佐藤、えらばれた理由考えて
「はぁ、はぁ……あ、いた」
息を切らしながらたどり着く。
佐藤は――静かに墓を掃除していた。
「……」
「……私も手伝うよ」
「いい」
短く返す。
「俺一人でやれる」
「……そっか」
無理に入らない。
少し離れた場所に立つ。
「……佐藤くんの過去、聞いたよ」
「……あっそ」
手は止めない。
「……つらかったね」
「……」
一瞬だけ止まる。
「お前みたいな、何も知らねぇやつに言われたくねぇ」
「……うん」
否定しない。
「分かる」
「……」
「私には、分からないと思う」
「……」
「でも」
少しだけ前を見る。
「分かろうとはしたい」
「……」
沈黙。
「……だったら、軽々しく共感すんな」
「うん。ごめん」
素直に言う。
「……」
空気が少しだけ和らぐ。
「でもさ」
「……」
「さっきの人のとき」
「……?」
「佐藤くん、“無理に止めようとしてなかった”よね」
「……」
「“逃げてもいい”って、言ってた」
「……それが何だよ」
「優しいなって思った」
「……は?」
初めて顔を上げる。
「普通ならさ、“生きろ”って言うじゃん」
「……」
「でも佐藤くんは、その人の気持ち、ちゃんと見てた」
「……」
「だから、ああいう言い方したんだよね」
沈黙。
「……」
「それってさ」
少し笑う。
「ちゃんと人の痛み、分かってるってことだと思う」
「……」
佐藤は何も言わない。
「……その力、もったいないよ」
「……」
「無理に変わらなくていい」
「……」
「でも」
少しだけ振り返る。
「そのままの佐藤くんでも、救える人はいると思う」
「……」
風が吹く。
「……私は帰るね」
「……」
「またね」
導子はその場を離れる。
佐藤は――何も言わず、墓を見つめていた。




