女神の遺跡一
66話です、よろしくお願いします
夜が明けて、日が刺し始めた頃。
ようやく私は、ニクスの居場所の手掛かりを見つけた。
その後私は、死んだ様に眠りに落とされ、再び動き出したのは昼過ぎの事。
それは、捜していた全員が同じだった。
ひとり、又ひとりと、ふら付きながら私の傍へと寄って来る。
最後にラクテルが横に立ち、私の話を聞きに来た。
「それで……ロゼ皇女、ニクスの居場所って何処なの?」
ラクテルの質問に答える為、私は壁に掛けてあった森の地図を外した。机の上の邪魔な本を腕で払い落とし地図を置き、指でその場所を指し示した。地図の真ん中より上、他より色濃く表示された地図の一角には、五つの楕円の形があるが、池を表している。その中心地点を私の指は指している。
「この位置に、ニクスの墓碑が在るみたい、その下に本体が眠っている筈よ」
「そこまで入った人は、居るんでしょうか?」
ラミカの質問には、首を振って誰も居ないと答えた。
だか、念の為に執事にも聞いてみる事にした。
「いえ……、森の奥へ入ったと言う話を聞いた事は御座いません」
「ありがとう、もういいわ」
彼は代々この家に仕えている人物で、その彼が知らないと言う事は、入った者は居ないのだろう。
「じゃ……、本当に在るかは行って見ないと、分からない訳ね」
「そうなりますねぇ……」
「この色の薄い部分しか、人は入らないわ、狩りもこの範囲でしかやらない」
「色が濃くなる程、危険て事ね?」
只……、この森には魔物は生息していない、直接は危険は何も無い。
昔からこの地の者は、あの森の奥へと入るべからずを、守っているだけ。
「奥へ行くと怖い魔女が起きてきて、殺されると……脅されてたわ」
「この領内に居る人達は、ずっとそれを守っている訳?」
女神の事なんて誰も知ってやしない、昔から入っては為らぬと伝えられてきた。言い伝えに反して、奥へ入って確めるなんて冒険を冒さないでしょう。普通の領民達では、そんな勇気を持ち合せていない。
「まあ行ってみましょうよ、黒衣が居ても私が相手するから、安心しなさい」
「うはぁ……、すごい自信家だ!」
マリネに自信家と冷やかされても、全く動じる様子が無い。
この人、根っからのワンマン体質なんだ……。
しかし……、そうは言われてもやはり不安は拭えない。
私としては、もう誰一人も喪いたくは無い…………。
そんな想いに駆られていると、私の後ろから影が近付き、首を極められた。
「グエッ……」
「ふふ、皇女様はいやに尻込みしてるわねぇ、そんな玉じゃ無いでしょ」
暫らく、バタつく私を愉しんだ後、腕を緩めて放してくれた。
「もう! 、死ぬかと思ったじゃないっ!」
「貴女が余りに、似合わないからよっ」
「はぁ?」
「好きな男が出来て、気弱に成ったのかしら?」
ド ━━ ン っと、脳天まで火柱が上がった気がした!。
「なななななな…、なにを……」
「あら?、ど真中だった様ね!」
「ロゼ様……、可愛い!」
自分でも今……、真っ赤な顔をしているのが分かる。
「くぅう……」
猛烈に恥かしくて、顔を上げられてない私が居る……。
穴があったら逃げ込みたい!。
「誰かが、傷つく事を恐れてるみたいだけど、皆は覚悟してるんじゃないの?、黒衣の連中を相手にしてる時点でねっ!」
私は、そっと顔を上げた。
全員、ラクテルの言葉に頷いていた。
「みんな……」
「覚悟なんて……、とうに出来てます!」
「行きましょ、ロゼ様!」
「それに……、私達が動けば牽制出来ます」
イリスの言葉に、ハッとなる。
私達が動かなければ、黒衣の連中は、ユキヒト達を安心して追う事に専念してしまう。だけど私達が、ニクスの本体を捜しに向かえば、此方にも対処しなければ成らなくなり、連中の注意を逸らせる。都合良く考えたら、奴等の戦力も分断する事にもなる。
なんか、答えはでちゃった感じがする。
「もぅ……、本当に良いのね?、無事な保障無いわよ?」
「ロゼ様、ニクスを捜しに行きましょう!」
私達は、気楽にゲームをやっている訳じゃない、誰かが倒れる事ばかり恐れていたら、縮こまって何も守れない、ラクテルの進言通り打って出よう。
「連中も馬鹿じゃないわ、私の存在も知れた事もあるしで、何等かの手は討ってるでしょう。それを看破して連中を倒す事になるから、激戦となるのは覚悟しなさい」
ずっと軽い口振りのラクテルが、この時だけ、その態度が変わっていた。今回はアネスとハル、そしてユキヒトが居ない、彼の不在は力の解放がない事を意味している。唯一私達に優位なのは、強力な助っ人の、ラクテルが付いてくれた事くらい。誰かが命を落と可能性は十分に高い、彼女の態度は、私達にそれを改めて覚悟させる。
「ふぅ……、仕方ないわね! 、ちょっくら倒しにいきますか」
「そうそう、当って砕けろよっ!」
「ええ! 、砕けちゃ……」
「馬鹿ねえー!」
バシッ━!
「キャア━ぁ、痛ぁ……」
ラクテルが、マリネの背中を引っ叩いた。
軽快な音が部屋に響く……。
「そう言う、気概を持ちなさいって事よおっ!」
「は、はいっ! 、分かりましたぁ」
余程痛かったのか……、マリネは涙顔で返事をしていた。
重苦しく成り掛けた空気は、軽快な音と、皆の笑みと共に消えていく。
良い感じに気持ちが解れた所で、悪漢退治と参りましょう!。
女性六名は、颯爽と地竜にまたがり森へと向かった。
私達は、ユキヒトを欠き、力の解放無しで黒衣の者との戦いに赴く。
ユキヒト達は……、大丈夫だろうか?。
━━ルベール領、遺跡。
幾ら狭い国と言え、途中の草原で地竜を休ませる必要が有った。
昼過ぎに、小さな池を見つけそこで休憩し、後はひたすら草原を疾駆する。
目的地に着いたのは、夕方に近かった。
「これは、遺跡を調べたら今日は此処で野宿だな」
幸いな事に、帰りの方向から若干ずれた場所だった事。
少しだけ、方向の修正をすれば、国境へと向かえる。
この時は、そう思っていた……。
「この遺跡、ラミカの故郷に在ったのと似てません?」
「うん……」
ハルに言われるまでもなく、俺もアネスもそう感じていた。三人で、石群の周囲を隈なく歩いて調べてみたが、黒衣が何かをやっていた痕跡を見付けるには至らなかった。
「何も無いな……、只の指定場所だったのかな?」
「意味無くこの場所を指定したとは、考え難いのだがな……」
だが実際、何も無い。
この地に固執する必要が無いと成ると、急にロゼ達が心配に成って来た。
アデル領で、何か起きている事だけは、確信持って言える。
俺と離れている為に、力の解放は失われている。その状態で黒衣の集団と渡り合える物なのか?、前回もかなりの苦戦を強いられたのに、複数相手だと……。
「ロゼ達は……、無事かなぁ?」
「きっと無事に決ってますよ!」
何も根拠の無い言葉でも、ハルに言われると、何故か信用してしまう。
外周を捜索し終え、中央部の一番大きな石へと近寄ってみた。
一見、なんの変哲も無い、只の石にしか見えない。
「此れも……、何の痕跡も無いなぁ」
「ほんとに、何もありま……
ハルが中央の石に、手を触れた瞬間……、彼女の言葉は止った。
「ハル……?、どうかしたか?」
彼女は何も答えず、石に手を触れた状態で微動だにしなくなった。
「おい! 、ハルっ!何が起きた?」
今迄、風一つ無かった草原に……、いや違う石群の内側だ!。
強風が巻き起こり、周囲の風景が回りだした。実際に地面が風景ごと周るなんて、そんな事は在りはしない。しかし俺達にはそう見えた居るのだ!。
更に強い風と、目眩の様な感覚が襲って来た時、俺達は意識を失った。
それから暫らくして、三頭の地竜が遺跡へと訪れていた。
送り出した物の、胸騒ぎでも起きたのか?マキシが様子を見に来た様だ。
「彼らの姿が見えない……」
「マキシ様、向こうに地竜が三頭放置されてしました」
「彼らに……、引き渡した奴か?」
「はい、荷物も鞍に全部残した状態です!」
「此処は良い、お前達は遠くに居ないか調べてくれ」
命令で二人の騎士は、それぞれが反対の方角へと捜索に向かった。
一人、遺跡の中に残ったマキシが呟いた……。
「まさか……、この場所から消えたと言うのか?、馬鹿な!」
遺跡の周囲には、風は無く。
唯一人、マキシがポツンとその場に居るだけであった。
有難う御座いました




