第十七話
数日後、部屋は綺麗になり、生まれたての姿を少しだけ取り戻した。老朽化が進み壁はくすみ、畳とかも変色していたが、物が無くなり、広さを感じるようになった。こんな広い家に僕は住んでたのかと驚いた。
僕は捨てられなかったビー玉が飛び出すロボットを握りしめて、あの地へ向かった。
東京デスキラーランド、テレビのコマーシャルでよく最近目に止まる、開園したばかりの、レジャーランドだ。そこは、自殺の体験ができ、遺書の作成まで出来るらしい。
死にたいという事が一つのエンターテイメントになったのは今年からだ、SNSの死にたいという言葉は、若者の間で一つのファッションになり、流行になった。その火つけ役に、なったのは、芸能人やインフルエンサーの死にたいという発言だった。死にたいという言葉の本心の意義を失くし、一つのキーワードが一人歩きをしだした。最初こそ「何々があった死にたい」という定例分だったが、それが縮小され死にたいの一言になった。これにより、本当の死にたいが埋もれ、死にたいという言葉遊びが溢れだした。
後に死にたいビジネスが発展をしていった。死にたがりソフトクリーム、死なせてパンケーキ、今日も死にぞこないドリンク、死んでやんよ定食、東京デスキラーランドも恐らく死にたいビジネスの一部だと思われる。
来てみると、想像していたのと、違っていた。それは長方形の細長い建物でビルのようなものだった、僕は夢の国みたいな、華やかなお城みたいなものを想像していた。
ビルみたいな建物は高層で、少しホテルのような面構えだ、しかし門みたいな所にはしっかりと東京デスキラーランドと書かれていた。清潔な白の入口のドアを開けた。
「ようこそデスキラーランドへ、お客様、ネットチケットを拝見させていただきます。」
入口のそばの、受付はシンプルな作りだった。観葉植物が少し置いてあり、壁一面は真っ白く、汚れ一つ、ついていなさそうだ、本当に企業がたくさん入っている、オフィスビルみたいだ、受付の女の人は、まるで石鹸から作られたかのような、清潔感を具現化したような、雰囲気だ、全身に白スーツ、白の帽子、薄いメイク、見てて落ち着かせる雰囲気だった。
僕はネットチケットを見せた。
「ご来場ありがとうございます。どうぞ、こちら限定品のグリム君のストラップでございます。隣のゲートよりお進みください。よい一日を」
ゲートと呼ばれる箇所はチケットを入れると開く電車の改札口に似ていた。
どうやら分からないけど、今日は空いてるのか、周りを確認すると、男性のお客さん数人と若い女性のお客さんしかいないみたいだった。家族ずれやカップル等の姿は確認できない。当たり前かこんな所、家族で来るところではないし、デートで来るところでもない、美雪とのデートだってこんな所、選ばなかった。
ゲートをくぐると、エレベータがあり各階のアトラクションが表示されている。僕は確認したいのは、どの死に方が楽なのかの確認だった。僕がどの階に行こうか、迷っていると、後ろから声をかけられた。
「お困りでしょうか?何かお手伝いすることがあれば、遠慮なくお申し付けください。」
そこに立っていたのは美雪くらいの若い年齢の女性だった、髪は黒く後ろで結ばれており、やはり全身、白いスーツに白い帽子、顔は、薄化粧、目や鼻が整っていて、肌は白く透き通っていた。僕はこの案内人を白い女と、命名した。
「あの、実は、楽に死ねる方法を探してまして、どの階がおすすめですか?」
すると白い女は、薄く閉じた唇を静かに開けて答えてくれた。
「なるほど、畏まりました。それでしたら、四階の首吊りフロアと、六階の電車フロア、七階のナイフフロア、がおススメでございます。もしよろしければ、ご一緒に、ご案内いたしましょうか?」
白い女の声は心地よかった、その音はまるで、ラジオから流れる、渋滞情報を教えてくれる女の人みたいな、どこまでも透き通る声だった。
僕はお願いします。と伝え、白い女の人とエレベータに乗った。
エレベーターの中は、美雪と行ったラブホテルの中とは違い、清潔感に包まれていた。少し広めの空間に、外が見える仕様になっていて、開放的だった、耳をすませば、オルゴールが流れていた。時間はしっかりと流れていて、ゆっくりとエレベータが上昇して行き、目の前の景色の地面が遠くなっていく。家であんなに寝てきたのに、心地よさにまた眠気が襲ってきた。




