追い詰めないで
「……なんで人間って、自分を追い詰めるんだろう」
「いろいろ理由はあると思うけど」
まるは少し考える。
「一番多いのは、“誰かに対する気持ち”じゃないかな」
「……誰かに対する気持ち?」
「罪悪感とか、申し訳なさとか」
「……どういうこと?」
「導子ってさ」
「うん?」
「遅刻したとき、どう思う?」
「……友達に申し訳ないなって思う」
「でしょ」
まるはうなずく。
「人ってさ、わざと誰かを困らせたいわけじゃないんだよ」
「……」
「でも、結果的に迷惑かけちゃうことってあるじゃん」
「あるね」
「そのときに」
少し間を置く。
「“自分のせいだ”って思いすぎちゃう」
「……」
「“自分ってダメだな”って」
「……」
「それが積み重なると、自分を責め続けちゃうんだと思う」
導子は少し黙る。
「……他人を傷つけた自分が許せない、ってこと?」
「うん」
「だから、“自分なんて”って思っちゃう」
「……」
「それで、自分をどんどん追い詰めていく」
静かな沈黙。
「……じゃあさ」
導子がぽつりと聞く。
「そういう人、減らす方法ってないの?」
「……難しいと思う」
「……」
「人って、失敗したらどうしても自分を責めちゃうから」
「……そうだよね」
「“自分のせいで迷惑かけた”って思うの、止められないし」
「……」
まるは少しだけ優しく言う。
「でもさ」
「……?」
「全部を背負う必要はないと思うよ」
「……」
「人って、一人で生きてるわけじゃないから」
「……」
「迷惑かけたり、かけられたりしながら生きてるんだと思う」
導子は小さく息を吐く。
「……そっか」
「うん」
「それでも、難しいけどね」
「……うん」




