もう一人
続きですよろしくお願いします
「話を聞いて貰えませんか?」
はぁ……?、どこかで聞いた気がするのは気のせい?。
占い如何ですか?から、話を聞いてに変わり……。
その結果が、異世界へと連れて来られた訳だが。
更に遠く、異国へと飛ばされた先でも、話を聞いてください……?。
もう、とことん付き合ってやろじゃないかっ!。
「どんな話か聞くけど……、ここで始める?」
彼女の首から刃を離して、鞘へと収めた俺は彼女に話を振った。
話の内様いかんでは、断る心算ではいるのだけれど。
「おお、聞いて貰えますか……、ここは人目が有ります。城へ御案内します」
「あ、申し遅れました。ルベール領主オルデア様に仕える、騎士マキシと申します。彼女は……」
「レナと言います。先ほどは本当に有難う御座いました!」
優しいハルは、俺が刃を納めたことに納得しているが、アネスの方からは一言嫌味を言われる。
「ふぅ……、本当にお前は甘いなっ!」
「ごめん……」
「謝らんでもいい……、起こっている訳では……ない」
アネスは起こっている訳ではなく、俺を心配してくれているだけ。
彼女は、露骨に優しさを人前で見せない。
二人の同意も得られ、マキシとレナの後を付いて行く事にした。
案内された城は……、かなり質素な物で領主の建物が小さい事が、その領地の狭さを物語っていた。領地や城の規模と領主の器は、別物では有るけど……。
俺達は応接間に通され、退出して行ったマキシ達を待っていた。
この部屋にしても、ロゼの宮殿に在る様な豪華な物で無く、普通のお金持ち程度の部屋。だが、こっちの方が俺的には落ち着くと言う物で、所詮は庶民肌なのだ。
「お待たせしました……」
戻って来たマキシは、普段着から騎士の正装へと変わっり、凛々しい姿を魅せてくれた。レナの方も姫様姿では無いにしても、ハルに似た明るい服装で戻って来た。
「では、早速ですが話を聞いて頂きたい。彼女……レナを得体の知れない者から守るのに、御三人のご助力を賜りたい……」
いきなり、物騒な話が飛び出し、レナの護衛を頼まれた。態々(わざわざ)、俺達の腕試しをしてきた事からも、普通の話であろう筈は無かったが、得体の知れぬ者から守るのを手伝って欲しいときた……。
頼みを聞くとしても、彼女が狙われているなら、その理由を知りたいものだ。
「じつの処、彼女はこの国の生まれでは無く、ずっと賢者様に守られて来たのです。その方が病気で亡くなる前に、この国の領主様に彼女を託して逝かれました。」
賢者に託された女性……、俺にも思い当たる人が居る。
ハル……。
賢者に託された話が出た時点で、ハルもアネスも表情が固くなった。
彼女達も、これから語られる話の展開が見えて来たのだろう。
「この十年……、何事も無かったのですが、先日の事。突然この屋敷の領主様の部屋に、黒装束の者が現れ、彼女を引き渡せと要求してきたのです。無論、断ったのですが……、その場で領主様は、呪の様な物を受け倒れたまま……。遂、先ほども現れ彼女を引き渡せば、領主を助ける方法を教えると」
レナが危険を冒してまで森に入ったのは、領主を助けたい為か。
領主の呪を解く為の薬作りに、薬草を取りに行ったのは分かるが……。
彼女は、相手が何者か分かってはいない様だ。
一人でのこのこと森に入るなど、迂闊にも程がある。
「なぁマキシ、この地域に、魔女とか女神に纏わる伝承とかが有る?」
「随分と朽ちた遺跡が……、たしか女神に纏わる伝承が在った気がします」
だとしたら、やはり間違い無さそうだ。
彼女の言った黒装束とは、俺達の言う黒衣の者に違いない。
こんな離れた場所にも奴は手を伸ばしていた……。
奴らが、レナを狙っているとしたら、彼女の事も おのずと知れてくる。
賢者に育てられた彼女は、ハルと同じで、ニクスの血を引く子孫だと言う事に成る。そして、この場所に奴等が姿を現したと言う事は、当然ハルも攫われる危険に有ると言う事だ!。
「領主様からは、自分に何か在っても、レナを守れと仰せ付かっており……それに従うしか無いのですが」
彼女を引き渡せないが、領主の命も救いたい?、領主の病因が黒衣が放った物だとしたら、多分見当は付く……。呪ではなく、夢魔の類だろうが、イリスが居れば簡単にケリは付くが、彼女が居ないこの場所では、俺達だけでは不可能だ……。
「領主は、呪いではなく、夢魔に苦しめられていると思う。俺の仲間が居たら、直ぐにでも助けられるけど……」
この話にマキシは、身を乗り出して喰い付いて来た。
「おお、その方は何処に?」
彼女達とは、別れて飛ばされた後は、その所在が知れない。
無事だと言う事は、確信しているけど連絡は取りようが無いのだった。
その事を、簡単にマキシに説明する。
「そうですか……、連絡が取れませんか……」
一瞬期待を持たせ、落胆させて帰って悪い気がしてきた……。
この地に奴が来ている、ハルが見付かるのも時間の問題だろう。レナを護る事が、ハルの安全にも繋がる訳で、マキシの要請を断る事は、やぶさかではない。
ニクスの事は伏せて、マキシに強力する事を伝えた。
変に不安を 煽る事に成りそうでそれを避ける為だ。
「おお! 、有り難い! 、感謝します」
二人は、立ち上がり深々と頭を下げ、感謝の気持ちを伝えてきた。
只、全てを語っていない事には多少の罪悪感も生じていた……。
「とにかく一度、貴公達が言う通りなのか、我が領主の病状を見て欲しい」
夢魔に憑かれた者なら二度見ている。
見れば多分分かる筈、アネス達と顔を見合わせマキシに頷いた後、扉を出ようとしたら、外から扉が開かれメイドが駆け込んできた。
「大変ですマキシ様っ! 、黒装束の男が……
最期迄聞かずに、マキシは駆け出し俺達もそれに続いた。が、奴と対峙した場合、下手をしたらその場で戦闘に成る事も覚悟した。
「領主様っ!」
何も考えずに部屋へ飛び込むマキシ、俺は刀へアネスは弓へ、手を掛け部屋へと突入した。臨戦態勢で武器を構え入っては見たが、奴の姿はどこにも見えず。幸い?な事に、黒衣は既に立去っていた。
「ま、まマキシ様……、黒装束の男から伝言が……」
部屋に居たメイドが、震えながらに訴えて来た。
「奴目は……何と?」
「日が沈む前に、遺跡に彼女を連れて来いと……」
「遺跡?、何故そんな場所に……」
遺跡にレナを連れて来い━━。
考えられる理由は一つしかない。この地でニクスを復活させる心算なのか?。
そして、その場所に思念体が運ばれてる……。
いやそれはおかしい……。
アデル領に居る筈ではなかったか?、ラケニスが見落としたのか?。
只、遺跡で何かをしようとしている事だけは、疑いようが無い。まだハルの事はバレていない、俺達が居る事には気が付いてないとしたら……、奇襲を掛けるチャンスかもしれない。
「マキシ、遺跡に行かずにここで待ち伏せしよう」
「成る程、連れて行かなければ、この城へ現れると?」
「ユキヒト……、危険な賭けじゃないか?」
アネスは、奴を誘き出すことで、ハルの存在をばらす事になるのを恐れて居る様だ。だが、どうにも解せないのは、此れまで慎重に事を進めてきた連中が、ここに来て焦って居る様に見える。
アデル領で何かが起こっているのではないか?。
そして、そんな事を起こせるとしたら…ロゼ達しか居ない。
「ロゼ達が、アデル領で連中の邪魔に成ってる?」
アネスはその考えは楽観的過ぎでは無いか?、っと言いたげな顔をしている。確かにそうだとは言い難いが、的外れとも思えなかった。
問題は誰が囮をするか……、だがこれはハルが手を挙げた。
アネスの猛反対を受けたが、まさかメイドにその役をやらせて瞬時にバレても困る。レナは魔法を使う事が出来ず、瞬間的にでも身を護る術が無い。
大手を振って賛成しなかったアネスも、最終的には首を縦に振った。
そうせざる得ない……。
夕方に成り日が沈んでも、遺跡には連れて行かず。
痺れを切らした奴が現れるのを待った。
ハルはレナの服装を着て、俺達は屋敷の衛兵の姿に紛れた。
日が沈んでも直ぐには現れず、俺達はひたすら待ち続けるという。
忍耐との勝負に成って行った……。
もしかして、現れないのでは?、そう想える程待ち続け……。
遂に、その時が来た。
広間で、歓談している風を装っている処へ、奴は黒い姿を現した。
「ふっ、何の心算か知らぬが……、連れて来ないとは、舐められた物だ!」
上手く騙されてくれた様だ……。
さて……、黒衣を一人倒すとしようか!。
有難うございました!




