彼氏と会う
「こんにちは。彼女の友達の星空です。今日は一緒に来ました」
――けれど、彼の視線は最初から彼女にしか向いていなかった。
「みさき……頼む。やり直してくれ。
お前がいないと無理なんだ。離れて初めて分かった。
ちゃんと話も聞く。だから――」
必死な声だった。
「……ごめんなさい。それはできない」
静かだけど、はっきりとした声。
「なんでだよ……」
「あなたは素敵な人だと思う。
でも、気持ちが離れてしまったの。自分でも理由は分からない」
場の空気が、一気に冷えた。
「俺は、まだお前を愛してる」
「……私は、もう愛してない」
その言葉は、はっきりと線を引いた。
「あなたはいい人だから、私じゃなくても――」
「俺はお前しかいない!」
声が大きくなる。
私は一歩前に出た。
「……あの」
「なんだよ」
苛立った視線が向く。
少し怖かった。けど、目を逸らさなかった。
「彼女、怖がってます」
「……俺は落ち着いてる」
「本当にそうですか?」
一瞬だけ、彼の表情が揺れた。
「今までの行動、思い出してみてください」
「……」
言葉が止まる。
「あなたは気づいていないかもしれないけど、
その行動が、彼女を追い詰めていました」
喉が少し震える。
でも、止まらなかった。
「彼女……一度、全部終わらせようとしてたんです」
「……え?」
彼の顔から血の気が引いた。
「それくらい、苦しかったってことです。
だから――これ以上、近づかないでください」
沈黙。
長い沈黙のあと――
「……そうだったのか」
彼は小さく呟いた。
「……ごめん。もう、やめる」
力が抜けたように肩を落とし、店を出ていく。
扉の音が、やけに大きく響いた。
しばらくして――
「……ありがとう。助けてくれて」
「いえ」
少しだけ息を吐く。
「これが、私の仕事なので」




