佐藤の過去
「佐藤くんって、生きることが辛いって思ってるの?」
「……お前には関係ない」
「こいつ、そう思ってるよ」
「おい、チクるな」
「だってペアでしょ?
お互いのこと知らないとダメだよ」
「……俺は帰る」
背を向ける佐藤。
「……あんたの過去、話しちゃうよ?」
「……」
少し止まる。
「……もういい。勝手にしろ」
そのまま去っていく。
「佐藤くん……」
「いいのいいの」
まるが軽く言う。
「で、佐藤の話なんだけど」
「……なんで知ってるの?」
「マニュアルはね、ペアの情報を見れるの」
タブレットを軽く見せる。
「え……」
「だから、まるも導子のこと最初から知ってたよ」
「え!?じゃあ、あの話も……?」
「うん」
「やだー、恥ずかしい……」
顔を覆う導子。
「ごめんね。でも、その方がやりやすいからさ」
「……そっか」
「どう接すればいいか分かるでしょ?」
「……うん」
少し真剣な顔になる。
「で、佐藤の過去だけど」
「……」
「昔、アイドルやってたの」
「え……」
「でも、全然売れなくてね」
「……」
「二人組だったんだけど、相方が病んで辞めちゃって」
「……」
「それでも一人で頑張ってたんだよ」
「……」
「毎日配信して、街でビラ配って」
「……すごいね」
「うん。すごかったと思う」
少し間。
「でもね」
声が少し落ちる。
「ある日、社長の話を聞いちゃった」
「……?」
「“あいつ嫌いだから売らない”って」
「……ひどい」
「それで、全部壊れた」
「……」
「努力しても意味ないって思うようになって」
「……」
「人も信じられなくなった」
「……」
導子は黙る。
「それで、人生やめようとしたときに」
「……」
「谷死と出会って、死神になった」
「……」
「よく、やるって言ったね」
「釣られたんだよ」
「……?」
「この仕事をやったら、辞めた相方を救ってくれるって」
「……」
導子の目が揺れる。
「……優しいね」
「うん」
「めちゃくちゃいいやつ」
「……」
「でもね」
「……?」
「助ける前に、その子……」
「……」
導子が顔を上げる。
「あっ……」
言葉にならない。
静かな空気。
「……そっか」
導子はゆっくりつぶやく。
「だから……あんな感じなんだ」
「……うん」
少しの沈黙。
「……でも」
導子が顔を上げる。
「態度はよくない」
「……お」
「でも」
一歩踏み出す。
「ちゃんと向き合いたい」
「……」
「私、佐藤くん探してくる」
まるが少し笑う。
「いってらっしゃい」




