初めての仕事
「……こんにちは」
「……何ですか」
目の前には、今にも命を絶とうとしている女性。
「その……やめてもらえませんか?」
(まる:バカ!それで止まるわけないでしょ!)
「関係ないでしょ」
「……あるよ」
「どこが?」
「えっと……女同士、話しやすいかなって」
「関係ないです。さよなら」
「待って。なんで、そうしようと思ったの?」
「言いたくない」
「……そっか」
沈黙。
「……苦しいの、嫌だよね」
「……え?」
「私も逃げたくて、同じことしようとした」
「……」
「でも止められてさ。正直、その時は“なんで止めるの”って思った」
少しだけ、彼女の目が揺れる。
「でも今は……止められてよかったって思ってる」
「……生きてもつらいし、どうせ変わらない」
「そうだよね。
でもさ、ほんの少しだけでもいいことってあるじゃん」
「……」
「みんな、その“少し”のために頑張ってるんだと思う」
「……じゃあ、私はどうすればいいの?」
「……分からない」
「は?」
「でも、一人で抱えなくていいと思う。
私も手伝うから」
しばらくして、彼女はぽつりと話し始めた。
「……元カレに、つきまとわれてるんです」
「……そうなんだ。つらいよね」
「はい……」
少し間が空く。
「警察には相談した?」
「しました。携帯も住所も変えたんですけど……それでも」
「そっか……」
うまく言葉が見つからない。
でも、ここで黙るのは違う気がした。
「よく、今まで耐えたね」
「……でも、もう辛くて。限界なんです」
今にも崩れそうな声だった。
(どうすればいい……)
少し迷ってから、口を開く。
「……一回、ちゃんと話してみるのはどうかな」
「え……?」
「もちろん、無理にとは言わない。
でも、気持ちをはっきり伝えないままだと、相手も止まらないかもしれない」
「……」
「私も一緒に行く。だから、一人じゃないよ」
しばらくの沈黙のあと――
「……ありがとうございます」




