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最強吸血鬼である男子高校生と最凶ヴァンパイアハンターである女子高校生が出会ったら  作者: 田丸 彬禰


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8/12

人外の者たち 

「ところで、ヴァンパイアハンター協会は人狼については認識を持っていたのかな?」


「それなりにありました。吸血鬼狩りをおこなう際に出くわすことがあるので」


佳和羅の問いに綺羅はそう前置きすると、そのまま、言葉を続ける。


「奴らは集団で行動する。個として弱くても数が多ければ当然脅威となる。人狼の集団に遭遇した場合、避けられるのであれば戦闘はするな。どうしても戦わなければならない場合は奴らの弱点である銀剣を出せ。そうすれば多くの場合、相手は引く。それでも戦いになった場合は防御に徹せよ。奴らの主武器である爪を銀剣で受ける。それだけで十分なのだから」


「ですが、協会の注意には結界を展開するというものはなかったです」


「まあ、そうだろうな。あれを使うのは人狼の中でも相当上位に位置する者だから」


「ついでに言っておけば、人狼で単独行動をとっている者は相当な実力者と思っていい」


「そして、人間の目にはどう映っているかは知らないが、吸血鬼と人狼は単なる敵対関係にあるわけではない。奴ら人狼、さらに他の人外の者にとって吸血鬼の血や肉は自身の寿命を延ばす糧」


「だから、彼我の力の差に関わらず、奴らは吸血鬼を襲う。いや。襲える機会を窺っている。だから、吸血鬼とヴァンパイアハンターとの戦いは奴らにとって非常に望ましいものということになる」


「ヴァンパイアハンターは手を結んだ人狼から吸血鬼の情報を得ていた。そして、協会はハンターたちに吸血鬼の死体の処分を配下の人狼たちに任せていた。協会用語の掃除屋とは人狼たちを示す」

「うそ……」

「本当だ。人狼の全部族が一致団結しているわけではないし、はぐれ者もいる。当然内部抗争もある。ラノベやアニメのように同じ種族だからといって全員が同じ方向を向いているわけではない。それは、吸血鬼、いや、人間を見ればわかるだろう」


「どの世界でも、善と悪が色付けされて善側の者は常に善なる行動をし、悪側の者の行動はすべてが悪などということはない」


「誰も彼もすべて自身の利益のために動く」


「その立場によって変わる善悪などを考えて動いているわけではないのだ」


「では、あなたは何を考えて行動しているのですか?佳和羅」

「私か?」


「そうだな。日々無事暮らせればいい。その程度だな。むろん、それは私ひとりというわけではなく、私の屋敷に住む者全員という意味だ」


「だから、万が一、屋敷の者が害されれば報復をおこなう。だが、こちらから出向き意味もなく他の種族を狩りにうことはない」

「なぜ?」

「必要ないからだ」


あまりにもっともな言葉に返す言葉が見つからない。

いや。

ないと言った方がいいだろう。


一瞬の百倍ほどかけたところで綺羅が口を開く。


「ちなみに、現在は私も屋敷の住人になっているのですが……」

「ああ」


「だから、保護すべき者のひとりだ」


「当然先ほどの人狼の戦いで綺羅が劣勢になったら即座に加勢した」

「本当に?」

「ああ。もっともあの程度ではその必要もないこともわかっていたのだが」


「ただし……」


「今後現れるのはもっと強い奴だと思った方がいい。そして、申し訳ないのだが、おそらく綺羅はこちら側の者だと相手に認識されていると思う」


「だから、今後は今まで以上に緊張感をもって行動してくれ。特に屋敷の外では」


「校内。それから学校の行きかえり。単独行動しているときは……」

「校内も、ですか?」

「吸血鬼いるだろうがいるのだ。他の種族の者だって紛れ込んでいるだろう。そして、人外の者は皆変装上手。見た目はすべて人間だ。そして、必ずしも男とは限らない」


「綺羅は吸血鬼以外の人外の者は探知できないようだから気をつけるべきだ」


「それと当然ではあるのだが、大部分の生徒と教師は普通の人間だ。たとえ自衛行為であってもその者たちを戦闘に巻き込むわけにはいかない。それからここが重要だ」


「戦闘を彼らに目撃されてはいけない。つまり、剣を使用しての戦闘は厳禁。というより、彼らの前で敵を殺すこともできない」

「では、どのように戦えばいいのですか?」

「結界を展開させる。もちろん綺羅が結界を展開させられないことを知っている。だから、私の前にその者を連れてくるか、相手が結界を使うのも待つしかない」


「もっとも、それは相手も同じ。自分が学校から消えても構わないということになければ戦い方は大幅に制限される。まして、本当の姿を現すようなことになれば、自分だけではなく同族にも大きな影響を及ぼす。余程の馬鹿ではないかぎりそのような事態にはならない」


「あり得るのは普通の高校生が起こす程度のもの。ナイフで切りつける。または階段から突き落とす類のこと」


「そして、よりあり得るのは後者。これなら犯行後逃げ切れる可能性があるからな。道路や駅のホームは要注意というところだろう」


「ところで……」


「吸血鬼にとっての敵についてはどの程度知っているのかな。むろん、ヴァンパイアハンターを除いての話なのだが」


綺羅は肩書上では今でもヴァンパイアハンターである。

当然吸血鬼以外のことは知らない。


そう言いたいところであるのだが、実際はそうではない。

当然のことではあるが、多くの吸血鬼は昼間に活動できない。

これは事実であり、ヴァンパイアハンターとしては彼らが眠りについている間に仕事を済ませてしまえば、たいした問題も起こらない。

だが、それはターゲットとなる吸血鬼のアジトを知っているからできることであり、ねぐらを知られた吸血鬼はすでに狩られているわけで、残っているのは当然住所不定、少なくてもその住処が知られていない者たち。

そのなれば、彼らを狩るために危険を冒してでも夜に動かねばならない。

そして、闇夜に吸血鬼狩りをおこなっていれば出会いたくない者たちと出くわすことがある。

そのいい例が人狼。

協会は人狼の対策をハンターたちに伝授していた。

もちろんその他の種族についても注意喚起していた。


実をいえば、一概に闇に巣食う者たちと言っても実は驚くほどの種類がいた。


その中でヴァンパイアハンターの敵になり得るのは知性を持つ亜人や獣人と言われるものたち。

むろん、人狼はここに属する。

そこに続くのは食人鬼や食屍鬼。


この中で食屍鬼は死体を専門に食らう者であり、ヴァンパイアハンター協会が狩った吸血鬼の死体を処理させているのがこの食屍鬼たちであるのは吸血鬼たちの中では有名な話であり、当然のようにその報復として食屍鬼は吸血鬼たちの狩りの対象になっている。

対して食人鬼が獲物としているのは生きた人間や人外の者たち。

当然こちらは吸血鬼たちにとってはライバルということになる。


ついでに言っておけば、人狼もその栄養補給は吸血鬼と同じように通常の食事から得ており、血液はあくまで寿命を延ばすため。

彼らにとって人間の血は寿命を延ばすが、吸血鬼の血は不老不死の薬であり、似て非なるものとまではいかないものの、効果は微妙に違う。

そして、その効用を考えれば、人狼が吸血鬼の血を欲するのは当然と言えば、当然の話と言えるだろう。

そこにもうひとつつけ加えておけば、吸血鬼が血を吸うのは、多少の性的快感を得られるものの、基本的には同族を増やす、いわば生殖活動。

だから、一般的に知られている、女性のみを襲うということはなく、男女を問わず自身の役に立ちそうな者をその対象とする。

そして、一度吸血鬼に血を吸われた者は再び血を吸われた場合でも、従う相手は変わらないという理があるように思われているが、これは間違いであり、上位者であれば、すでに別の吸血鬼の従者になっている者でも支配することは可能である。

つまり、その最高位にいる佳和羅はその気になればすべてを支配することができるということになる。



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