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あれから 満開の桜のそばで 〜目が見えにくいあなたとの物語〜  作者: 綾瀬 桜


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特別という幸せ その1

 星たちが控えめな輝きを放つ、静かな夜。真っ暗にしたはずなのに、部屋の中はそれほど暗く感じられなくて。壁の模様が、くっきりと見えている。

 ……眠れない。

 がバッとタオルケットを被って、目を閉じる。


 この前は、急にごめんね。だから、今回は先に言っておく。心の準備、しといて。


 彼の言葉が、頭から離れない。電話越しに届いた彼の声は、いつもと変わらず優しくて。でも、いつも以上に真剣で。

 ……心の準備って、どうやってすれば、いいんですか?

 彼の眼差しを。手のひらから伝わる熱を。思い出すだけで、胸が苦しくて。

 彼の指先を。外されたボタンを。その先にあった、光景を。想像するだけで、頭がクラクラしてきて。手の感覚が、なくなっていくのに。

 怖い、という気持ちが全くない、とは言えない。それでも、甘い刺激に喜びを感じていた自分が、たしかにいる。

 なのに。

 いっそ、何も考えずに。与えられる刺激に溺れてしまえばいい、とも思えず。

 ……あなたは、どんな気持ちで。

 それまでも考えてしまったら、もう。

 どうすれば。私は……


 あとは、奈月次第かな。


 美幸の声が、響いてくる。

 ……どうすればいい、ではなくて。

 私は、どうしたいの?

 心の、奥の奥まで、その答えを探しに行く。


 彼に、触れたい。……触れられたい。どうしようもなく。


 やっと見つけられた本音に、涙が溢れてくる。

 どうしていつも、こんなに時間がかかってしまうのだろう。

 仕方ない、よね……

 そう言い聞かせて、眠気の波にそっと身を委ねた。


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