ハルの力
続きです、よろしくお願いします。
敵将ボルグを倒した俺は、急ぎロゼ達の元へと急ぐ。
広場の奥、石段を駆け上って行く。
のだが……。
頂上入り口付近まで来た時、ふと立ち止まると俺は、後ろを振り返った。
俺の視界の中に映った物は、ロゼの火焔で倒された無数の死霊兵の焦げた痕、アネスの放った無数の銀矢で射抜かれ、倒された兵の死体。そして今し方まで俺が戦っていた敵将ボルグ、その無残な焼死体。
その光景を目にした時に、頭の中である事が浮かんで来た。
〝本当は、アネス達の二人がこの場所で死ぬ運命だった……?〟
数日前の首都で俺達は、間違い無く二人の遺体を確認した。
二人の顔を、六名全員が見間違うなんて事は、到底考えれない。
だが、現実に二人は目の前で生きていた。
首都で遺体が生き返り、俺達より先に神殿の広場まで移動したとでも言うのか?、そんな馬鹿な事は無い。自ずと考えられる事は、一つに結論付けられる。
俺達は、あの意識を失った時に時間を飛び越えたしまった━━!。
異世界転移を経験した俺が、時間跳躍を肯定するのに時間を要さなかった。だが、どうやって時間を飛び越えた?、その原因はなんだ?。意識を失う前に何が起きていた?、神殿奥から兵が現れ広場に集結を始めた。
その後は…………?。
そうだ、ハルが二人の死に場所を告げた。
更にその後……。
俺達には見えなかったが、ハルは大声で逃げる様に叫んでいた……。
そして……、敵兵に見付かった。
戦闘が開始される前に、ハルが悲鳴を上げ……。
周囲の風景が回り始めて、俺達は強烈な目眩の後に、意識を失った。
ハルの行動と言動で、この事象は起きた?。翌々考えてみると、たった一人彼女だけが、これまで力の解放時の能力、それが明らかに成っていない。
「おいおい、ハルの能力って……時間転移かよ!」
もしもハルが、自由自在に時を移動出切るのだとしたら?、それは、在る意味で一番万能で厄介な能力を、彼女は持っている事に成る。何が起きても、殆ど全てを分かってからやり直せるのだから……。イリスの時間を止める能力もヤバイが、ハルのはもっと厄介だ。
時間を越え、起きた事を変えるという事は、歴史を作り変える事だ。彼女が意識して悪用する、なんて事は馬鹿馬鹿しい考えだが、良かれとやった事が結果として、悪い方向へ行く事は十分有り得る話であり。俺達の中で、一番その使用に注意を必要とする力を、ハルは持ってしまった。
だが、敵将との戦闘で火焔と時を一瞬止める事が出来た。
という事は、俺にも時間を跳躍する能力が、備わっているということか?。
〝とに角、みんなと合流が先だな〟
俺は体の向きを変え、地下へと続く通路に入った。
その直後、空洞の所で戦闘が起きている事が分かった。狭い通路に、派手な音と振動が伝わって来る。地下の空洞でも、彼女達が何者かと戦っている。
急ぎ階段を駆け下り、空洞エリアに辿り着くと……。
空洞での戦いは、丁度終結していた。
変化していた三人も、元の姿へと戻る。
「ロゼ様、ご無事で何よりです!」
マリネがロゼの下へと駆け寄っていく。
「遅いっ! 、もう片付けちゃったわよ」
「ひいっ……」
「それよりユキヒト、アレを見ろ……」
アネスが指差す方向へ視線を向けると、空間に亀裂が出来ていた。
それは、良く見覚えの有る物だ……。
俺達が何度も利用して通った物、次元の扉と呼んでいる物が祭壇の在った場所に現れている。
扉の大きさは、何時も通って居た物より大きい。
自然に出来た?、それとも誰かがこの場所につないだ?。
「私達が到着した時に、あそこから敵が大勢出て来ているのを目撃したわ」
「じゃ、やはりこの扉がアレか?」
「そう、首都を襲撃している敵は、ここから出現しているのよ」
これを消し去れば、敵の襲来を終わらせる事が……、いやそれだけでは駄目だ。この巨大な扉を開いた奴が居る筈、そいつを倒さないと根本的な解決には成らない。
「しかし……、この扉を誰が造ったのか?」
「ユキヒト……、まだ話の続きがあるの」
「えっ、話の続き?」
「はい、実は、敵兵が扉から現れた時に、一瞬ですが皇王様達の気配を感じたんです……」
イリスの言っている事の意味は、扉の先が七夜城だと言う事に成る。つまりだ、夜叉姫の到着を待たずに、敵の本拠地へ侵入が可能な場所を発見した事に成る。敵が現れた時に皇王の気配が察知されたのなら、それを辿って二人の居場所にも辿り着ける。
「この扉の先へ抜けて行けば、お父様達を救出できるわ!」
「さあユキヒト、扉の向こうへと行くぞ!」
アネスとロゼを先頭に、次元扉へと歩み寄って行く。
だが、俺は彼女達の足を止めさせた。
「どうかしたのか?」
「ユキヒト急がないと、又扉から敵が現れるかもしれないのよ?」
「それは分かってるけど……、その前にはっきりとさせとく事が在る」
七夜城へと攫われた二人の救出は、早いに越した事は無い。意識が戻った後の急な戦闘開始で、皆はアネスとラミカ以外の俺達に、何が起きたを忘れている様だ。
たった一人を除いてだが。
ハルの顔を見る、その顔から彼女だけは自分が何を引起したのか、理解している様だ。
「ユキヒトさん…………、私は!」
「ん……、ユキヒトお前は何故、ハルを睨んでいる?」
「ハルさんが、どうかしたんですか?」
この時間軸の二人は、何も知らないのだ。
俺が逸る皆の足を止めさせ、ハルの顔を見詰めている事に戸惑いを見せたが、ロゼもハット気が付いた様だ。目眩を覚え気を失った後、その同じ場所で死んだ筈の二人と再会した事を。
「これってまさか……、そう言う事なの?」
そして、それは俺達の身に何が起きたのかを、彼女にも感付かせた。
「お前達はさっきから何を言っている?。説明しろユキヒト!」
「俺達は……、ハルの力で二人が殺された過去へと、時間跳躍した!」
「なにっ!、どう言う事だ?」
「私達が殺された?、過去へ飛んだ?」
俺達が何を言っているのか、この時間の二人には理解できない。自分達は生きているのに、殺されたと言われては、訳が分からないのも無理の無い事だ。急に目の前に俺達が現れた現象は、ロゼの転送魔法か、イリスの扉で現れたと考えれば、これまで何度もその光景を見ている者達なら、不思議な事でも何でも無い。
俺は、彼女達がドアの森へと調査しに行った後に何が起きたのか?、それを二人に教える事にした。二人が首都を離れた翌日の朝、衛兵が二人の遺体を入り口付近で発見して、俺達がそれを二人に間違いない事を確認した事。その後、力の解放を失った事で首都を防衛する事が出来ず、脱出した事。
「そんなぁ……本来、私達は死んでいたと言う事ですか?」
「普通なら、笑い飛ばすところだが……、お前達が嘘を言う理由が無い」
「この時間軸の俺達は、今頃首都で防衛線を展開している筈だよ」
「私達が別の時間からやって来て、このまま七夜城へと突入した場合、何か問題が在るの?」
そのロゼの訪ねた事については、イリスが口を開いて答えた。
「私達の時間軸でも、同じ場所で敵と遭遇しました。何も起きなければ、それを突破した後にこの場所へとやって来て、七夜城への侵入口を発見していた筈です。処が私達は、時間を移動する現象に巻き込まれてしまい、その結果、貴女達を救う事になり、本当なら死んでいない者が死に、死んだ筈の者を助けた」
「俺達は、歴史を書き換えてしまったんだ……」
「つまり、このまま突入した場合、別の結果が起きるかも知れないと?」
俺達が消えた事で、数日先の未来が今どうなっているのか?。
七夜城への突入を中断したとして、この時間軸の未来がどう変わるのか?。
突入した場合、無事に助ける事が出切るのか?。
既に歴史の改変をやってしまった以上、どちらを選択したとしても、未来は変わった。俺達が本来の時間に戻った時、過去に起きた事がう変わっているか?。
「歴史が変わってしまい、最悪のケースに成る可能性も在り得ると?」
「俺達が居た時間の流れの中なら、何の躊躇もせずに突入の一択なんだが」
「ごめんなさい……、私が変な力を暴走させてしまったせいで」
「ハル……」
俺は、小さく身を縮めているハルを抱き締めてやった。
彼女が悪い訳では無い……。
「二人を助ける為に、ハルの力が発動した。アネス達を助けなかった場合、七夜城の連中の企てを阻止する事は、俺達にはできないのではないか?、そういう運命に成っていたと信じたい。この先へ進む事は間違いには繋がらないと、皆も俺に付いて来て欲しい!」
少しの沈黙が広がった後……。
「はあぁ……もぅ、そんなの決っているでしょ!」
「そうですよユキヒト様」
「主殿、何が起き様と我は貴方に従おう」
異論の在る者は、誰も居なかった。
全員が、先に進む事に賛同してくれた。
「皆、有難う。扉の先へ進み皇王と皇后を救出しよう!」
「ついでに、敵の大将も倒しちゃいましょう!」
「うむ、この時間軸の者としては、そうして貰うと助かる」
「あはは、何か変な感じ、何時もの皆と同じなのに……別人だなんて」
「違いないなっ!」
夜叉姫の到着する七日目を待たずに、俺達は七夜城と侵入を試みる。
これがどういう結果に成るのか?、誰にも分らない。
これまでにも、何度かハルの力が発動して良い場面は在ったのに、一度もそうは成らなかった。今発動した事の意味は、二人を救い敵陣へと進む為だ、それ故に時間跳躍が起きたのだと信じる。
これを最期の戦いにする。
俺達は今、神殿奥の空洞に開いた次元の扉を抜けて行く。
七夜城の仕掛けてきた陰謀を砕く為━━!。
有難うございました。




