深紅の鎧
辺境伯の館に招かれた次の日。
俺の家の戸を叩く音。
扉の向こうから明るい声が聞こえてきた。
「はぁい、ナガトいるかしら? 迎えに来たわよ!」
戸口にいたのは深紅の甲冑を纏った冒険者の少女ルナリエだ。
長い銀髪が朝の光を浴びて輝いていた。
「やあ、ルナリエ。どうしてここに?」
「えへへ、ナガトも今日は廃課金ギルドに行くでしょ? 私が案内してあげるわ」
「わざわざ悪いね。待ってて、すぐに準備をするよ」
家を出た俺たちはアクトゥスの街の大通りを歩いていた。
ルナリエはなにやら顔を赤らめながら俺にぴったりとくっついている。
「ねえねえ、ナガト。私たちこうやって並んで歩いていると、他の人たちからはパーティーを組んでるみたいに見えるかしら?」
「え? ああ、そうだね。たぶん、そう見えると思うけど」
「うふふっ、ナガトは廃課金ギルドで誰とパーティーを組むかまだ決めてないんでしょ? どうかしら、それなら私と組みましょうよ。ね?」
「そうだなあ。俺は廃課金ギルドの人たちにまだ面識がないし、ルナリエがそうしてくれると助かるよ。そういえば、ルナリエは今は誰かとパーティーを組んでないの?」
「ええ。今は誰とも組んでないわ。前は他のパーティーに入ってたけど……色々あって辞めちゃったの。だからこれはいい機会だわ。一緒に頑張りましょ!」
ルナリエは俺の腕にむぎゅうと抱き着いてきた。
柔らかなものが腕に押し当てられる。
それにしても、と俺はルナリエの装備を見て思う。
彼女の装備する深紅の鎧は元々肌の露出が多いものなのだが、ルナリエのような美少女が着るとその破壊力は段違いだ。
なんというか目のやり場に困ってしまう。
やれやれ、まいったなあ……
「ねえ、どうしたのナガト。何か気になることでもあるのかしら?」
「い、いや、何でもないさ」
まずい、ジロジロ見すぎたか。
おれは思わず言葉を濁す。
「ふふっ、いいのよ? 遠慮しなくても。ナガトも男の子だものね……」
「ル、ルナリエ……」
「やっぱりナガトも気になるんでしょ? この鎧【アテナシリーズ】の性能がね」
「あ、ああ、そうそう。いい装備だなって思ってさ」
「この装備を揃えた時の事を思い出すと、今でも胃が痛むわ。私は一度見てきたの。……爆死の、その向こう側をね」
ルナリエは遠くを見るような目で言った。
「お、おう。そうか」
俺たちがそんなことを話している内に、ある店が見えてきた。
廃課金ギルドに行く前に、あの装備を受け取っていくか。
「ルナリエ、ギルドに行く前にちょっとこの店に寄っていきたいんだ。いいかな?」
「ええ、いいわよ。あら、この店って……」
俺たちが向かったのは教会が運営する、アクトゥスの街の武具屋だ。
ごつい武具屋の親父が、槌で金属を叩いているのが見える。
冒険者が装備を手に入れる方法はいくつかある。
一般的なのは教会でガチャをまわすことだ。
たまに、装備がイベントで配られることもある。
サマーキャンペーンは記憶に新しい。
そしてもう一つの方法は自分で素材を集め、武具屋に依頼して作ってもらうことだ。
武具屋で作成できる装備の性能は要求される素材によってさまざまである。
特に希少な素材から作られる装備はオーダーメイドの特注品で、それらには特別な能力【EXスキル】が付いている。
欠点は、そういった特別な装備の作成には大量の素材が必要になることである。
一つの装備を作るだけでも、何度も周回プレイを重ねなければならない。
初心者の内は、素直にガチャをまわしたほうがいいだろう。
俺はある防具を作ろうと素材を集めて武具屋に預けていたのだが、先日のブラッドフェンリルの毛皮でようやく必要分が揃った。
ようやく今日、その防具とご対面というわけである。
いやはやこれまで長い道のりだった。
加工に希少な金属が必要なので、それを揃えるのも苦労した。
俺は武具屋の親父に声をかける。
「こんにちは、親父さん。例の装備はどうですか?」
「おう、ナガトじゃねえか! へへへ、あの装備なら出来てるぜ。待ってな、今持ってくるぜ!」
武具屋の親父は急いで工房の奥に駆けていくのだった。
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