番外編 第一話 名前がない
これはどのタイミングで出してもいい番外話で、
少し考えたのですが、もう書いたし。
考えるのめんどくさい。
という感覚で番外編ぶっこみます。
一応結構いろんなキャラと関わりのあるお話です。
『……………………せ。』
顔が見えない、
肩から上はもやがかかっているようでおよその輪郭くらいしかわからない。
何かをしゃべっている。
「なに?」
全然聞き取れなくって、手を広げるその男に近づいていく。
『こ…は、ゆう……のせ……おま……し…。』
今度は少し聞き取れた。
でも全然わからない。
目の前まで行くと、その男はしゃがみその広げた両腕で私を抱きしめてくる。
初対面だが不思議と嫌ではない、
しかし、心臓は強く強く高鳴る。
なんだかこれはダメな、いけないことをしているような、そんな気がした。
私はちょっと戸惑いもがきながらも
その男は私を抱きしめる力を強めていき耳元で囁く。
『だからな、勇者を殺せ。』
「ぶぁ!へんな夢見た!」
目が覚めるなり先程までみていた変な夢を思い出そうとする。
「んー……」
変な感じの夢だったのは覚えているのだけれど、
何の夢だったのか、
どんな夢だったのかすら思い出せない。
考え込みながら、うんうん唸っていると
急に髪の毛を引っ張られる。
「いたいいたい!」
見上げれば煤けた黄色の髪を牛がしゃぶっている。
「マリュー、ダメ!いたい!」
パシパシと牛の頬を叩くと牛はしゃぶるのを止めた。
髪はべとつくが、気になんかしてられない。
藁の山から立ち上がり、軽くピョンピョンとジャンプして身体の調子を確認する。
「うん、今日も大丈夫みたい。」
木の柵を潜り、木の桶を3つ程持ち
馬屋の出口に立つ。
チラッと皆の様子を確認し、
「ちょっとまっててね!水汲んでくるから」
そして川に向かって走り出す。
いつもの日課。
まず起きたら川まで行って水の桶3つ汲んで、顔を洗う。
流れる川に映る自分の姿はいつもと同じ。
朝、牛に頭をしゃぶられた際に跳ねたのだろうか
髪がボサボサに跳ね上がっている。
川の水を頭にちょいちょいとつけて水面に向けてニカッと笑顔を見せる。
前歯が一本ないが、幸せそうな笑顔に見えた。
両手に桶を持ち、頭の上にうまいこと桶をのせて歩く。
馬屋までえっちらおっちら歩き、
馬や牛の水受けに新しい水を入れる。
お昼には固くなったパンを頬張る。
それでも鳴るお腹には川の水をたらふく流し込む。
そのあと柵の中で牛を自由に散歩させつつ、
馬を4頭全員引っ張りながら敷地の端側で散歩をさせる。
皆の世話が終われば、
バスケットを持って屋敷に向かう。
厨房の裏口の戸を叩く。
すると、少ししてからふくよかなおじさんが戸を開ける。
「アムノン、終わったのかい?」
「はい、スコットさん。今日は晴れてたので少し多めにお馬さん達と歩きました。やっぱり歩ける時間が多いと皆喜ぶんです」
とても嬉しそうに報告すると、
「そうかい……それはそうと、近いうちに馬を遠出に使うから散歩の時間を延ばしておいてくれって。」
「はい、わかりました!」
スコットは笑顔のアムノンをじっと見つめ、一呼吸置いてから
「明日はちょっと寒いかもしれないけど水浴びをしてからおいで。」
といい、新しいバスケットを手渡した。
「……?わかりました!」
水浴びの意図はわからないが、
とりあえず散歩を長くして水浴びをしたらいいのか。
馬屋に戻り、藁の上でバスケットの中身を確認する。
丸いパンが3つ入っている。
その内の一つのパンの上にポツンと一粒、小さなクルミが乗っかっている。
それを見て息が止まる。
「っっっ……、やったーーー!!!」
あまりの嬉しさに飛び上がり跳ね上がる。
久しぶりのクルミである。
味のない固いパンも、コレがあると大分違う。
クルミを口の中で噛まないように転がしているとほんのりと甘くなるのだ。
そんな小さな幸せにアムノンはご満悦だった。
次の日、
いつものように水を汲み、
牛を遊ばせ、馬を走らせてみたり、
「うぅ、冷たい……」
言われた通りに水浴びをした。
夏も終わりがけ、日が短くなっているこの頃の水浴びはまさに苦行だった。
そして夕食兼明日の昼食を貰うべく、厨房の裏口の戸を叩く。
「……」
スコットは周りをキョロキョロと確認すると無言のまま、アムノンを手招きした。
厨房の裏口から中に入れ。と言っているようだ
「でも……」
そうなのだ、アムノンは正式な使用人でもなければ屋敷に入ることも、触れる事すら禁じられている。
「いいから、さっさと入んな。」
水浴びをしろと言ったのはこういうことだったのか。
ずっとぐずっている訳にもいかず、
スコットに手招かれるままおずおずと裏口から入る。
内心、領主に向かってごめんなさいを連呼する。
扉を閉めると、スコットはアムノンの手のひらを掴み、もみはじめた。
「あの……」
「いつもあんなとこで寝泊まりしながら、身体は平気かい?疲れもとれないだろうに」
「いえ、仕事があって、ご飯がもらえるだけでも幸せですから。それに、皆可愛くて楽しいです。」
そうなのだ。
今も村外れでは仕事もなく、ただただ貧困に喘ぎ餓死するのを待つだけの子供が何人いることか。
1日3つもパンが貰える。
それだけでもあの日、死ぬ運命だった私には大きすぎる施しだ。
その運命を変えてくれたのは他でもない、スコットだ。
スコットは白く綺麗な薄いお皿に湯気の立つ白いスープをいれる。
「アムノン、おたべ」
そしてそれを渡してくるのだ。
このお皿は領主様が使われる物だ。
おそれ多い、
それにどうやって食べればいいのか。
首をよこに降り拒絶すると、
スコットは木のコップに移し代えた。
「おのみ」
そしてそれをそのままアムノンに手渡す。
温かそうなそれはとてもいい臭いがした。
「……いいのですか?」
「あぁ、ないしょだよ。」
恐る恐る、口をつけ、そのスープを飲む。
初めて喉を通った温かいそれは大きな衝撃と共に理性を破壊し、一気に飲み干した。
なんだか悪いことをしてしまった罪悪感と、硬いクルミパンを遥かに越える美味しさに涙が溢れた。
「ごめんなさい、ごめ、ごめんなさい……」
どうしていいのか、
こんなに上等なものを頂いてしまって、
自分はそれにどうやって返せばいいのか。
なにもわからなくなり、涙がボロボロとおちる。
「大丈夫かい?、美味しくなかったかい?」
慌てるスコットにも申し訳ない。
「いえ、こんなに美味しいのは初めてです……」
そう言うとスコットは安心したように、
「もっと食べていいからね」
とアムノンの肩を揉んだ。
それからアムノンはスープを何杯かおかわりした後、スコットから衝撃の事実を告げられた。
「領主様は近いうちにこの村を離れる、そのまま戻ってくることはないと思う。この事は一部の人間しか知らないんだ。」
「……」
「それに私はコックとして着いていくことになっている。だからアムノン。君もどうだ?
この世界にはさっきのスープなんかよりももっと美味しい物がある。既に馬車に食材は荷物として積んでるから今日はこんなものしか食べさせてやれないが、もし着いてきてくれるならもっと美味しいものを食べさせてやれる。」
「……私は、何も持っていません、だからよくしてもらっても何も……何も、返せません。」
「いいんだ!私が勝手に君にもっと美味しいものを食べてもらいたいんだ!」
「……いいですよ」
「領主様にだって、私の助手で連れていきたいと言えばきっと許可してくださる!だから……!!」
「……」
「本当か?着いてきてくれるのか?」
ガクリと膝をおとすスコット。
「はい、たくさん美味しいもの食べさせてくださいね、スコットさん。」
そのままスコットは泣きながらアムノンを抱きしめる
「さん、はやめてくれ。……スコットでいい。ありがとう、ありがとう…………」
アムノンによくしても何もいいことなどないだろうに、なぜこんなにも必死になるのだろうか。
アムノンには不思議だった。
それからというものの、
領主様が自分の街を出るのには2日とかからなかった。
領主の移動にはおよそ30人程度が帯同し、
どこから来たのか、新しい馬が3頭。
先頭に馬に乗った護衛が2人、
その後ろに6人歩き、
それぞれ2頭の馬で領主の馬車と荷車を引き、
その周りに従者と執事が馬に乗る。
列の最後にアムノンとスコットはいた。
初めて歩く土地も、荒れ地も新鮮だった。
領民に移動を知られないために、
領地内は街道を避けて、人目につかない荒れ地や崖や、森の中を選んで進んでいった。
「アムノン、疲れていないかい?」
スコットは自分も息がきれているというのにアムノンを気にしている。
「疲れてない、って言ったら嘘になっちゃうけれど、楽しいです」
ずっと知らない道、知らない場所、知らない世界を感じる。
道中スコットが話してくれる他の街の話も、
全てが新鮮で、色鮮やかで。
滝のようにドッと押し寄せる情報量と共に
あっという間に時間も流れていった
この移動は元々3日間かけて行う予定のようで
昼と夜にはスコットを手伝い、食後の片付けを主に担当した。
「これはこっちに置いたらいいですか?」
「……」
何も言わずに、働くアムノンを眺めている。
「……スコット?」
「ぁ、あぁ!そうだ。そっちに頼む」
再度の呼掛けでやっと応じる。
「疲れてます?他にも何か手伝える事はありますか?」
「いや……大丈夫なんだが。」
黙々と残りの食材の確認をし始めるスコットは何かを考えているようだった。
「スコット、疲れていませんか?」
食事を済ませ、夜営中のスコットに話しかける。
「疲れては……いるけど、なんだか嬉しいんだ」
「なんでですか?」
「…………」
「?」
「……実はな、今の領主様に仕える前は王都にいて、家族がいた。」
「王都ですか?」
「そうだ、宿屋をやっていたんだ。」
「それで料理が……」
なるほど。
料理の腕と色々な国の話はそこから
「どうしてやめちゃったんですか?」
「ちょっとな、お金が厳しくなって……王都から逃げ出したんだ。それでトサモイまで来たんだが……」
「?」
どうも歯切れが悪い。
「実は家族がいたんだ。妻と娘が1人。
歳もアムノンより少し上で、まだ娘には先の見えない夜逃げは辛そうでな。王都の親戚に預けてきたんだ。」
「いくつですか?」
「今年で12になるはずだ、いつも泣いてばっかだったから心配で……。
だからかな、アムノンを見てると娘を思い出すんだ」
「……奥さんは?」
「妻は夜逃げの途中で亡くなったよ……」
「ごめんなさい。」
「いや!すまない!気にしないでくれ、俺の力不足なんだ。野盗に襲われてな、偶々近くを通った領主様に助けてもらったんだが、食料も金も持たずに出てきてしまったから衰弱してしまってな……」
なるほど、スコットのことが少しわかってきた気がする。
娘の面影をみてアムノンに優しくしているのだ。
娘の代わりとして。
そうだとしてもスコットには感謝してもしきれない。
スコット以外にアムノンに優しさを向けてくれる人なんていなかったから。
代わりでもいい、そう思えた。
そうこうしているうちに腕がほんの少し濡れたような感じがした。
「このタイミングで降ってくるか……」
次第に雨足は強まり、
皆、テントの中へと入っていった。
2日目
昨日の夜から降り続く雨は小粒ながらも地面をぬかるませるには十分だった。
行進はよていよりも遅れ、
昼食を取り、日も落ち始めていた頃くらいからだった。
頻繁に小さく短い地震が山の斜面を上るアムノン達の足を取った。
まだ日が出ているというのに月は既に青白く輝いており、明らかに異常だった。
「あれは……」
アムノンが青白い月を指差す、
それにスコットが答える。
「きっと何処かの国が勇者召喚の儀式をしているんだろうな」
「勇者召喚?」
「あぁ、異界からこの世界に勇者を呼び込む儀式さ。
何故かわからないが、儀式の間は月が呼応して青白く光るんだ。」
「そうなんだ……きれい。」
青白く輝く月は幻想的だった。
月を見上げ、なんとなく月に手を伸ばしてみた。
その時だった。
少し足元が揺れるような感覚を覚えた。
数秒後には隊列の先頭を走っていた護衛が笛を鳴らす。
あまりに急な笛の音に驚き、スコットを見上げる。
「地震に備えろー!!!」
笛を鳴らした護衛は大声で叫んだ。
スコットはすかさずアムノンを抱き抱え、崖の壁面にしゃがみこんだ。
アムノンには何が起きているのかわからなかった。
ただ、周りの大人達が慌てどよめく様に、
只事ではない、
それだけは確信していた。
最初に、異変が起きたのは壁。
細かい土くれがパラパラと落ちてくる。
次第に揺れは大きくなり、皆立っていられない程だった。
スコットに抱えられ、アムノンの視界には荷物や食料を積んだ荷車に、馬。
その前に領主様の馬車が見える。
執事が領主様の馬車馬をなだめている、その時だった。
目の前にあった荷車が大きな土砂とともに潰され木片をすごい勢いで色んな方向に飛ばし、掻き消えた。
「あ…………。」
何も言えなかった。
ほんの一瞬、危ない気がした。
その瞬間、荷車が消えたのだ。
そしてそこに突風が吹き荒れる。
スコットはアムノンを抱き抱える形でしゃがんでいるが、見ている方向が正反対だ。
スコットに大変な事になった。と伝えたいがスコットの右手がアムノンの後頭部を押さえ、後ろを向けない。
「スコット……荷車が……」
「……っ」
まだ揺れが続くというのにスコットは
一度立ち上がり、周囲を確認しアムノンを再び抱き抱えると、急に崖の斜面を降り始めた。
「え!え!」
急な展開に頭が追い付いてこない。
ただ、スコットに抱えられ
一瞬だけ見えたのはアムノンとスコットの後ろに列を為していた使用人の頭に木の板が突き刺さっており、
前方の荷車は土砂に代わり、
領主様の馬車の前方には緑の小鬼達が既に護衛の1人を喰い殺していた。
一瞬の出来事。
何が起きたのかもわからない。
「スコット!スコット!皆が!」
だんだん遠く離れていく領主様の馬車にスコットの背中を叩く。
「だめだ!多分皆死ぬ!近くの村に逃げなきゃ……」
雨でぬかるんだ斜面を滑るようにして下っていく。
林まで降り、ようやくスコットがアムノンを離してくれる。
「スコット、みんなが!」
「みんなの事は忘れろ!まず村に逃げる」
「でも!」
「だめだ!ここも土砂崩れが起きないとは言い切れない。領主様も魔物に襲われてたからもう無理だ!逃げるぞ。上から見たときこの方向に村があったから」
そう言ってアムノンの手を引く。
見ればスコットの足は所々ズボンが破れ、出血していた。
「足!怪我してるよ!」
アムノンは歩き出すスコットを止めようとするが
「手当てしてる暇はない。ここにいる方が危険だ。すぐここを離れなきゃ。」
聞く耳を持たない。
アムノンにも急に色んなことが起きすぎて頭が働かない。
林の中をしばらく歩いていると
火の明かりが見えた。
どうも焚き火をしているようで火の燃える音が聞こえる。
林を抜けた先にその村はあった。
やっと休める、
歩を緩めたその時だった。
火の燃える音は村の至るところからしている。
揺れる炎に、家が、人が、家畜が……村が燃えていた。
「なんてことだ……」
スコットは木の影に隠れ、様子を見る。
村の方からは人の悲鳴が、断末魔が聞こえてくる。
まさか村にまで魔物が来ていたなんて……
その中で村の外に走って出てくる者も。
しかし、すぐに数匹の小鬼に追い付かれ
髪を引っ張られ、引き倒され背中に棍棒で鈍い音と共に一撃。
必死に辺りを見回す村人は
スコットとアムノンに気づいたは途端、こちらに向かって叫んだ。
「おい!た、助けてくれー!!」
振り下ろされる棍棒に頭を割られ、動かなくなる。
「くそっ!あいつ……」
小鬼達もスコット達の存在に気づいたようで一斉にスコットの方へ走り出す。
吉備津を返し、
チラリとアムノンを見ると、スコットはアムノンを置いて
全速力で林の中に向かって走る。
「ああああああああああ!!」
スコットは大声をあげ、走る。
小鬼達は大声を出して走っているスコットしか見ていない。
醜悪で残酷な緑の小鬼を目の当たりにし、
衝撃とショックでアムノンは失禁し、足はがくがくと震え動けなくなっていた。
それをわかった上で囮になってくれたのだ。
しかし、少し走ったところで崖の方から追ってきていた小鬼に
挟み打ちで頭を棍棒で殴られ、スコットも動かなくなった。
アムノンはショックのあまり過呼吸になり、
なんとか草に紛れ這って移動するが、
草を掻き分ける音と臭いで見つかってしまう。
「あ……ぁあ!ぃ、いや……」
アムノンの絞りだした拒絶の言葉を無視する。
ゴギ
今まで聞いたことことのない音が身体中に響き渡る。
その瞬間、
左足に雷に撃たれたかのように激痛が走る。
「ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
左足の膝が出血し、内側で骨が砕けた。
激痛に、恐怖に、
泣き叫ぶアムノンを見て、
小鬼は楽しむように何度も何度もアムノンの左膝に棍棒を振り下ろした。
棍棒が何度か折れて、
元の半分未満の長さになると
既に泣き叫ぶ体力もなくなったアムノンの頭を掴み村の中へ引き摺られていった。
村の入り口には「ようこそ!モイタロへ」と書かれている。
「こ……ろして……。お、ね……がぃ…………。」
これ以上どういたぶられるのか、
考えたくもない。
周りにはアムノンと同じ様に足を砕かれ、ぐしゃぐしゃになった女の人が何人も虚ろな目で小鬼の慰み物になっている。
しかし、アムノンには何が起きているのかもわからない。
もう、終わってほしい。早く終わりたい。
それだけを考えていた。
ふと、視界の端に
頭の一部が欠損したスコットを見つけた。
スコットの腕を引きちぎり、貪る小鬼。
もう出尽くしたと思っていた涙がまた浮かぶ。
「スコットぉ……」
返事はない、ただの屍のようだ。
わかってる。
スコットの腕をうまそうに齧る小鬼に憎しみと共に1つ場違いな感情が芽生えた。
羨ましい。
思えばアムノンは空腹である。
どんなに気持ちの悪い景色を観ても、吐ける物は胃に残っていない。
小鬼に対する嫉妬と、そんな自分を嫌悪した。
もっと。
もっとスコットに頭を撫でて貰いたかった。
もっと知らない国や街の話を聞きたかった。
もっと
「スコットの作るご飯が、食べたかったよぅ……」
辛うじて動いた右手でスコットに手を伸ばす。
届くはずなんかないのはわかってる。
悪いことをなにもしていない、
あなたがこんなめにあうのは、私のせい?
だったら私がついてこなければ、
あなたは、スコットは死ななくてすんだのかな。
だとしたら、私はなんなんだ。
親にも見捨てられ、
よくしてくれたスコットを死に追いやり、
こんな自分、いなきゃよかった。
生まれてきた事が間違いだった。
「スコットぉ……ごめんなさい。」
視界の端に燃え盛る炎と、
小鬼が振り下ろすこん棒を最後に、
まっくろに沈んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『これは勇者のせいだ、お前は死んだ』
『この世界の異物を排除するんだ。』
『さぁ。勇者を殺せ。』
脳の中で響き渡り、
少しだけ何かスッキリしてきた気がする。
「我は……魔王。」
まだちがう。
魔王になるため、
「勇者を、殺す。」
うん、
間違いない。
でも知らない。
わからない、なにもかも。
知りたい、全部が。
でも、勇者はダメだ、いらない。
腹に手を当てる。
深く深く、低い音で腹の虫が鳴る。
「腹、すいたのぅ。」
noname
この村、モイタロは魔物に侵食された村としてお姫様の時もお話に出てきていましたね。
皮を鞣す役割の村ですー、
この村も割りと大事な舞台ですので今後どう繋がっていきますかねー。




