作戦会議 その2
「あのっ」
目の前に彼がいるわけではないのに、言葉に詰まる。
「ん? なぁに?」
電話越しに聞こえてくる穏やかな声が、私に一握りの勇気をくれる。
「……次、会う時にっ」
「うん」
「おおっ、お話が、あります……」
「ん? 今じゃ、なくて?」
「その、今はちょっと……」
勝手に、視線が泳ぐ。
「……分かった。来週、会う時にね」
「はい」
やっぱり、あなたは。待ってくれるのですね。
心の中が、じんわりと温かいもので満たされていく。
「あの」
「ん?」
「最近、雨、多いですよね」
「うん。梅雨だしね」
「それで……もし来週、雨だったら、どうしますか?」
「え?」
「わ、私がっ、そちらに行きましょうか?」
まだ続きがあるのに、息が。声が……
「雨だとっ、こうっ、の、さん……いろいろ、たっ、大変……」
「……」
「だからっ」
「……ありがとう」
落ち着いた声が響いてくる。
どうして、私ばっかり。いつも声が震えてしまうの。
「大丈夫。僕が行くよ」
「でも……」
「もし雨が降ったら、相合傘しよう」
「えっ」
「僕、手ふさがっちゃうし」
「あ……」
「それに」
彼の声が、急に色味を帯びる。
「そういうの、やってみたかったんだ。恋人と」
「……っ」
体温が、急上昇する。
「じゃあ、また来週」
「はいっ」
「……奈月ちゃん」
「はい?」
「好きだよ」
「っ!!」
「……君は、言ってくれないの?」
「えっ!?」
「言わないと、電話、終わらないよ?」
「……」
それは、あまりにも難しい問題で。
わざと言わない、は有りですか?
「ごめん、今のは」
「……電話」
「え?」
「電話、切りたくなかったら、どうすればいいですか?」
「……」
「わがまま、ですよねっ」
また、困らせてしまった。携帯を握る手が、汗で滑る。
「すみまっ」
「まいったな」
「え?」
「君、今。すっごく可愛いこと言ったよ」
「……っ」
「だから、ずっと話していよう。君が、眠れるまで」
「ね、眠れなかったら……?」
「徹夜する」
「えっ!?」
「というか、何時間喋るつもり?」
「っ!!」
クスッ、と柔らかい笑い声が聞こえてくる。
「電話も、いいね」
「はい……」
それから。夜空に輝く星たちが呆れるくらい、ずっと。
ずっと、二人で。




