表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干支っ娘!  作者: kure
49/71

図書館へGO

 至高の二度寝から覚めた時、既に二人の姿はなかった。

 優しく香る彼女達の残り香に深呼吸する僕は変態だろうか? いや、健全な男子だ!

 毎度恒例の神社掃除を存分に堪能した後の朝食は、優雅に高級ホテルのモーニングを食べているような気持ちにさせる。

「にぃに。今日は何して遊ぶ?」

「うーん。何して遊ぼうか?」

 遊ぶ……遊ぶ……。中々難しい課題でもある。


「あっ、神崎君、メール見てませんかっ?」

「メール?」

 中谷さんの言葉にスマホを確認すると、確かに新着メールが届いていた。

『午前十時。道場へ来られたし』

 用件のみを簡潔に書かれたソレ。送り主は言わずもがな、虎口先輩だ。


「ごめんな恵。ちょっと用事が出来ちゃったから、帰ってきてから――」

「やだやだやだ! めぐも行く! めぐも行くー!」

 服の端をしっかりと掴み、駄々をこねる恵。もうこうなると選択肢は無いに等しい。

「大丈夫だと思いますよっ! メグちゃんも一緒で!」

「そっかな……。それじゃ、連れて行くけどいい子にしてるんだよ」

「うん! めぐいい子にする!」

 無邪気に小さな手を上げる恵。彼女の可愛らしい仕草は、全ての罪を飲み込んでしまうだろう。

――幼女恐るべし。


――虎口道場――


 約束の時間。少し早めに着いたにも関わらず、既に皆が集まっていた。

「おはよう。おや、恵ちゃんも一緒か」

「はい。どうしても来るってきかなくて……」

「修司さんの妹さん――かしら?」

「あ、いえ。親戚です。わけあってしばらく家で預かる事になったんですよ」

 しばらくなのかずっとなのかは未定だけど。


「そうなんですか。可愛らしい子ですね」

「お姉ちゃんもかわいいよ! お姫様みたい!」

「まぁ。お姫様だなんて……」

 恵のお世辞? に頬を赤くする龍ヶ崎さん。ファーストコンタクトでこれほどまでに人の心をつかむとは――この幼女、できるな。


「よし、では本題に入るとするか――」

 口を開いた虎口先輩の視線が一瞬僕の方へ。

 だけど、それは僕じゃない。先輩が見たのは、膝に乗った恵。

 話の内容は大体想像できる。『鬼』の件で間違いないだろう。

 恵に聞かせてもいいものだろうか。一旦外に出て、後から改めて聞いた方が――。


「昨日、いつものようにパトロールをしていたんだが、どうやら鬼の数が増えているようだ」

 僕の心配をよそに、先輩は話し出した。

 まぁ、子供が聞いても良くわからないか。

「増えているって、どの程度ですの?」

「旅行に出る前の倍だ」

「なんですって!?」

 先輩の言葉に、龍ヶ崎さんが驚いた声を上げる。元々どれだけ居たのかは分からないが、それは余りにも衝撃的な事実だった。


「お陰で寝不足よぉ……。ほら、見て修ちゃんこのクマ……」

「おっ、おばけいやっ!」

 髪をかきあげた蘭さんの顔に恵が怯える。流石に慣れないと視覚的にキツイ。

 ってかそのクマ、標準装備じゃないのか……。


「どうして――って聞いて分かるはずもありませんよね。私達が町を離れた事に何か関係はあるのかしら」

「どうだろうな……。まるで無関係だとは思わんが、何か別な理由があるように思えるんだ」

 先輩が眉間にシワを寄せながら言った。

 分からない事は山ほどある。いや、今の僕達には分からない事だらけだ。

「何か手がかりが見つかればええんやけどなぁ――古い本とかでも」

 両手を大きく広げ、パタリと寝転んだ茜が呟く。その時だった。


「ふるい本なら、としょかんだよ!」   

 そう声を上げたのは、まさかの恵。予想外のカットインに、皆の視線が集まる。

「図書館ですか――そういえば思いつきませんでしたわ」

「せやな。家ばっか探しとったけど、図書館に行けば古い本もあるんちゃうか。めぐっちはおりこうさんやなぁ~」

 茜に頭を撫でられて嬉しそうに微笑む。ってかめぐっちって……。


「あまり大きくは無いが、町にも図書館がある。早速行ってみようか」

 先輩の一言で皆が立ち上がった。

「にぃに! としょかん行ったら絵本読んでね!」

「お、いいよ。一緒に読もうか」

 小さな手を繋ぎ歩き出す。

 無邪気な恵の微笑みは、新たな不安の種をも吹き飛ばしてしまう気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ