イクリプス・クローク
「あの装備ならもう出来てるぜ。待ってな、今持ってくるぜ!」
武具屋の親父は工房の奥に駆けていった。
ここの武具屋の親父は凄腕で、どんな装備でも素材さえあれば一晩のうちに仕上げてしまうのだ。
いったい、いつ寝ているんだろうか……
親父が装備を持って戻ってくる。
「待たせたな。こいつが注文の装備【イクリプス・クローク】だ! 最高の仕上がりだぜ!」
それは月のない夜の闇のような黒色の外套だった。
各部が魔法金属で補強され、強い魔力を帯びているのが近くにいるだけでも感じられた。
「うわあ、すごいな! 親父さん、ありがとうございます!」
「はっはっは! いいってことよ。ナガトはうちの上客だからな。どうだい、ここで装備していくかい?」
「ええ。そうさせてもらいます」
俺は新たな装備イクリプス・クロークに袖を通す。
やっぱりこの瞬間は最高だな。
今まで周回プレイを頑張ってきて本当に良かった。
イクリプス・クロークは驚くほど軽く、肌触りもよい。
着てみると、自分の体重が消えたかのように体が軽くなった。
ブラッドフェンリルの素材で作られたイクリプス・クロークには、装備者の回避能力を大幅に上昇させる効果があるのだ。
続けて体の中から魔力が湧き上がるような感覚。
イクリプス・クロークの魔法金属が俺の魔力と共鳴を起こし、その限界値を引き上げていく。
……これはすごい装備だ!
俺の中に新たに装備されたイクリプス・クロークのステータスが流れ込んできた。
―――――――――――――――――
【イクリプス・クローク】
防具 装備部位:胴 (外套)
レアリティ:SSR
レベル:100/100
(NEXTレベル:最大レベル強化済)
防御力:660
スキル:新月の魔力泉(スキルレベル:10)
装備者の魔力上昇(特大)
EXスキル:猟犬の歩法
装備者の回避能力が大幅に上がる。
魔力(MP)を消費することでその場に幻影を残しながら高速移動できる。
―――――――――――――――――
オーダーメイドで作られる装備は作成に大量の素材を使うが、ガチャで排出される装備と違い最初から最大まで強化された状態で手渡される。
わざわざレベルを上げる手間がないのはうれしいところだ。
ちなみに武器の攻撃力と比較して、防具の防御力の値が低いのは理由がある。
武器はメイン武器とサブ武器の二つしか持てないが、防具は頭や胴、腕など部位ごとに細かく装備部位が分かれているので一つ一つの防御力の値は控えめなのだ。
イクリプス・クロークのように一部位で防御力が660確保できるのは十分な数値だと言っていいだろう。
俺が感傷に浸っていると武具屋の親父が上機嫌で言った。
「ははは! ナガト、なかなか似合ってるじゃねえか!」
「わお! い、いいじゃない……! いつもの姿もいいけど、ナガトって黒がとても似合うわね。素敵だわ!」
ルナリエはなにやら興奮した様子で俺を見ていた。
「……おいおいナガト、まさかその隣の可愛い子はナガトのガールフレンドかい? いやぁ羨ましいねえ! こんな美人が彼女だなんてなぁ!」
「か、彼女ですって! ねえナガト、やっぱり私たちそう見えてしまうかしら?」
「お嬢ちゃんのその深紅の鎧……アテナシリーズだろ? いいカップルじゃないか、赤と黒でまさにお似合いって感じだぜ!」
「……!! お似合い、カップル……うっ!? 頭が……」
「お、おいルナリエ大丈夫か?」
突然、ルナリエは熱を出したように真っ赤になってふらふらと倒れそうになる。
いったいどうしたのだろうか……
俺はルナリエを抱きとめて、やさしく肩を支えてやるのだった。
「熱中症かもしれないな。しばらくこうしていた方がいいよ」
俺はイクリプス・クロークを広げてルナリエの体を覆ってやった。
このクロークには太陽の光を遮る効果もあるのだ。
「二人ともお幸せにな!」
親父が後ろで何か言っているのを聞きながら、俺たちは武具屋を後にするのだった。
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