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後悔
「初めての仕事、成功だね」
「……本当に、これでよかったのかな」
「ん?どうして?」
「彼のほうには、あまり寄り添えなかった気がして」
まるは少しだけ考えてから、口を開いた。
「たしかに、彼女の気持ちは優先してたかもね。
でもさ、彼……ちゃんと納得してたじゃん」
「……うん」
「それって、すごいことだと思うよ」
導子は少しうつむく。
「でも、もっといい方法があったかもしれないって……」
「導子って、ほんといいやつだね」
「え……?」
「そうやって、人のために悩めるってさ。
なかなかできることじゃないよ」
「……そうかな」
「そうだよ」
少し間があく。
「導子。人を導くのって、簡単じゃない」
「……うん」
「人それぞれ考え方も違うし、救い方も一つじゃない」
静かに言葉が続く。
「それでも今回、ちゃんと“導いた”のは導子だよ」
「……でも」
「“でも”じゃない」
まるの声が少しだけ強くなる。
「人を導けるチャンスって、一回きりなんだよ」
導子は顔を上げる。
「だから、その一回にちゃんと向き合ったなら、それでいい」
「……うん」
小さくうなずく。
ピコン。
時計が鳴る。
「……次、来たね」
導子はゆっくり息を吸った。
「行こう」




