第二十二話 壁はいつでも
連日投稿です、珍しいこともあるもんでしょ?
連日投稿は2年と8カ月ぶり……というかやばいな。
初投稿から3年弱。思っていたよりも全然進んでなくて草ぁ!
念入りに櫛で前髪をとかしつつ、
若いころのギルドマスターの絵を見つめていた。
「いつ見てもいい筋肉~」
上腕二頭筋の盛り上がり、胸筋の筋。全てが美術品のように美しい。
休憩になると大体いつも筋肉を眺めるのが日課なのだが、
休憩室に現れた急な訪問者によってそれは遮られる。
「ねぇ、アンナ。ちょっとお願いがあるのだけれど……」
仕事にまじめなオリビアが業務中にお願いとな?これまた珍しい客が来たもんだ。
申し訳なさそうに頬を赤らめるオリビアを、頭のてっぺんからつま先までじっくりと観察する。
「さては……あー、あぁ。 OKだ、無理すんなよ?」
「え?無理?」
「今日は月の日なんだろう?重いのか?」
「ち、違うって。」
「え?じゃあ何、面倒ごと??」
「そうでもないんだけど……ちょっとだけ休憩に出たくて……」
再休憩の打診、月の物で重かったら帰るもんな。
「いいけど、なんで?」
「れ、例の人が来て…その、食事に誘われちゃって……デザートとかお茶だけでも行きたいな……って。ごめんね、私事で‼」
普段凛としているオリビアがもじもじしているのもレアだ……、
とにかく
……萌える‼‼
例の人というのはアレだ、この前の盗賊襲撃事件の時に命がけでオリビアを守ってくれた王子様。
街の門を開城したときは扉の端で一瞬だったしよく見えなかったからな、
どんな奴だったか全然見れていない。
オリビアのハートを射止めるくらいだ、きっとなかなかのイケメンマッチョなのだろう。
「ハハーン。オリビアに貸しを作れるとは……チューくらいはもうしたの?」
「ア、アンナってば!」
「ハハ、まぁここはアンナお姉さまに任せな!」
「ありがとうアンナ!」
そんな嬉しそうな笑顔を見るとこちまで嬉しくなってくる。
お代はその笑顔だけで十分さ。みたいなことを言ってあげたいが、
オリビアに最初で最後に売れる恩かもしれないし、そうもいかない。
ルンルンでコートを羽織り、鏡で軽く髪をいじるオリビアが可愛い。
「あ~、貸し。何にしようかなぁ~……私もおなかすいてたのになぁ~!」
と意地悪だってしたくなってくる。
「もー、お手柔らかにね?」
普段見れないオリビアを堪能していると
「ねぇ、アンナ。変なとこない?大丈夫かな?」
と目の前でターンして見せる。
「あー、大丈夫大丈夫、お前はいつもキレイだよ」
少しうざった、しつこく感じてきた。
そんな浮かれているオリビアを見送り、その例の人を見るためにもオリビアの代わりとしてカウンターに向かう。
「さて。どんなイケメンマッチョなのやら……」
周りには聞こえない大きさの声で呟く。
オリビアがフワフワしながらあいさつを交わし、外に一緒に出て行った男はマッチョでもなんでもない、フツーの男だった。
あんなのでいいのか??全然筋肉ねーじゃん。
でも、
「恋っていいな。」
すごく幸せそうで、、楽しそうで。
受付嬢というのは出会いが少ないわけではないが、数多い人と接する為、自然と理想は高くなるし。
「あ、アンナさーん、お手紙でーす」配達員が手紙を一通カウンター越しに差し出してくる。
「あん?」
「え?」
配達員の驚きの表情にハッとする。
イカンイカン。
「わぁー、私にお手紙ですかぁー?どなたからでしょー?」
普段はおしとやかな令嬢、のイメージで通しているのだ。
オリビアの残していった納品書を見ながらソロバンを弾いていく、
が手紙の中身も気になり、
机の上に封筒を置いたまま、器用にペーパーナイフを使って片手で封を切る。
算出した金額を用紙に書き込み、荷車を確認してきた猿と共に確認する。
……まじかよ。
オリビアの例の人、納品数ちげーじゃねーか。
とはいっても果実などの移送の際に痛んだりする食品などは実納品数が減ることは日常茶飯事だが、この量は。
「減額対象ですねぇ。」
「キキャキャ。」
『お相手の情報をお知らせ致します、人間種、20代男性』
ついに来た。
掲示板に依頼を貼りだして9ヵ月、やっとだ。
これでうるさい両親を黙らせることができる。
明日は昼までの出勤なので仕事終わりに会って話をしよう。
しかし……どんな人だろうか。
脱ぎ散らかした服を気にせず踏みながらベッドの上に転がる。
仰向けになり手紙を抱き目を閉じる。
「カッコイイマッチョだったらいいなぁ。」
もしいい人だったら本当に付き合ったり、一緒に住んで……
「子供は3人くらいほしいなぁ。。」
妄想は止まらない、なんだかドキドキしてきた。
相手の事は何もわからないけど、もしかしたらちょっと、好き…かもしれない。
少なくとも実家から出る口実になる、私にとっては救世主だ
「そういえばねぇ。向かいのリグレちゃんの子供がもう歩けるようになったらしいのよ」
夕飯時パンをかじっていると、いつものやつが始まった。
ここ数年はほぼ毎日で二言目にはいい人はいないのか、結婚はしないのかと自分も気にはしていることをチクチクチクチク突いてくる。
「すごいな」
「そうなのよ、でも、やぁねぇ。うちの子はいつになったら結婚して孫の顔を見せてくれるのかしら」
いつもなら聞き流しながら夕食を急いで掻き込み部屋に逃げるように閉じこもるのだが、
それも今日でおしまいだ。
「あ、そのことだけど。私今付き合っている人と一緒に住むから来週から出てくから。」
しれっと。
言ってやった
母はスープ碗を手から落とし驚きのあまり放心。
父に至ってはパンを咀嚼している。
普段からあまり表情を表に出さないし、あまりしゃべらないから何考えてるかわからない。
母の驚きっぷりを見ると、
なんだろう。物凄い優越感に浸れた。
「ぁ……」
言葉を失う母にとどめの一言。
「元々実家にいるのも特定の相手が出来るまでって約束だったし、文句も言わせないから」
これで晴れて念願の一人暮らし。
「あ、あんた……変な薬でもやってるんじゃないでしょうね?」
「どういうことよ!!」
「だってこんな自堕落でめんどくさがりで家事も何もできないでしょ。そんな女を欲しがる男なんて……」
「やろうとおもったらできるしぃー?家事出来るしーぃ‼」
「……騙されてるんじゃないの?」
「なんなの!?一人娘の門出も祝えないの?そういう呪いにでもかかってるの!?
別に騙されてなんかないし!彼と私超ラブラブだし、ああああんなことやこーんなことだって!ヘーキでやってるんだから!!」
「このスープ、ウロの実入ってないわよねぇ?」
「それ、幻覚みえるヤツじゃない‼ もういい!明日にも彼の家に行くし!!」
結局今日も逃げるようにして部屋に閉じこもった。
リビングではまだ母がワーワー言っているようで、
反応が気になって扉に耳をつけ、集中する。
珍しく父が口を開くと母をなだめた
「大丈夫だ、母さん。クスリやウロのニオイはしない。……男のニオイもな!」
最悪。
え。キモ。キモ過ぎる。
確かに父は昔からニオイに敏感だったが、
娘のニオイ嗅ぐか!?フツー。
ぜってぇー明日中に家を出てやる。
決意はより一層固くなった。
翌日、問題は早々に起きた。
これから帰る準備を始めようというところ。
「ねぇ、アンナ。ご両親がきてるわよ。」
「へ??」
朝もなるべく顔を合わせないようにしていたからだろうか。
部屋には昨日の夜の内に預金通帳とよく着る服と主に肌着をトランクに詰めておいた。
会わずに一度帰宅してしまえばこちらのもんだ。
これはこれで好都合……
「なんでも、大事な話があるのだとかで、今大きなトランクを持って応接室にいるわ」
「は?トランク?」
まさか
「えぇ、取っ手にバンドーを巻いてる女性ものだと思うんだけど……
アレ、アンナの? もしかして仕事辞めるの?」
「いやいやいや、辞めないよ!」
「そう、よかったぁ。」
まじかよ。
勝手に部屋に入ったのかよあのクソ親共め……!!
でも今掴まったら絶対にダメだ。
どうにか私の救世主に会って話を進めねば……。
「ねぇ。オリビア。昨日の貸し、早速今日消化してもいいかしら」
「えぇ、任せて!何をしたらいいの?」
「両親を2時間……いや、3時間かな。もしかしたら5時間足止めできないかな」
「5時間!? んー、やってみるけど5時間は厳しいな。アンナはどうするの?」
「ちょっとね、私も……ちょっと親に恋路を……ね」
そう言うとオリビアは力強く頷いてくれた。
とても心強い。
そしたら私のやる事はまず、救世主に会い、話をまとめる事。
裏口から昨日決めておいた待ち合わせ場所に向かった。
待っていて!私の救世主もとい王子様!!
アンナさんはアルパカの獣人です。
結構めんどくさがりで耳年増、内弁慶で人見知り、好奇心は旺盛ですが臆病な性格の持ち主。
マッチョが好きで恋愛強者っぽく振舞ってますが父親以外の男性と触れ合ったことはありません。
クルクルくせっ毛も頑張って見える範囲はサラサラにしています。
個人的に作品内でも5本の指に入るお気に入りのキャラです。
読者様の中でもいいなと思ってくれる方がいたら嬉しいな。




