いじめって何?
「……道徳で“いじめはよくない”って学んだのに、
なんでなくならないんだろう」
「導子ってさ」
「?」
「欲しいものあったら、すぐ買う?」
「うん。買っちゃう」
「たとえ、お金なくても?」
「……欲しかったら、買うかも」
「でしょ」
「……それがどうしたの?」
「“ダメだ”って分かってても、やっちゃうことってあるってこと」
「……」
「いじめも、それに近いんだと思う」
「え……」
「イライラしてるとか、ストレスとか、
そういうのを抑えきれなくて、誰かにぶつけちゃう」
導子は眉をひそめる。
「……そんなの、自分勝手じゃん」
「うん。自分勝手だよ」
「被害者のこと、どう思ってるの?」
「……深く考えてない人が多いと思う」
「……」
「極端な話、“どうでもいい存在”みたいに見ちゃうこともある」
「そんな……」
少し間があく。
「導子だってさ」
「?」
「蚊を叩いても、そんなに罪悪感ないでしょ」
「……まあ」
「加害者は、それに近い感覚で相手を見ちゃってることもある」
「でも、人と蚊は違うじゃん」
「うん、違うよ」
「でもね」
まるは静かに言う。
「“違う”って思えてない人もいる」
「……」
導子は言葉を失う。
「じゃあ、どうすればいいの」
小さな声。
「いじめ、なくせるの?」
「……正直、分からない」
「分からないじゃダメだよ」
少し強く言う。
「それで、人が傷ついてるんだよ」
「……分かってるよ」
まるも少しだけ声を落とす。
「でも、この世界には、いろんな考えの人がいる」
「……」
「それを全部同じにすることはできない」
沈黙。
「……おかしいよ、この世界」
「うん」
まるは否定しない。
「おかしいところも、たくさんある」
「……」
「だからこそ」
少しだけ柔らかい声になる。
「自分で考えて、どう行動するかが大事なんだと思う」
「……道徳で学んだことも?」
「うん」
「学ぶだけじゃ意味がない」
「……」
「ちゃんと使わないとね」
導子は小さくうなずいた。
「……そうだね」




