「ワン・バトル・アフター・アナザー」
「ワン・バトル・アフター・アナザー」
ネットで話題騒然のポール・トーマス・アンダーソン監督の「ワン・バトル・アフター・アナザー」を見終わった。まあまあ良かった。ショーン・ペンの悪役の演技と設定が素晴らしく、権力者による性犯罪や反権力志向といった大江健三郎風モチーフも結構面白かったが、評判ほどではなかったかな思った。終局部周辺でもっと意表をつくような新情報の暴露といった仕掛けが無かった点は大江健三郎やカズオ・イシグロの名作にちょっと劣る感触だった。でも、ここ最近の作品としてはスコセッシの「サイレンス」に匹敵するようなクオリティーで何回も繰り返し見たいとは思った。クエンティン・タランティーノはアンダーソンの「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を2000年以降の映画ベスト20において第五位に挙げている。私はその作品の同年にアカデミー賞作品賞を獲得したコーエン兄弟の「ノーカントリー」の方が好きだが、アカデミー賞受賞作をあえて選ばないタランティーノさんのセンスには逆に好感を覚える。
レオナルド・ディカプリオの演技に関して言えば、ちょうど「インセプション」でなかなかいいな、と思い始め。「ジャンゴ」の悪役ですっかりうまくなったなあ、と感心してしまった次第だが「ワン・バトル・アフター・アナザー」ではそれほど感心するほどではなかった。それは、やはりショーン・ペンのふざけた変態で変なヘアスタイルの悪役が際立って秀逸だったからだろう。ショーン・ペンって普通にかっこいい役も普通にやるけど、たまにふざけた悪役もやる。今回の役柄はデパルマの名作「カリートの道」を彷彿とさせた。あの時のヘアスタイルは今回のソフトモヒカンっぽい感じのアンチテーゼと言えるかもしれない。
ディカプリオの演技で特徴的なのは困難な状況において困った表情を作るのが得意な点だ。「ワン・バトル・アフター・アナザー」でもその得意技を頻出させていたし、「レヴェナント」では更に困難な状況において得意な困った表情を作りまくっていた。数年前に何回た見て、ほったらかしていた「レヴェナント」だったが、なんとなくなんの理由もなく見返して見たら、いろいろ細かいディテールをいい感じに忘れていて、初見に近い感じで楽しめた。いやでもあれ熊に襲われた傷以前に、普通に途中で寒すぎて死んでしまうんじゃないかと思いながら見た。あんな雪積もってるなか、川の中を泳いだりなんかして、寒さに弱いここ最近の更年期障害の私にとっては信じられない生命力だった。




