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最強吸血鬼である男子高校生と最凶ヴァンパイアハンターである女子高校生が出会ったら  作者: 田丸 彬禰


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4/8

始祖

ありえません。


綺羅は男を睨みつけながら心の中で呟く。


自身が発する吸血鬼の匂いを完全に消し去ることができる?

いや。

この男は自由に操れるということだ。


そのような吸血鬼に出会ったことはない。


違う。

そのような報告もないし、教書にも書かれていない。


そして、そうなると先ほどの件は、自分の気の緩みなどではなく、相手が完全に気配を消して近づいたと思っていい。


つまり……。


相当やる。


だが……。


「安心しろ。ここは学びの場。荒事はおこなうべきではない。それに……」


「もうすぐ授業が始まる。教室も戻らねばならない。案内してやるからついて来い」

「不要です」

「だが、結局また会うことになるぞ。久家月綺羅」


六条野可和羅と名乗ってその吸血鬼に自分の名を呼ばれた綺羅はさすがに驚きの感情を完全には隠せない。


「……なぜ知っている。私の名を」

「相手の情報を手に入れているのが自分たちたちだと考えていたのか。人間」


「一応言っておけば、おまえは俺と同じクラス。つまり、同級生ということだ。そういうことで……」


「これからよろしく」


そう言って、可和羅は背を向ける。


今なら殺れる。


そう思った瞬間、綺羅は気づく。


自分たちが異様な空間にいることを。


一見すると何も変わっていない。

だが、ほんの少し前までそこに歩いていた生徒や教師が消え、自分と可和羅しかいない。


「何をしたのですか?」

「何をした?」

「ここは……」

「ああ。そのことか」


そう言って可和羅は黒い笑みを浮かべる。


「俺たち、いや、私たち以外の時間を止めている。さすがに今の会話は他人には聞かせられないからな」


「もちろん指を鳴らせば元に戻り、皆何事もなかったかのように動き出す」


時間を止める。


そのような能力を持った吸血鬼は知らないし、もちろん異能の持ち主であるの集まりであるヴァンパイアハンターにもそのような能力を持った者はいない。


「そのような能力を持っているのならなぜ私を始末しないのですか?私の名前を知っているということなら、私の本当の仕事を知っているのでしょうし、ここに来た目的も知っているのでしょう」


「言っておきますが、私は強い。もしかしたら、これが最後のチャンスかもしれませんよ」


むろん強がりである。

だが、それと同時に本音でもある。


それだけの能力があるのなら殺すことは容易い。

それをおこなわないということは自分を圧倒的強者と認識し、やってきた相手を弄ぶことが目的。

どんなことがあろうともそのようなものにはなる気はない。


「ですが、死ぬ前に聞いておきましょう」


「いったいあなたは何者ですか?」


「言いたくはありませんが、あなたはこれまで会ったどの吸血鬼よりも強い」


「もちろんファースト・ロッジはもちろん、真祖も含めてです」

「まあ、そうだろうな」


「確かに私は彼らよりも強い」


「なぜなら、真祖と呼ばれる彼らには私の能力の一つしか与えていないのだから」


「そして、おまえに見せたふたつの能力は彼らに与えていないものだ」

「もしかして……」


「そういうことだ」


「私は始祖。始まりの吸血鬼だ」


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