・・・・・・儘なのか?」


 先輩と健も賛成しているから、俺だけが悪いって同意せざるを得ないけど、なんか納得いかない。


 でも、三人に圧されるのに勝てないし、なによりこのままじゃ進まないし。


「んじゃあ続きな? お義父さん!  今日から俺の異形鉄筋はれみさんだけの専用です!」 

「下ネタじゃねぇか!」

「できればれみさんというコンクリートに突っ込まれて末永く鉄筋コンクリートみたいに引っ張り強度にも圧縮強度にも耐えられる二人になりたいです!」

「しかも意外としっかりしてる考え方っぽく繋げるのやめろ! 建築・土木の大学生にしか伝わらないこと言ってもわかるわけねぇだろ!」

「つまり・・・・・・・・・それはどういうことなのかね?」


 食いついた。れみ(義父)が食いついた!


「コンクリートというのは建築物、道路工事にも使われている物ですが、引っ張られる力に弱いのです! ですが鉄筋を入れることで引っ張られる力が強くなります!」

「ほう・・・・・・」

「しかもコンクリートはアルカリ性でコンクリートを錆びさせない性質を持ちますし、鉄筋は火に弱いのですがコンクリートは火に強いです! 相性抜群! もう産まれたときから入れられて入れることが決められていたみたいに! この意味がわかりますか!?」


 無駄に言い方がいやらしんだよ。鉄筋とコンクリートに謝れ。


「ほう・・・・・・・・・」

つまり鉄筋にコンクリートがなくてはならない存在で、コンクリートにとっても同じです! 俺とれみの関係にもそれがぴったり当てはまります! それくらい俺とれみはお互いにとってなくてはならない存在なんです!」

「ほう・・・・・・・・・」


 しかもこいつ意外とそれらしい話に纏めようとしてんじゃねぇか。とても下ネタから始まった話とはおもえねぇぞ。

 

 でも、れみはどう判断していいのかわからないみたいだ。さっきからずっと健(俺)の話に「ほう・・・・・・」としか反応できてないし。

 

 先輩(母)も「これ大丈夫か?」って苦笑いしそうなのを堪えてるし。


「うむ、なるほど。よくわかった」

「え、」


 わかったの?


「娘をよろしく頼む」

「はい! よろしくお願いします!」


 れみ(義父)と健(俺)が揃って深々と頭を下げ合っている。


「お互いにとって

「やったぜ瞬! このとおりにいけば上手くいくって!」

「私も健さん(瞬)の話に乗ってしまいましたが、お父さんだったら絶対このとおりにいけるはずです」

「嘘だろ!?」

「特に相性抜群でもう産まれたときから入れられて入れることが決められていたみたいに、という説明に心を動かされました」

「嘘だろ!?!?」

「やりますね健さん」

「デジマ!? はっはっは! 初めてれみちゃんに褒められたあ!」

「いや、ダメだろ」

「「なんで!?」」


 だっていきなり下ネタから入るとか難易度高すぎるし。普通その時点でぶっ飛ばされるだろ。ふざけてんのかって。


 俺だったら出禁にするわそんな奴。元義兄であっても、元義理の息子であっても。


「う~~ん、でもどうなのかしら。勢いと声の出し方は堂々としていたから相手の気勢を削ぐことはできるだろうけど、専門分野的な説明されても他の人には伝わりづらいかなって私はおもうわ」


 先輩は先輩で冷静に指摘してくれている。それから四人で、意見を出し合って改善点、良いと感じた部分を話しあっていく。


「それよりも私が驚いたのは先輩です。まさしく義母さんでした。霊媒師かとおもうほどです」


 おお、れみのお墨付きまで出たよ。俺もおもってたけど。


「別に難しくなかったわよ? 瞬くんとれみちゃんの話と二人の性格と聞いた話を基にこういう人なんじゃないかってイメージを膨らませたらつい、ね?」

「あんた最強か?」

「とにかく、さっきのは一つの成功例としておきましょう」


 いや、成功例の一つになんて数えたくないんだけど。個人的に。


「もっと練習をしておきましょう。本番ではなにがおこるかわからないものだし」

「じゃあまた役柄変えてみるって形で?」

「それがいいでしょう。では今度は私と兄さんがお父さん、お義母さんで」

「じゃあ私が瞬くんやるわ」

 

 先輩ならきっと大丈夫だろう。健みたいに変なことする人じゃないって信用できるし。


 そんな流れで新しく決まった役柄は


健=れみ

瞬=義父

先輩=俺

れみ=母


 ってかんじだ。


 うん、良い人選なんじゃないだろうか。


 けど、逆に俺は義父のこと演じられるのか? 最後に会ったのもれみの家に行ったあのときっきりだし。


「きちんと演じてくださいね、瞬さん」

「お前もな? お前のお父さんの名前まさしだろ?」

「気分が先行しすぎただけです。別にいいではないですか予行演習なのですから」


 少し頬を膨らませてぷくっとしてむくれているれみは可愛いけど、予行演習だからこそだ。


 仮にも夫婦なんだから、夫の名前を間違えちゃいけないだろ。


 ・・・・・・・・・大丈夫かなぁ?



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