急報
新しいエピソードです。
読んでみてください。
其の女神は…………、人によって愛を知った。
人に恋して、人の為にその身を……、闇の狭間へと滅した。
深い闇の底で、永遠に呼ばれぬ事を願い。
二度と人の世に顕れる事の無い様に……、眠りに就いた。
遥か遠い太古の話…………。
数千年後━━━。
『そんな……、ニクスが攫われた……!』
石群のサークルを訪れた一人の女性が、ニクスが消えた事実を知る。
思念体と成り、此の地で静かに存在している筈だった。
突然と、攫われて行った!。
〝大変……、皆に知らせないと!〟
「はぁぁ?、ユキヒトが居ない?、何よそれっ!」
「っと言われてものぉ……小娘、居ない者は仕方なかろう」
ラケニスの塔へ行くと言ったきり、あいつは戻って来なかった。
半年以上……よ、私等をほったらかして、何時まで婆さんと戯れてるのよ?。
っと、伝える事もあるし、いい加減に痺れを切らして来てみたら……。
「小僧なら……三日程前までは、此処に居たが、もう居らん」
三日前……迄、此処に滞在してた?、何処へ行ったの?。
「あの、馬鹿……肝心な時に居ないとか、有り得ないでしょ!」
「ちょっ、ロゼ様っ……、そんな怒られても……」
急な知らせが舞い込んで来て、彼にも伝える必要が有ったし、マリネにも逢いたい筈と。遠路遥々、折角連れて来たと言うのに! 、肝心の本人がとっくに此処を発って居ない……?。
「半年間……、たった一度の連絡も寄越さず、又、行方不明?」
「ロゼ様……落ち着いて下さぁい! 、ユキヒト様も何か理由が……」
マリネの言いたい事は、分かる……けど。
「何の理由よっ! 、私達に伝えられ無い理由てなによ?」
特に、根拠があるわけでない、只の、女の感だった。
此処までラケニスは、黙って私らの動向を窺って楽しんでたみたい。あんなに露骨なやけた顔してたら……、婆さんの魂胆なんて見え見えじゃないっ!。
どうせ、私らを戯れの道具にでもする心算なんでしょうね。
誰かさんが居なくなったとこへ、私達がのこのこと、獲物に成りに塔にやって来たもんだから、暇つぶしの戯れに付き合わせようと、絶対に企てた筈っ!。
処が、私達の話を聞いている内に、徐々に疑問が湧いてきた。私が彼の不在にイラついてる様子を見てる間に、自分が呼んでも居ない二人組が、何の目的で、行き成り此の場所へとやって来たのか?、とねっ。
一度疑問が頭に浮かんでしまうと……。
随分と気に成った事でしょうねえ、遂に、私達が訪れた理由を尋ねてきた。
「処での、小娘二人が揃って此の場所に来て、彼に何の用が有った?」
まあ、婆さんからしたら、当然の疑問だろうし、答えてあげるわ。
「ユキヒトに逢いに来たのよ……悪い?」
「うわぁ……、ロゼ様!」
マリネの慌てようといったら……、しかし彼女は無視する。
婆さんもこっちをじっと見てる。
これで……どうよ! 、こっちもニヤけ顔で返してやるわ。
「嘘をつくでない小娘が! 、主がそんな玉じゃない事くらい知っとる」
くっ……、通じないか、流石に五千歳の事だけはあるのね……。
「はぁ……、静かに遺跡で寝てた筈のニクスが、居なくなったのよ!」
此れには、流石の婆さんも知らなかった様ね、マユをピク衝かせたのシッカリと見てやった。世の中を何時も見て居る様な面して、偉ぶっているけど知らない事も有るじゃないよ。
四日前……。
「うわっ、流石首都だわ……、人通りが半端無いな……」
ハーフが住むカスガ村、母の墓の傍に父親を埋葬した後、一人その村に残留していたラミカだったが、ある日、神殿跡地の石群をふと訪ねると、眠っている筈のニクスが表れる。
何をする訳でも無く、空中に浮遊しているだけの思念体。
見ていると、あの夜共に戦った記憶が蘇り、想い人が浮かぶ。
それを切っ掛けに、偶にその場所へと足を運んでいた。
そんなある日、村に怪しげな集団が訪れニクスの事を聞いて廻った。当然、ラミカの元にも表れたが、得体の知れない連中に離す筈も無く、何も知らないと答えていた。
暫らくしたら、彼らは何処かへと姿を消していた。
嫌な予感に突き動かされ、彼女はニクスの場所に行って見ると、此れまで姿を現していたニクスが表れない、違う位置に出現するのかと辺りを捜すと例の男達が居た。
「ふっ、これで破壊神が手に入ったぞ、急ぎ戻るぞ」
リーダー格の男の声で一団は、転移魔法で消えて行った。
〝大変、皆に知らせないと!〟
父に連れられ各地を転々としていたラミカも首都は初めてだった。
「ロゼ様、宮殿かな?、行っても直ぐに会えるのかな?」
門前払いを不安に想うが、此処へ首都の観光に来たつもりは無い。
重要な事を伝える為に、やってきた。
ハイデ宮殿の門は、視界に入っている。
躊躇している時間は勿体無い。
門衛の訝しげに見詰る顔に、やはり不安が出るが声を掛けるしかない。
「あの……、ロゼ皇女殿下に逢いたいのですが……」
皇女の名前を聞いた途端、隣の石柱の門衛も此方へとやってきた。
「皇女殿下に、何の用事が有る?、貴様の名前は?」
門衛であるが故、見知らぬ者に高圧的な態度は、已む得ない処も有る。
「カスガ村に住んでいる、ラミカと……
ラミカと名前を告げた瞬間、門衛の態度が急変した……。
「おお! 、英雄殿のお連れの方でしたか、御無礼を!」
「皇女殿下に、すぐお知らせしてきますね」
「あ、はぁ…………」
片方の門衛は宮殿中へと走って行った。
残った一人からも手厚い案内をされ、貴賓室へと通された。
「皇女殿下は、間も無く来られる筈、此処で暫しお待ちを」
一人貴賓室に残されるが、見た事も無い豪華な部屋に、椅子を汚しては申し訳無い気がして、ロゼが訪れる迄、部屋の中で立って待つ事にした。
「凄い部屋だわぁ……、あの絵とか幾かしら……?」
自分の住んでいる家と比較してしまい、肩身が狭い心境に成ってきた。
「ふぅ、この部屋だけで、私の家の何倍有るのよ……?」
時間を持て余し、部屋の隅から歩いていると、扉が開かれロゼが入ってきた。
「居たっ! 、ラミカ久しぶりネェッ!」
「ロゼ様、 御久しぶ……
ロゼに飛び付かれて声を中断された。
「ちょ……ロゼ様、苦しい……」
「もう! 、又、お馬鹿な挨拶してるっ、ロゼ様離れて下さい」
直ぐ後から、マリネも部屋へとやってきた。
ドアの森駐屯地での奪還を無事に終らせ、駐屯地の副隊長に就任ししていたが、従兄弟が気を利かせてくれ、代わりの副隊長と交代し彼女は再び首都へと戻り、ロゼの従者に返り咲いていた。
「でも……、如何したのラミカさん、急に来たりして」
マリネはラミカの身体に張り付いているロゼを引き剥がしながら、訪ねた。
「ふぅ……、用件忘れかけたじゃないですか……もぅ」
「あははは、ごめん……、で、何の用?」
自分と違って、良い香りのロゼに抱きつかれた。
一瞬、妙な気分に成り、顔を染めたが、気を取り直して話した。
「おほんっ、大変な事が……」
「大変な事?……、まさかユキヒトが行倒れて死んだとか?」
「いやあああぁ、ロゼ様、変な事言うの止めて下さい!」
マリネはロゼの胸ぐらを叩き、怒りを顕にした。
彼女にしたら、冗談では済まない話だったせい。
「違いますっ! 、ニクスの事です!」
「思念体が……、どうかしたの?
「攫われました!」
「はあぁっ?」
「へ?」
事態を知らない二人に、カスガ村にやって来た得体の知れない連中話と、その後石郡で起きて居た事を、全部彼女たちに話した。
「思念体を捕まえるなんて……」
「そんな……、どうやったらそんな事が?」
「私だって聞きたいくらいよ……」
ちょっと前までの、浮かれた気分は何処かへ消え去った。
「私一人では、どうにも手におえる物じゃなくて……」
「それで、私の所へ来たと言う訳ね」
「ええ……」
今の話だと集団で破壊の女神を使い、何かを企んでる者が居る。
しかも単独ではなく、一つの集団での仕業だ。
確かに、個人で解決するには不可能である。
「よしっ! 、皆を集めましょう」
「又、皆に逢えますね、ロゼ様」
「んん……?、皆なの?……マリネぇ」
マリネはロゼが何を言いたいのか、すぐに見当がつき、紅くなった。
「もぅぉ、ロゼ様だって……同じ癖にっ!」
「なななな、何を根拠に?」
「知ってます?、朝起こしに行くと何時も、ユ……
「わああああああああああ、余計なこと言わない!」
ロゼは慌ててマリネの口を両手で塞いで、それ以上の言葉を阻止した。
それを見ていたラミカだが……。
「はあぁぁぁっ……」
大きく息を吐いて、呆れた。
「と、と、取り合えず、彼から捕まえましょ……」
今、━━━。
「それで……小僧を連れに来たと?」
「そう言う事!」
しかし、婆さんもユキヒトの行く先知らないみたいだし……、先に他の連中を集めに行く方のが、何かと都合が良さそうね……。
「彼が居ないんじゃ仕方ない、先に他の連中を呼びに行く事にするわ、彼の情報が何か分かったら教えて頂戴!」
取り合えず、此処にはもう用が無い。
マリネ連れてアネスとハルを、先に捕まえようかしら……。
「ラケニス……帰るわ、早く扉を開けて頂戴」
彼が居ない以上、早く他の仲間を集めたいわ……。
「何じゃ……?、小僧の居場所聞かなくて良いのか?」
私達は、耳を疑うほど驚いた!
「な、はあぁあ?、知ってるなら何で早く言ってくれないのよっ!」
「何を言うて居る……、一度も小僧の居場所を尋ねられて居らんぞ?」
「くっうう……」
でた……、肩肘ついてのドヤ顔がっ!
そんなの私等が来てる事で、察するでしょ?。
忘れていた……、こういう婆さんだった……。
居場所を聞くのが、先決よ、我慢してあげる。
「で……、彼は、ユキヒトは今何処に居るのよ?」
「小僧が今居る場所はのぉ……、あの世じゃ」
「はあっ?」
「ええ?」
え?……、死んだの?、それなら最初に言う筈。
あの世に居るって、何なのよ……。
有難うございました。




