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あれから 満開の桜のそばで 〜目が見えにくいあなたとの物語〜  作者: 綾瀬 桜


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作戦会議 その1

 窓を叩く雨音が、もう何日もBGMのように流れ続けている。鳥のさえずり、とか。子どもたちが元気よく走る音、とか。そろそろ、違った音を聞きたい。


「雨って、困るわよねえ。郵便も濡れちゃうし」

 お母さんが、ポテトチップスをお皿へと移し替えながら呟く。

 カラカラッ。

 思っていたより可愛い音が聞こえてきて、お皿を見つめる。


「あんたも、いる?」

「ううん、大丈夫」

「そうそう、お父さんにハガキ出したいんだけど。届ける時って、雨に濡れないようにしてくれるのかしらね」

「どうかなあ。お父さん、今どこだったっけ?」

「青森。お土産はやっぱりリンゴかしら」

「……どうだろう」

 こんなに毎回お土産を楽しみにされたら、お父さんも大変だろうなあ。

 そんなことを考えながら、薄暗い空を見上げる。


「そういえば、次はいつ頃、こっちに来るの?」

 お母さんが、ポテトチップスに手を伸ばす。

「え? お父さん?」

 パリ、パリ。

 軽快な音だけが響く。


「……違うわよ。奈月の彼よ」

「えっ!?」

 反射的に、勢いよく立ち上がる。

「ちょっと、どうしたの?」

「いや、だって……どうして、そんなこと聞くの?」

「そろそろ会わせてくれないかなーって」

「えーーーっ!!」

 雨音が聞こえなくなるくらい、大きな声が出る。

「もう、そんなに驚かなくてもいいじゃない」

 彼女がいたずらっぽく笑う。

「気になるもの、どんな人なのか。もう半年くらいになるでしょ? 付き合って」

「そう、だけど……」

「心配しなくても、ちょっと顔見て話するだけよ。ね?」

「でも……」

「奈月に会いに来たついででいいし、急がないから。ね? お願い」

 お母さんが、とびっきりの笑顔でウインクをする。

「……今度、言ってみる」

「やった!」

 彼女が無邪気にはしゃぐそばで、私はそっと息をつく。


「そういえば、お父さんにはまだ言ってないんでしょ? 付き合ってること」

「うん……」

「お母さんから、言っちゃおうか?」

「えっ」

「恥ずかしいんでしょー」

「……」

「お父さん、飛んで帰ってきたりして」

「それはさすがにないんじゃ……」

「どうかしら。反応が楽しみねー」

 彼女が声を弾ませる。


「お母さん」

「ん?」

「……いつか、自分で、言うよ」

「そう? じゃあ、言ったら教えてちょうだいね」

「うん」

 小雨になってほんのりと明るくなった空の向こうで、鳥の短いさえずりが聞こえた。

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