佐藤くんやるじゃん
「……よ、おっさん」
「……こんにちは」
「どうも」
「こんなところで何してるんだ?」
「……見たら分かりますよね」
「まあな」
少し間。
「……だったら、一人にしてくれませんか」
「嫌だ」
即答。
「俺は、お前を放っておけねぇ」
「私もです。少しだけ、話しませんか?」
「……君たち、関係ないだろう」
「関係なくても、関わりたいんです」
「……どうして?」
「助けてもらったから」
導子が静かに言う。
「だから、今度は私たちが誰かを助けたい」
「……」
少しの沈黙。
「……分かりました」
男は小さくうなずく。
「でも、その女性には聞かれたくない話で……」
「あ、じゃあ私、少し離れてますね」
導子は距離を取る。
――――
「……で、どうしたんだ」
佐藤が低く聞く。
「……実は」
男はゆっくり話し出す。
「セクハラで訴えられて、会社をクビになって……」
「……」
「妻にも離婚されて、娘にも会えなくなった」
「……きついな」
「……」
「……それ、本当にやったのか?」
「やってません」
即答。
「……じゃあ、なんでだ」
「部下に……はめられたんです」
「……」
「写真を撮られて……」
「……はめられたって?」
「部下が、自分で俺の手を胸に……」
「……最悪だな」
佐藤は小さく吐き捨てる。
「……」
「なんでそんなことしたんだ」
「別の社員に頼まれたらしくて……」
「……くだらねぇ理由で、人の人生壊すんだな」
「……」
男は力なく笑う。
「……この世の中、理不尽ですよね」
「……ああ」
「嫌われたら終わりだ」
「……」
「だから、もういいかなって」
「……」
少し沈黙。
「……まあ」
佐藤が口を開く。
「クソみたいな話だな」
「……」
「でもさ」
「……?」
「それで終わりにするの、もったいなくねぇか」
「……」
「……何もかも失った気分なのは分かる」
「……」
「でも、“全部終わり”って決めるのは、お前だろ」
「……」
「まだ、終わってないなら」
少しだけ視線を逸らす。
「終わらせるの、早くねぇか」
「……」
男の目が揺れる。
「……娘、いるんだろ」
「……はい」
「会えねぇのはきついな」
「……」
「でもさ」
少しだけ間。
「嫌われたまま終わるか、
あとで少しでもマシになるかは、お前次第だろ」
「……」
「……」
「……そう、ですね」
小さくうなずく。
「……」
「もう少しだけ、頑張ってみます」
「……ああ」
――――
導子が戻ってくる。
「……どうでした?」
「……まあ、なんとか」
「……そうですか」
男は軽く頭を下げる。
「……ありがとうございました」
そのまま去っていく。
――――
「……佐藤くん」
「なんだよ」
「やる気、出てきた?」
「……別に」
少しだけ目を逸らす。
「ただ」
小さく言う。
「……ああいうの、放っとけなかっただけだ」
導子は少し笑った。




