異国の城で
続きです、よろしくお願いします。
待ち伏せて……、不意打ち。
若干、卑怯な感じもするけど、こいつらに容赦する必要も無い。
衛兵に紛れ潜んでいた俺とアネスは、黒衣の者の前へと躍り出た。
「貴様らぁ! 、此処に居たのかっ!」
「悪い事は出来ないって事じゃないのか?」
「ふんっ、自業自得だ!」
勝負は、瞬間で決着した。
奴は、ハルを捕まえ様としてして素早く跳躍したが、ハルの張っていた結界で弾かれ、宙へと弾かれた。弾かれながらも魔弾を放ってきたが、その全てを刃で斬り伏せる。アネスの白銀の矢で片手、片足を飛ばされた黒衣の奴は、片足で床に立ちながら次元の扉を開き、逃げ様とするが……。
扉へと、逃げ込む事をさせるはずが無い、床を蹴り瞬時に間を詰める。
俺の振るった刀の一閃で、いとも容易く両断され短い断末魔をあげながら、奴は部屋から消滅した。
「がはぁ!」
考えてみたら、前回黒衣と対峙した時は、力を失っていたのだ。
ラミカに愛され、力が戻った後は黒衣を圧倒した。
つまり今回は最初から全開な訳で、例え尋常為らざる相手だとしても。
たったの一人では、俺達二人の敵ではなかった。
奴を倒した事で、良い事がもうひとつあった。
「マキシ様……、領主様が!」
夢魔に憑かれていると思われたが、黒衣が消滅すると領主の顔色は良くなり、回復の兆しを見せた。要は領主が黒衣に罹けられた物は、夢魔ではなくて呪の方だった。
だが目の前で、黒衣を瞬殺した光景を見たマキシは、只々、驚いていた。
回復に向かった領主から、こちらに視線を移し。
「貴公達は……いったい何者なのだ……?」
自分達が、動く事さえ叶わなかった相手を、一瞬の内に消滅させたのだ。
彼女から見たら、俺達も十分にバケモノのだろう……。
レナを護り、領主を救った俺達に彼女はそれ以上の追及しなかった。
只、そのお礼はしたいとの申し出だけは、有り難く受け取る事にした。
「俺達は、ハインデリアまで行きたい……、何とか成らないかな?」
「一番早い地竜をさせよう……、それで行かれると良い」
マキシは地竜だけでなく、途中で国境を抜ける際の便宜も図ってくれる事を、約束してくれた。帝国領までに在る国境は、その通行手形でパス出切る様だ。
「これで帰れますねっ!」
「はは……、二週間も地竜での旅だけどね……」
「その間は……、ロゼ達を信じるしか無いか」
不意の事故で遠くへと飛ばされ、仲間と逸れた俺達三人。お金も当ても無く途方にくれていた処へ、お約束の様に訪れた厄介事……、しかも黒衣が別のニクスの血縁者を狙っていた。
この地へ飛ばされたのは、奴等の企てを阻止する為にとさえ、思えて来た。だが、俺達を分断したのは、黒衣の仕業なのは間違いないと思う。連中は、自分達が動き易い様にとしたのだろうが、それは仇に成った。
推測だけど、アデス領でロゼ達に邪魔をされ、遠く離れた地でも俺達に阻まれた。
さぞや今頃、苦虫を噛み潰した様な顔をしているだろう。
安宿で一晩を過ごす筈が、綺麗な部屋を用意して貰えた。
この事だけは、奴等に感謝してもいいか……。
夕食抜きで、待ち伏せをしていた。故に、遅い夕食となったのだが、三人で集っていたアネスの部屋へ、マキシが地元の酒を持って来てくれた。この酒が飲み易いが酔いも早く、ハルなんて一杯飲んだだけで、睡魔の強襲を受ける羽目になり、早々にマキシから彼女の部屋に運ばれていった。
「私は、ハル殿を部屋に送った後、そのままお暇します。では失礼します」
「マキシ、美味しい酒をありがとうー」
「気お付けて下さい、美味しいですが強い酒ですので……」
彼女の言う通り、かなり強い酒の様で……。
俺も深酔いに成るのを避けて、適当な所で自分の部屋へと帰ろうとした。
「ユキヒト……、もう少し一緒に……」
「あ、うん……」
アネスから腕を捉まれ、帰るのを止められた。
七人の中で、アネスが一番大人の女性の雰囲気を持っている。それがお酒でほんのりと顔を染めて、宵闇の部屋の中、月明かりに照らされていると……。
結構……、ドキッとさせられる艶やかさが有り、見惚れてしまう。
酒のせいで、遂、本音が毀れ出るのは、男も女も関係無い……。
「お前を最初に見つけたのは……、私だよなぁ?」
最初は、擦り寄って小声で囁いてきた。
「そ…、そうだね、最初に会ったのはアネスだね……」
「なら……、何故、私をほったらかしにする?」
今度は……、至近距離まで詰め寄ってきたっ!。
「そんなぁ……、ほったらかしなんて!」
「だったら……、今夜はずっと私と居ろ!」
酒に酔っただけでなく……、この地に他の女性が居ない。
ハルも、酔いつぶれてしまっている事で、アネスのリミッターが外れた?
四つん這いで、這い寄られベッドの際まで押し込まれてしまう……。
酔ったアネスに、ベッドの上へと押し上げられた。
大人の女性……、アネスの身体が俺を包んだ。
「アネ……
「今夜は……、誰の邪魔も入らないからな……」
そう言って、アネスは唇を重ねてきた。
その後も、彼女に優位を握られ取り戻す事は 出来ず仕舞いに終った。
ようやくの事、彼女から開放されたのは、吐息をたて完全に眠った後だ……。
黒衣の者達が、ニクスの前へと集まって来た。
「又、一人やられた様だ……、帰って来ぬ!」
「ルベール領か……、あそこに異世界人が飛ばされて居たとは……」
「何と、運の良い連中だ!、忌々しい……」
「第二の魔女さえ抑えれば、他は造作も無い、計画を急ぐ必要が有る」
短い会合の後、再びその姿を消した。
━━ルベール領主屋敷。
翌朝、屋敷前でマキシが地竜を連れて来るのを持って居ると。
ハルが擦り寄って、何やら嗅いでいた。
「ユキヒトさんから……、アネスさんの匂いがします!」
慌てて、腕を鼻に当て確認していると━。
「嘘ですよ……、簡単に引っ掛かるんですねぇ……」
してやられた……。
しかし、ハルは怒って居る様には見えない、やはり例の……。
ってか、何故分かる?。
「地竜を連れて来た……、二人とも、どうかしたか?」
アネスとマキシが、地竜を連れて戻って来た。
「どうもしませんよー!」
「ふむ……、な、何でも無いなら……」
ハルはニコニコ顔、俺は若干の焦り顔……、それを見たアネスは全てを察した様子。流石のアネスも、昨夜の痴態を思い出して、赤面しながら横を向いてマキシに話掛けた。
「ま、マキシ殿、い、遺跡はどっちだろうか?」
「この平原を真直ぐ行った先の林の中に、奴の言っていた遺跡が」
「ありがとうマキシ、帰る前にそこへ行ってみるよ」
俺達はこのまま帰る訳には行かない。黒衣の奴が、連れて来いと言っていた遺跡を、調べる必要がある。ニクスの身体は、アデス領の森林のどこかに在って、此処には無い筈なのだ。ここの遺跡にも、何か在るならハルを連れて行く事で、分かるかもしれない。
「本当に……、感謝の言葉も無い!」
「有難う御座いましたっ!」
二人から感謝され、照れながら俺達は遺跡へと向かい始めた。
只、指定しただけなのか?、何か在るのか?、行けばそれも分かる。
有難う御座いました。