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ゲイルワイバーン



 岩の上にいたのは、緑色の体色をした飛竜【ゲイルワイバーン】だ。


 ゲイルワイバーンは地面に置いた何かに、かじりついていた。飛竜の足もとに見える白い毛。おそらく羊か何かだろう。村の家畜を襲ったのかもしれないな。


 俺は奴のレベルを知るため、ワイバーンに魔法を詠唱した。


「【分析(アナライズ)】!」


 ゲイルワイバーンのステータスが目の前に青い光で映し出される。



―――――――――――――――――

【ゲイルワイバーン】


魔物:飛竜

属性:風

レベル:75    

スキル:【風竜結界】【エアロブレス】【飛行】

ドロップアイテム:風竜のうろこ、風竜の牙、風の魔石


―――――――――――――――――



 ふむ。レベル75か。

 ゲイルワイバーンの中ではかなり高い方だ。


 ゲイルワイバーンが食事を止めてこちらを睨む。

 どうやら向こうも俺たちに気づいたらしい。


 ゲイルワイバーンが頭を上げると、次の瞬間……空気を震わせるような咆哮をあげてきた!



「グオオォオッーー!!」



 岩場に鳴り響く飛竜の声。同時に、辺りの風がどんどん強くなっていく。


「きゃあっ、すごい風! ナガト、これは一体……?」


「これは奴のスキルだ。まず俺があの風を止める。そうしたらルナリエ、君が剣で攻撃してくれ」


「わ、わかったわ!」


 まわりを吹く風が猛烈な勢いで強くなって荒れ狂う。

 これは風を操るゲイルワイバーンのスキル【風竜結界】だ。風圧に耐えながらの、この状態では接近戦は難しい。


 ……まずはやっかいなこのスキルをなんとかしなくては。



 その巨大な翼を広げ空中に舞い上がるゲイルワイバーン。滑空しながら俺たちの方へ向かってくる。


 ワイバーンの開いた顎の奥には風の魔力が渦を巻いていた。


「ルナリエ、俺の後ろに隠れろ。奴のエアロブレスが来る」


「え、ええ。でも大丈夫なの?」


「問題ないさ。まかせてくれ」


 高速で空中を駆けるゲイルワイバーン。その口から【エアロブレス】が放たれた。

 うずまく風の魔力が、ごうごうとうなりを上げて近づいてくる……!


 俺は杖を構え、タイミングをはかった。

 3……2……よし、今だッ!



「【魔法障壁(デイバインウォール)】!」


 ガキイィィン!!


 飛んできたエアロブレスは魔法障壁にぶつかって、音をたててはじけ飛んだ。


 【魔法障壁】は強力だが、展開しているあいだの魔力の消費が大きい。

 攻撃が当たるタイミングを見きわめて、一瞬だけ展開するのが魔力を温存するコツだ。


「無傷!? なにが起こったの……」


 後ろに隠れたルナリエが驚いた声を上げる。

 魔法障壁に守られていないまわりの地面は、風にえぐられて削れていた。


 俺たちの頭のうえを通り過ぎるゲイルワイバーン。

 空に大きく輪を描いて旋回している。また戻って仕掛けてくるつもりらしい。


 ぐるりと回って戻ってきたワイバーンは、低空を滑空しながらこっちに突っ込んできた!

 

「ナガト、またワイバーンが来るわ!」


「よし、このタイミングだな。奴のスキルを封じる方法を見せる。よく見ていてくれ」


 空を飛ぶ、奴の高度が下がっている。ここがねらい目だな。

 俺は高速でこっちに迫るゲイルワイバーンに杖を向け、魔法を詠唱した。



「【重力(グラビティ)】!!」


 杖から放たれた波動が、ゲイルワイバーンに絡みつく。



「グガッ……!?」


 ズダァン! ドドドドド!!


 ――次の瞬間、空中でバランスを崩したゲイルワイバーンは、地面の岩場に激突した。

 岩にはげしく体を打ち付けながら転がっていくワイバーン。なにやらすごい音と、猛烈な振動があたりにひびく。


「ひええ……な、なんなの!?」


 ルナリエは後ろで小さく悲鳴をあげる。

 俺は土けむりの中に倒れる、ゲイルワイバーンの背中に駆け上がった。


 今はワイバーンのスキル【風竜結界】は止まっている状態なので普通に接近することができる。

 ワイバーンが強い衝撃を受けると、一時的に効果が消えてしまうのだ。


 ワイバーンの背中に登った俺は、奴の弱点を探した。

 ゲイルワイバーンの弱点――それは、背中のどこかにある【逆鱗】だ。逆鱗を攻撃することで、奴のスキル【風竜結界】を無効化することができる。


 ……あった。背中の中央あたりにある、ほかと色がちがう逆向きのうろこ。

 俺は杖を振りあげ、逆鱗めがけて突き立てた!


「ここだな。せいっ!」


 どすッ!!



 ……ワイバーンの反応はなかった。おかしいな。だがスキルは無効化できたハズ。

 俺は飛竜の背から飛び下りて言った。


「よし、今だルナリエ。奴のスキルは封じた。剣で追撃してくれ!」


「わかったわ! ……って、あら?」


 ルナリエは、倒れるワイバーンの頭を剣の先でゴンゴンと叩いた。だが、ゲイルワイバーンはピクリともしない。これは……


「ねえ、このワイバーンもう動かないわ。すごい……一撃で倒すなんて!」


「おっと。これは計算外だな」



 これは杖を強化した影響か? 魔法の威力がまるで別物だ。

 まさかここまで変わるものなのだろうか……




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