第二十話 梨はいずこに
凄く久しぶりの更新になってしまいました……
3ヶ月ぶりの更新です。
アリシアの方もそろそろ1年。。。
もう少し気を付けます!
まだ日が上って間もないというのに
辺りはすっかり明るく、
目に受ける光の量につい目を細めてしまう。
木箱を動かしいつもの配置へ運び、
露店の店頭に果物や野菜を並べていく。
予め書いておいた値札を立てていると、
「ちょっと失礼するよ。」
割りとちんちくりんな坊主が声をかけてきた。
間の抜けた顔のそいつは
背中には盾と剣を携え、何故か右手に果物を持っていた。
「なんだい、兄ちゃん。まだ少し待ってくれよ、もう少しで準備終わるからよ。」
「忙しいところすまないが、僕も急いでいるんだ。少し話を聞いてはくれないだろうか」
見る限り冒険者というのには間違いなさそうだが……
額に滲む汗を拭い、バンダナを巻き直す。
確かに8割方は準備も出来ているし、余裕もある。……いいだろう。
「どうしたんだい?何か入り用かい?」
「そうなんだ、この果実を探しているんだが、売ってはいないか。」
そういう坊主の手に握られているのは
少し黄色味がかっている果実。
店頭に並べている物に似たようなものはない。
「それは何て言う果実なんだい?」
「これは……えーと、ル……ルク、ルクリエ?」
そういえば、今日明日あたりで新種の高級果実が商人連合に持ち込まれるとか。
なんでもオロラントよりもずっと北の山岳地帯で採れるとても希少なものだとか……。
まさか……な。
目の前の果実をまじまじと見つめるが、
やはり見たことはないな。
「よし!兄ちゃん。こうしよう。その果物を売ってくれ。」
とりあえず、珍しそうな果実は持っておきたい。
もしかしたらこの冒険者だけが持っている物凄く貴重な物かもしれない。
仮に新しく商人連合に届く品だったとしてもまだ連絡も来ていない以上、
早めに現物を持っておけば一番最初に貴族に売り込めるチャンスになる。
「いや、これは一旦預かっているだけだから……」
「わかってるとも、200Gだ。」
「金額じゃなくて……」
お?オロオロしている。
コイツはきっとお人好しが過ぎるタイプだな?
「困ったなー、今手持ちが300Gしかない。」
「いや、だから売れないんですって」
「任しといてくれ!500Gはすぐ用立てられる。」
「ごひゃ……!?」
「でもすぐそれを売ってくれるってんなら、600……いや800G出そうじゃないか。」
「800……」
売った後の事を考え始めたな?
もう一押しだ、
「兄ちゃん、今ならリンゴも3つ、いや5つつけるよ!持ってけどロボー!」
「リンゴ……ま、まぁ?それなら……」
勝った……!!
とりあえず、今日はこのあと開店もしていないが一旦お店を閉めて早速御貴族様に売り込みに行こうか。
リンゴも代金も渡し終えて見送ると、そのまま4つ隣の店にまた聞きに行っている。
フフフ、悪いが先手を取らせて貰うぞ。
最初に手にいれる事に意味があるんだ。
もし気に入ってもらえれば1000や2000の話じゃない。
5,6万は固いだろう。
これがその新しく来るという果実であって欲しいものだ。
「ごめんくださーい」
おっと、お客さんだ。
大きなハットにマント。
よくいる魔法使いの女の子だ。
しかしなんで皆似たような格好するのだろうな。
「魔法使いのじょーちゃん、すまんね。ちょっと用事ができてお店は今日は休むん……あれ?」
目線は魔法使いの右手に釘付けになる。
なんだか、とても既視感のある……
それもつい最近。
「あ。やっぱ店にあんじゃん」
そういう彼女も私の手に握られている果実に焦点があっている。
「どういうことだい?」
「これね、納品するために集めなきゃいけないんだよね。25個くらいもらえないかな」
「いや、これ一つしかないよ」
「なんで??お店なのに??」
「おじょーちゃん、それどこから持ってきたんだい?」
しまった!?
早計すぎたか?
もし既に出回っているモノであれば800Gとリンゴ5個は完全な失敗だ。
「王都で護送の依頼受けてね。食べちゃったから補填に」
ビンゴ!!
やはりこれはまだ出回っていない!
貴族に売り込むチャンスだ!
俺の目は間違っていなかった。
「そうか、それは大変だね。」
「売ってはいないんだ?」
「多分明日かそれくらいに店頭に並ぶかもしれないね」
「それは、ちょっと遅くって間に合わないなぁ」
「残念。またおいでね」
「はーい、ごめんなさいね」
そういう魔法使いの女の子は手をヒラヒラと振ると自然な流れで果実を齧る。
……いいのか?あれ。
まぁ、他人の心配をしている場合じゃない。
今俺の手の中には金のなる実があるのだ。
それをちゃんと植えなければ、意味がない。
木箱を敷地の内側に戻し、木の板のバリケードをはめ、裏の施錠をしている最中だった。
「あのー……」
まぁた、お客か。
ちょっと忙しいときに限ってこうだよ。
店のバリケード側、つまりはオープン中の時の入り口。
そちらに回り、
「ごめんよ、今日はお休みするんだ。果物なら……」
そう4件となりの店に誘導しようとした、その時だった。
4件隣の店の前には先程の魔法使いのおじょーちゃんが、
そして今目の前にいる大柄なこの青年の右手にはこれまた同じ果実が握られていた。
「なぁ……あそこにいるおじょーちゃんとお仲間かい?」
「そうですけど、どうしたんですか?」
いや、かぶってるんだけど……
なんて言葉が思い浮かぶが言葉には出せなかった。
まさかと思うが……
「もしかしてだけど剣と盾を背負ったこれくらいの剣士さんも仲間だったりするのかな?」
「すごい!どうしてわかったんですか??」
やっぱりか。
「いや、どうして……って」
なんとも間の抜けたというか、
一人は果実を探しているのに結局売ってるし、
目の前の図体ばかりが大きくて目をキラキラと輝かせるノッポといい、
さっきのおじょーちゃんやアホの剣士、
コイツらを雇ってる雇い主は災難だな……。
まぁ今はコイツらなぞ気にしなくてもいい。
どこがいいかな。
ルムール伯爵当たりなんかは馴染みの料理人もいるし年頃の娘もいる……。
料理人に果物を切らせ、一旦御賞味頂き大量購入の契約を先だって獲る。
伯爵は新しい物好きだし、奥様は美容に狂っておられる……
むふふふふ……うまくいくビジョンしか見えない。。。
店を閉めて今日の売上を投げ捨てるというのにルムール伯爵邸へ向かう足取りは物凄く軽やかだった。
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「こんな果実はないか?」
マオは店主に向かってル レクチェをぐいぐい頬に押し付ける。
「ちょ、近いってぇ」
少し気の弱そうな困り顔の店主はマオから少し距離を取る。
改めて果実を見てもらうが
「ちょっと……みたことないな?この辺のものじゃない、これは新種の果実かなんかかい?」
「これか?これは、甘くてうまいのじゃ。」
目の前でかじって見せる。
「えぇー……まぁウチにも置いてないけど、もしかして明日くらいに連合に入るってなってた果実かなぁ」
「そうか!それならいつ入る? んー!んまー」
美味しそうに頬に手を添えながら果実を頬張っていくマオ。
「君は輸送の依頼の所の子?多分食べちゃダメだよ、ソレ」
「明日葉ならまだしも!なんで主に言われなきゃいけないんじゃ!」
「えっと、そのアシタバ?さんが受けてる仕事がソレをこの街まで運ぶお仕事で、減っちゃうとそのアシタバさんが怒られちゃうんだ」
「だから減った分を買い足しに来たのじゃ!」
「でも、今日連合に入ったとして多分早いお店で明日店に並べて、明後日くらいにやっと普通に買えるんじゃないかな……?」
「それではでは遅いのじゃ!!」
マオはプリプリと怒りをあらわにするが、
店主にもどうしようもない。
店を後にしたマオの内心は焦っていた。
「あしたばが起きるまであと少ししかないのに……」
ヘタの部分だけ残る右手のル レクチェを見つめ、考えが甘かった事を痛感した。
オロラントに無事到着した明日葉一行。
毎回休憩を短縮され、長距離運転を余儀なくされた明日葉は疲労困憊。
結界石も足りないし、色々問題が山積みです




