第二話
レジ点検で合わなかった分を僕は自分のポケットマネーから出す。オーナーの指示でお店で出た過不足金は店長の自腹だと決まっている。マイナスは店長が出し、プラスはオーナーのポケットの中に入る。理不尽かもしれないが、仕方ない。
レジ点検が終わり、僕は夢中でたくさん来るお客さんをさばいていた、夜勤の時間はワンオペだ、レジを手伝ってくれる人はいない、お客さんが途切れたその時、お店の電話がなった。オーナーだろうか?電話の画面を見たそこには知らない番号が、
「はい、お待たせしましたクレイジーマート星野駅前店でございます。」
僕はなるべく生きのいい声で電話に出た。次の瞬間、僕の背筋が凍っていく。
「あの、わたくし、塚本真由の母ですが、店長さんはいらっしゃいますか?」
塚本真由、先程の夕勤の女子高生バイトの1人だ、僕は心の中で終わったと思った。
「はい、わたくしが店長の相原です。」僕は冷静に名乗った、こういう状況は前にもあった。僕はやっぱりあの時も三十分遅刻をしていまい。母親からクレームの電話があり、高校生だったあの子は次の日から来なくなった。僕は次の日から夕勤にも入ることになり、次のバイトが決まるまではシフトに店長は入らなくてはならない。そうなるとますます睡眠をとるのが難しくなる。
「あら、店長さん!あのね、おたくのお店どうなってんの?帰りが遅い真由に聞いたら?お店で四十分も残業させたそうじゃない。真由は高校生なんですよ、夜道で何かあったら責任取れるんですか?しかも労働基準法でも違反してるじゃないですか?」
母親は怒っている。無理もない残業させたのは本当だ、だが僕が気になるのは明日からの事だ、明日から始まるかもしれない夕勤からの夜勤業務だ。
「大変申し訳ございませんでした。お母さまのおっしゃるとおりです。はい、はい、」
母親はずっと怒っている、僕はそれをはい、はい、本当に申し訳ございませんとしか、言えない。何を言っても火に油の事はよく知っていた。その時、レジの方から声がしてきた。
「おーーい、店員さんいないの?レジだよレジ」
お客さんが来た、もちろんレジに入れる人間は僕以外このお店にはいない、
「おい、早くしろよ、」
「はい、はい、大変申し訳ありません」
「何やってんだよ、急いでんだよ」
「はい、はい、おっしゃる通りです。」
「おーーいお客さん並んできてるよ!」
「はい、はい、本当にお母さまのおっしゃる通りです」
「おーい、急いでんだけど?」
「はいはい以後このような事がないように致します。」
「おおーい、まったくどうなってんの?このお店?」
「はい、はい、本当に申し訳ございませんでした。」
「寝てんのか?おーーい!は、や、く、し、ろ、」
「お母さま、申し訳ありません。現在このお店は1人しかおらず、また朝方お電話をさせていただきます。大変に申し訳ありませんでした。」
僕は母親にそう告げ電話を切り、急いでレジに向かう、レジには怒りを通り越した。六人位のお客さんが立っていた。申し訳ありませんでしたと、頭を下げ、僕は淡々とレジをうつ、悲しみや怒りはない、ただ僕はまた明日、塚本真由の母親に電話をかけなくては、いけない事をただ考えていた。




