湖畔でティータイム
ミラー湖を眺めながら食事をする俺たち。
やがてサンドイッチの入ったバスケットは空になった。
「いや、美味かったよ。ルナリエ、ありがとうな」
「どういたしまして。ねえお茶があるわよ。ナガトも飲む?」
「じゃあ頂くよ。ルナリエは準備がいいな」
「うふふっ、たいしたことはしてないわ。さあどうぞ」
アイテムポーチから水筒を取り出すルナリエ。
俺はカップに注がれたそれを口に運ぶ。
ちょうど喉が渇いていたから、何か飲みたかったところだ。
温かいお茶を一気に飲み干した。
「おかわりもあるわよ。もう一杯飲む?」
「ああ。じゃあ頂こうかな」
「ええ。わかったわ」
カップにお茶をそそぐルナリエ。
たまにはこうやって、のんびりするのも悪くないな……
俺がお茶の入ったカップを受け取ろうとしたその時だった。
二人の手が偶然ぶつかってしまう。
「きゃっ」
「おっと」
ルナリエの手からカップが落ち、お茶が俺のズボンの上にこぼれてしまった。
……しまった、うっかりしてたな。
「あっ、ごめんねナガト。熱くなかった?」
「ああ、平気だよ」
「ナガトのズボン濡れちゃったね。……じゃあ私が、拭いてあげるね」
ハンカチを取り出すルナリエ。彼女は、俺の下半身にそっと手を伸ばした。
ズボンの濡れてしまった部分――脚と脚のあいだ辺りをハンカチを持った彼女の手が這いまわる。
ルナリエは、なぜか……俺の横にぴったりと体を密着させ、熱っぽい視線でこっちを見ていた。
「……どうしたの。なんか、緊張してる?」
おっと……なにか変な考えを持ってはいけない。
これはただ親切で拭いてくれているだけなのだから……
「ルナリエ、気にするなって。これくらいすぐに乾くよ」
「いえいえ、火傷になったらいけないわ。ちゃんと拭いておかないと」
「そ、そうか……」
「んっ……ふう。なかなか乾かないわね……」
くっ……まずい状況だ。
ルナリエの手のやわらかい感覚が、俺に襲いかかる。
気を緩めれば、理性を持っていかれてしまうだろう。平常心を保たなければ……
俺がミラー山の遠くの景色を見て平常心を保とうとしていると、視界の端にルナリエがずいっと入ってきた。彼女は着ている鎧の胸元に手を伸ばす。
「ふーっ。それにしても今日はなんだか暑いわね。鎧の中が蒸れちゃうわ」
「!?」
ルナリエは着ている鎧の胸元をぱたぱたと開いたり閉じたりしていた。
おもわず目を奪われる。開かれた胸元からは、二つの大きなものが見えた。
――それは平坦なミラー山の景色とは違って、大きく、そして形もよかった。
「どうしたのナガト。なにか気になる物でもあった?」
「い、いや、なんでもないさ。ははは……」
……その時だった。
山を吹く風が突然、ごうごうと音をたてる突風となって俺たちに吹きつける。
「きゃあっ!?」
「……! おっと、あぶない」
風にあおられてよろけたルナリエが倒れそうになったので、俺は受け止めようと手を伸ばした。
しかし、そのまま二人いっしょに地面に倒れてしまう。
下になった俺の上に、ルナリエがばたりと倒れこんでくるのが見えた。
「わわわっ!」
「うわっ」
むにゅう。
なにか、とてもやわらかいものが俺の顔にあたっていた。
俺が目を開けると、視界は深い谷間に覆われていた。
こ、これは……
俺の上に覆いかぶさったルナリエがぼそりと独り言をつぶやいた。
「わぁお……これは予想外。今日は私、ツイてるわ」
昼食をすませた俺たちは、依頼の魔物、ゲイルワイバーンを探していた。
「それにしても、なんだったのかしら。さっきのすごい風は?」
「おそらくゲイルワイバーンが近くにいるから、その影響だろうな。風上の方角が怪しい。行ってみようか」
「わかったわ。じゃあ、あっちの方ね」
風の吹いてきた方角に向かう俺たち。
しばらく進むと、ごつごつとした岩が並ぶ場所に出た。
「おっと、いたぞ。ゲイルワイバーンだ」
「あれが!? わあ、大きい……!」
岩の上にいたのは緑色の体色をした飛竜【ゲイルワイバーン】だ。
その体は家よりも大きく、全身が強固なうろこに覆われている……
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