表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士アンナは、それでも愛する人を守りたい 〜あなたを忘れる方法を、私は知らない〜  作者: 長岡更紗
カルティカの涙〜フィデル国の異母姉編〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

367/520

365.応援してくれたおかげだよ

「クロエ、すっごぉい!! おめでとう!! 絶対にクロエなら五聖になれるって信じてたよー!!」


 ディアモントの円卓会議から戻ったクロエの前に、真っ先に駆け寄ったのはティナだった。その小さな体がクロエにぶつかる勢いで抱きついてくる。

 柔らかく暖かいその腕に包まれた瞬間、クロエの体は驚きと嬉しさで軽く震えた。ティナの瞳はまっすぐに輝き、全身でクロエの偉業を祝福してくれていたのだ。


「ははは! ティナが応援してくれたおかげだよ」

「クロエが自分で頑張ったからでしょ!」


 ティナの声には、喜びだけでなく誇りや尊敬の色も混じっている。

 クロエの胸は温かさで満たされ、互いの手はしばらく離れなかった。


 五聖となったクロエは、この喜びと責任を胸に刻み、次なる行動へと踏み出していく。

 その一つが、ストレイア王国と接するカジナル領の国境の強化だ。


 これまでの国境警備は、文字通り〝見張り〟の域を出なかった。

 戦争や侵入の危険に備えるというより、あくまで形式的な配置であり、緊急時の報告があるだけで、国境沿い全体を監視しているわけではなかった。

 商人や旅人が行き交い、特に問題がなければそのまま通過できる──そんな、緩い体制が長年続いていたのだ。


 しかし、クロエの心からあの悲劇は消え去っていなかった。

 グリレル村で起きた惨状。あのときの無力感、失われた命の数々が、胸に深く刻まれていた。

 同じ過ちを二度と繰り返させない──その強い意志が、クロエを突き動かした。


 人々の命を守るため、クロエはカジナル領に接する国境の全線を封鎖することを決めた。

 見張りを増員するだけでなく、許可のない者は通行を一切認めない。国境を越える者はすべて足止めされ、徹底的な調査が行われる。

 以前の緩い見張りとは比べものにならない、鉄壁の防衛体制であった。


 国境を守るという行為は、クロエにとって単なる軍事的判断ではなかった。

 それは、人々の命を守るための決断であり、信念そのものだ。

 目に見える安全を確保するだけでなく、目に映らぬ危険を封じるための、精緻に計算された布陣。

 そしてそれは、確かに〝最善〟のはずだった。


 しかし、その政策が実施されて半年後のこと。

 一人の男が、カジナルの庁舎に颯爽と乗り込んできた。

 その男の名は、ユーリアス。ベルフォードで〝刹那狩り〟と呼ばれるほどの剣技を誇る、若き剣士だった。


 当初、彼の心には怒りしかなかった。

 クロエが国境を完全封鎖したことで、国境での小競り合いは確かに減った。しかし、その代償として、人々の流れは対策のなされていないベルフォード側へと移動し、そちらでの小競り合いが頻発する事態となっていたのだ。


 その混乱の中、ユーリアスの恋人リザリアが巻き込まれ、命を落とした。自然、矛先はクロエへと向けられる。

 庁舎に駆け込んだ彼の怒りは生々しく、涙で濡れた瞳は真剣そのものだった。


 クロエは一歩も引かず、彼の言葉を受け止める。互いの感情がぶつかり合う中、クロエは深く悩み、慎重に判断を下す。

 カジナル領での通行をかつてのように緩和し、人々の流れを調整してリスクを分散することに決めたのだ。


 そうして再び、国境管理は〝バランスを取る〟形に戻された。

 鉄壁ではなく、調整と柔軟さを重視した統治。それもまた、クロエの責任感から生まれた判断だった。



 そうしてやってきたユーリアスは、帰ることなくカジナル軍に入軍した。ブラジェイが彼を気に入り、半ば強引に入軍させたのだが、クロエの監視をするという側面もあったようだ。

 クロエは最初、不安と警戒心を抱いたものの、彼の実力と判断力は想像を超えていた。

 若くして〝刹那狩り〟と呼ばれる腕前は、兵士たちの尊敬を集め、クロエ自身も次第に信頼を寄せるようになった。

 当初ユーリアスはクロエの采配を慎重に観察していたが、やがてその姿勢を認め、協力的に振る舞うようになったのだ。今では互いに信頼を置く関係にある。


 一見は涼やかな金髪の美形だが、情に厚く、胸の奥には燃えるような心を秘めた男。その存在は、組織内の空気を微妙に変え、人間関係にも影響を与えた。

 ティナとユーリアスが親しげに接する姿が頻繁に目撃されるようになり、クロエの心には複雑な感情が芽生える。

 もちろん、相変わらずブラジェイとティナのからかい合いも目に入り、微笑ましくも気を揉む日々が続いた。


(ブラジェイはユーリアスに遠慮しているのかねぇ……自分の気持ちをちゃんと主張していいと思うんだが)


 クロエはそんな彼らを遠巻きに見守りながらも、自分の立場と感情を整理できずにいた。

 ブラジェイとティナの関係は、進展していない。そのことに少しほっとする気持ちがある自分に、軽く息を吐きながら苦笑を浮かべるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。

サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
イラスト/堺むてっぽうさん
ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
その中でルナリーは、一人の騎士への恋心に気がついて──

最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
イラスト/雨音AKIRAさん
行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
キーワード: R15 身分差 双子 吉凶 因習 王子 駆け落ち(偽装) ハッピーエンド 両片思い じれじれ いちゃいちゃ ラブラブ いちゃらぶ
この作品を読む


異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
イラスト/こたかんさん
婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

サビーナは、自己犠牲愛を……彼に捧げる。
キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

失い嫌われ
バナー/秋の桜子さん




新着順 人気小説

おすすめ お気に入り 



また来てね
サビーナセヴェリ
↑二人をタッチすると?!↑
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ