ごめん、ごめん
版
「……なんで、助けられなかったんだろう」
「導子……」
「手を、伸ばせなかった」
声がかすれる。
「彼、ちゃんと頑張ってたのに……
幸せになっていい人だったのに」
沈黙が落ちる。
「……なんで、努力してる人が叩かれるの?」
ぽつりとこぼれる。
「頑張るのって、すごいことなのに」
まるは少し考えてから、答えた。
「……分かんないけどさ」
「うん」
「匿名だから、バレないからって、
ストレス発散で言っちゃう人がいるんだと思う」
「……」
「おかしいよ」
導子は顔を上げる。
「なんで、そんなことで人を傷つけるの?」
「……うん」
「有名になるって、そういうことなのかな」
まるは静かに言う。
「……それも一部だと思う」
「そんなのおかしいよ」
少しだけ声が強くなる。
「自分のストレスのために、誰かを犠牲にするなんて」
「……そうだね」
まるは否定しなかった。
「導子はさ」
「?」
「ストレス溜まったら、どうする?」
「……カラオケとか」
「だよね」
少し間をおいて。
「それと同じ感覚で、人にぶつけちゃう人もいるんだよ」
「……」
「もちろん、いいことじゃないけど」
「傷つくって、分かってるはずなのに」
「分かってるよ」
まるの声は静かだった。
「でも、それでも抑えられない人もいる」
導子はぎゅっと拳を握る。
「……おかしいよ」
「うん」
「有名人だからって、何言ってもいいなんて」
「……おかしいね」
まるは小さくうなずいた。
「でも、それも含めて“世界”なんだと思う」
沈黙。
「……そっか」
導子はゆっくり息を吐いた。




