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最強吸血鬼である男子高校生と最凶ヴァンパイアハンターである女子高校生が出会ったら  作者: 田丸 彬禰


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新しい仕事

「ひとつよろしいでしょうか」


一瞬後、綺羅は小さな咳払いで仕切り直しをすると、そう前置きし、目の前の男は頷くのを確認すると、もう一度口を開く。


「死者に対して申し訳ないとは思うのですが、真祖級の者が日本にいるなど。まして、それ以上などありえない話です」


綺羅の言葉は正しい。


真祖とは、「ヴァンパイアハンター協会」の用語のひとつで世界に分布する吸血鬼の頂点を成す十二家の吸血鬼一族の当主を示す。

当然肩書だけではなくその力も最高位であり、たとえグループによるものであっても真祖を倒したヴァンパイアハンターはそれだけでヴァンパイアハンターの歴史に名を遺す者となる。

その意味からも、単独で三人の真祖とその一族を討伐した綺羅が史上最高のヴァンパイアハンターと言われるのは当然のこととなる。


ついでにいっておけば、世界中の吸血鬼はこの十二家のいずれかの血が入っているとされる。

真祖から枝分かれした高位の分家となる「ファースト・ロッジ」七十二家がさらに分家をつくりながら各地の吸血鬼を差配している。

吸血鬼たちがロッジと呼ぶ広い裾野を持つ組織。

だが、人間の世界と同じように吸血鬼にも組織に馴染めない者は存在するらしく、ロッジには関わりを持たずに行動している吸血鬼もいる。

彼らは「はぐれ者」と呼ばれている。

そして、日本には真祖の一族はもちろん、分家にあたる者も拠点を置いているのを確認されておらず、「はぐれ者」の独壇場となっているというのが、「ヴァンパイアハンター協会」の見解であった。

当然、「はぐれ者」には真祖やその一族と同程度の力を持つ者などいない。


「だが、実際にファーストクラスのヴァンパイアハンターを含む数十人のヴァンパイアハンターが何の痕跡も残すことなく消されている。これほど完璧な仕事ができるのは高位の吸血鬼しかありえない」


「だが、真祖をはじめ主だった吸血鬼は我々が狩っている。となれば、日本にいる『はぐれ者』の中にとんでもない力を持った者がいると考えるしかないだろう」


実はこの場にいる者は口にしなかったものの、そのようなことが出来る吸血鬼はいる。


始祖。


いわゆる始まりの吸血鬼であり、そこから真祖が生まれ、現在のように世界中に吸血鬼が広がった。

そして、「最強の吸血鬼」という称号を持つ始祖であれば、エリートヴァンパイアハンターを倒すことも可能であろうし、日本のヴァンパイアハンターが一気に消されたというこの事態を説明するのであれば、始祖のおこないとすれば筋が通る。


だが、始祖が日本にいるという証拠など何もない。

いや。

そもそも、吸血鬼の世界の中心はヨーロッパであり、その地に住む者には申し訳ないのだが、東アジアは僻地。

その中でも島国である日本はさらに僻地。

そのような場所に最高の吸血鬼が居を構えるなどありえないこと。


そういうことでふたりはこの事態を説明する際に最も正しい解になり得る要素を無視した。


「まあ、君が出向くのだ。相手がどれだけ強かろうが問題は起きないだろう。もちろん一応サポートをつけることも可能だが」

「いや。結構です。必要があればこちらからお願いしますが、探索の時点で多数のハンターを投入した場合、こちらの動きが気づかれ逃げられる可能性がありますから」


「それよりも……」


「こちらの存在に気づかれぬようなフェイクカバーが欲しいです。もちろん私であれば女子高校生が最高のものとなりますので、どこかに入学できるように手配をお願いします」


「できれば前任者たちが活動していた周辺の高校がいいのですが」

「承知した」


むろん、戦争状態にある国同士でも対吸血鬼に関しては手を結ぶのだ。

協会の名を出せば、簡単に入学、その前の様々な手続きをあっさりとクリアされる。

その間に綺羅は語学をはじめ多くのことを学習する。

生まれてからずっと日本で過ごしてきた日本人になるために。


そして……。


「では、行ってきます」


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