第十九話
次に訪れたのは、飛び込み電車フロアだった、ここは電車のオブジェクトとホームがあり、ここもリアルに再現されていた。こんなセットをよく作ったなと感心した。
受付はさながら緑の窓口の作りの中にあった。ここも再現度が高い、たくさんのマネキンたちがホームを埋め尽くしていた。朝のラッシュの設定なのか、どのマネキンもスーツや制服といった、服装だった、また自販機やキヨスクなどのオブジェクトもある、ホームの大きさはそれほどではないが、飛び込む前の心境を味わうには、充分な広さだった。ホームの中央の真ん中に電車のオブジェが止まってあった、どうやらシチュエーションは、ホームに滑り込んできた電車に身を投げる。というものらしい。
ここでも、案内してくれている、白い女から説明があった。
「ここは、電車の飛び込みを体験できます。しかしあくまでも体験です。実際には、たくさんの人に迷惑をかけてしまいますので、おススメはしません。ホームから電車の前にジャンプした時点で終了です。では、ここからはまた、貴方様一人です。では、よい体験を、」
そう言われて、僕はまた一人になった。切符を通す改札口のゲートを通過する。どこから音が出てるのか、ガヤガヤと人々の喧噪が聞こえてきた。どのマネキンの顔も無感情だ、今の僕に似ている。僕も本当は人間ではなくマネキンだったかもしれない。
僕はここでも、日常を演じるため、スマホを開いた、今度は魚下店長のメッセージを確認をしてみた。
「お疲れ様です。相原店長、いや相原さん、僕は貴方みたいな、卑怯な大人にはなりたくありません。仕事を途中で投げ出し、与えられた使命を放棄し、何も生み出さない社会のお荷物、ゴミみたいな人間になりたくはありません。僕は自分の仕事を全うし、田中オーナーの言葉を信じ突き進みます。貴方はどこにいっても、同じ過ちをするでしょう、僕は貴方を半面教師にして、生きていきます。」
♪テレレレレン♪テレレレレン♪♪
(まもなく、一番ホームに急行○○行きが参ります。黄色い線の内側までお下がりください。)
♪テレレレレン♪テレレレレン♪
そうだ、最初からきっと僕は社会のお荷物でゴミだったんだ。クレイジーマートで一緒に働いていたスタッフさんたちの幻聴が聞こえてくる
(相原店長って本当にゴミだよね)
(ゴミはゴミでも生ごみ?)
(ああ、臭かったもんね?)
(相原店長あれから出勤してきてないけど、どうしたのかな?)
(死んじゃったんじゃない?)
(ああそうだねゴミだもんね)
(そうそうゴミは処分しなきゃいけないもんね)
フラフラと電車に吸い込まれる。迫ってくる電車の音。。ゴオオオオオオオっという音の中、僕は飛び込んだ、この世界と遮断する。
「そこまでです。お疲れさまでした。」
またいつの間にか隣に案内人の白い女が立っていた。
「すみません。ボーっとしてました。電車の飛び込みも悪くないみたいです。でも人にこれ以上は迷惑かけられませんよね?」
「誰も迷惑をかけない人なんていないと思いますよ、私も支えられて生きてます。ここの給料がなきゃ生きていけませんもの、」
そう言って白い女はふふっと笑ったあと、僕にハンカチを渡してきた。
「辛くなったら、休憩スペースもご用意いたしてます。ゆっくり行きましょう」
知らない間に僕は泣いていたみたいだった。




