第69話 マニアックなロボットは好きですか? 嫌いじゃねぇーな。 ……同じく
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ジャミングを展開しつつ、ダイは眼帯野郎達が入っていった脇道へ忍び足で向かった。
レーダーを確認して、なるべく近過ぎないよう慎重に向かう。
脇道の前まで来ると、小型カメラロボットのゲッコーを使って様子を探る。眼帯野郎達はダイに気付く様子もなく、すたすたと先に向かっていた。
ゲッコーを駆使し、ダイも脇道に入って眼帯野郎達の後を追う。クリアフォームで近付ける距離にも限界があるからな、今はチャンスを待つのが賢明な判断だ。
「それにしてもあいつら、随分とマニアックなデザインの歩兵機ばかりだな」
ゲッコーを通して見る眼帯野郎一行は、ダイの言う通りどれもこれもがマニアックなデザインの歩兵機ばかりで、イングリッドとは似ても似つかぬ機体だった。
眼帯野郎も左目に眼帯をしてるようなデザインは中々独創的であったけど、他の奴らも相当なものだ。あれはパイロットの趣味で改造してるのか?
まず真っ先に目が行ったのはボクサーのような歩兵機だ。パッと見ボクサーにしか見えないそいつは、この中では一番目立つ歩兵機だ。
両手にはボクシンググローブ、頭にはヘッドギア、力強さとしなやかさを合わせ持つフォルムは、まんまボクサーそのものだった。
次は……マント?
いや、よく見ると装甲板だ。全身をマントのように装甲板で覆い尽くしる。しかも頭までフードを被ってるかのように装甲板で覆われていた。
全身がマントで覆われてるから腕や脚の形も分からないし、頭部の顔もここからではよく見えなかった。よし、取り敢えずマント野郎と呼んでおこう。
あとは……で、デケェー! なんだ、ありゃ!?
前屈みで歩いてたから分からなかったけど、1機だけ飛び抜けてデカい歩兵機がいやがった。
と言っても全長は10メートルそこそこか、8.5メートルのイングリッド改より少し大きい程度だが。しかしそのデカブツは横幅が異様にデカかった。
てか何なんだ、あれは? ゴリラか? キングコ◯グなのか? 呼び名はシンプルにデカブツで定着させるけど、あれとは戦いたくねぇーなぁ。
それと眼帯野郎を諌めている、おそらくはリーダー格っぽい奴。ずんぐり体型のリーゼントヘアーっぽい頭だった。
柔道家みたいな体格の良さだけど、何故にリーゼント? 流石にそりゃ無いぞ、マニアックと言うより悪趣味だぞ。
そして最後に……カブトムシ?
なんかカブトムシみたいな一本角を頭に付けた奴がいた。額から伸びる太い一本角の先端が二股に分かれた形状は、一目でカブトムシの角だと分かる形だった。
ボクサーよりもがっしりして、リーゼントよりもしなやかな、最も理想的な体格の歩兵機だ。ぶっちゃけこの6機の中では一番格好良い歩兵機だぞ。
そんな個性豊かな歩兵機の様々を見せられると、イングリッド改が相当地味に見えてくるな。まぁ量産機だから仕方ないんだけど……。
しかし機体はマニアックだが、6機とも素人じゃないな。歩き方や列の組み方に隙が無い、不用意に仕掛けたら返討ちにされるのが目に見えてるぞ。
さて、どう仕掛けたものかな? クリアフォームで奇襲を仕掛けたとしても、あの様子じゃ1機も撃破できる気がしねぇ。
手持ちで最大の火力はロケットランチャーだ。クリアフォームである程度近付き、回避できない距離から撃ったとして、運が良ければ1、2機は撃破できるだろうが。
その後でサブマシンガンを駆使して乱戦に持ち込む……いや、駄目だろ。その時点で詰んどるわ。
やっぱ今の手持ちで眼帯野郎達6機を相手にするのは無理があるか。或いは奴らが二手に分かれでもすれば各個撃破も不可能じゃないんだが、そう都合よくはいかないだろうし。
「……ん? あれって?」
気が付けば、眼帯野郎一行は行き止まりに差し掛かった。
そこには他に道らしい道は無かったが、この洞窟では一際大きい機材がポツンとあった。何の為の機材かは分かんねぇーけど、眼帯野郎一行の目的は多分あれだ。
暫くして、その機材の前で眼帯野郎とマント野郎、それにデカブツとリーゼントが屈んでしまい、それからピタリと動かなくなった。
……あれ? もしかして、機能停止してる? まさか、歩兵機から降りたのか!?
距離があるから詳しくは分からないけど、どうやらそうみたいだ。あの4機だけが、あそこで歩兵機から降りてしまったらしい。レーダーからも4機の熱源が消えたし、間違いなさそうだ。
「でも歩兵機から降りて、一体どうするつもりなんだ?」
ここには無人機の蜘蛛や蜂がうじゃうじゃいると言うのに、歩兵機から降りたら殺してくれって言っているようなもんだぞ。
まぁ、かく言うダイもついさっき歩兵機から降りていたけど。
それから4機が動かなくなって、残り2機の内カブトムシの方はどこかへ歩き出した。
道は他に無いのにどこへ行くつもりなのか……って、隠し扉があったぁー!?
カブトムシの奴、近くの岩をどけて隠し扉を出しやがった! てか、この洞窟ってそんな隠し扉が普通にあんのかよ!
ここはどこぞのダンジョンか何かなのか!?
「マジかぁ……」
そしてカブトムシは、残り1機のボクサーと何かを話した後、隠し扉を通って姿を消した。
つまり、今残っているのはボクサーたった1機だけと言う事になった訳だ。
これは、チャンス到来きたぁー!!
「これって、チャンスだよな?」
ああ、チャンスだ。どう見ても眼帯野郎の他3機は機能停止してるし、カブトムシはどこかへ行ってしまいやがった。
相手があのボクサーだけなら勝機は十分にあるぞ。曲がりなりにもダイは、眼帯野郎に勝っているんだからな。
見た目通りならボクサーは近接格闘戦主体だ。間合いを取ってサブマシンガンで銃撃戦に徹する、セオリーに乗っ取ればこれでいける。
それとも、いきなりロケットランチャーで爆撃するか。例え躱されても、機能停止してる眼帯野郎達を先に破壊できるし、損は無い。
或いはクリアフォームで接近して不意打ちをしかけるか。……それだな。今は慎重策に出るのが最優先だ、荒事は避けておくに限る。
「よし、クリアフォーム起動だ。このまま気付かれないようにゆっくり近付いて―――」
『―――もう気付いてるぜ』
気付いてるんだってよ、ダイ……なぬ?
「え? ああ、そう……って、ええっ!?」
気付いてやがった、だと!? てか、早速バレちまったのかよ!
ボクサーはダイに向き直った。透明化してる筈なのに、完全にダイの位置を見てやがる。
『クリアフォーム、デイヴィーの機能だな。どこで手に入れたのかは知らねぇが、俺っちには無意味だぜ。波動兵器を使ってれば直ぐに分かるからな』
デイヴィー……モヒカン頭無しの事か? 確かにクリアフォームは波動兵器だが、奴らもダイと一緒で感覚的に波動兵器が分かるのか?
いや、多分それを感知する機能があるんだな。眼帯野郎が言っていた、波動兵器は自分達が生み出したものだと。
ならばそれを感知する機能があったとしても不思議では無いな。迂闊だったぜ。
それにしても流暢な日本語だ。さっきまで他所の国の言葉で話してたのに、どうしてそんなスラスラと切り替えられるのだろうな。
『でも姿は見えないからな、そろそろ見せてくれねぇと潰しちゃうぜっ』
「っ!?」
なっ、跳躍した!?
まだかなりの距離があった筈なのに、ボクサーは1度の跳躍でダイの至近距離にまで接近しやがった。
そしてすかさずパンチ、跳躍の勢いを乗せた鋭い右フックが迫る。
「うぎゃぁー!」
ダイは即座に反応し、飛び退いて回避した。
その結果クリアフォームが強制解除され、イングリッド改が姿を現わす。
『おっ、イングリッドか。それにいい反応するじゃんか。少しは期待するぜ』
完全に舐めてやがるな。だがコイツは間違いなく強い。
今の跳躍に鋭い右フックだけ見ても十分それは伝わったし、それに奴はまだまだ余力を残してやがる。これは相当ヤバい相手だぞ。
『っと、その前に3つ聞いていいか? まず1つ目に、お前は最上ダイか?』
ダイの事を知っている? まぁ、そりゃそうか。眼帯野郎の仲間だからな。
「そ、そうだけど……」
『へぇ〜、じゃあそれがプロトタイプηか。これはラッキーだ、探す手間が省けたぜ』
コイツら、ダイの事を探していたのか? いや、ダイじゃなくこのイングリッド改を、か?
どういう事だ? この機体はただの量産機の筈……いや、元々は波動砲が付いていたカスタム機な訳だからな。ただの量産機では無いか。
波動砲はもう失くしちまったが、波動砲搭載型の歩兵機としてデータは残っている。奴らはそれを含めて探していたと言う事か?
『それじゃ、もう1つ質問だ。お仲間はどこにいるんだい?』
お仲間? ……ああ、俺の事か。てか、俺がどこにいるのか知らないのか、コイツらは?
「……知らない。俺も、探してる……」
『ふぅ〜ん、一緒に行動している訳じゃ無いんだな。俺っちとしてはちょっと意外だぜ。それじゃあ、最後の質問だ』
今更だが、どうしてダイは見ず知らずのボクサーから質問攻めにあっているんだろうな。
そしてダイも素直に答えんじゃねぇーよ。相手は敵だぞ。
『お前、俺っちの事を殺そうとしてたな。そりゃあつまり、自分も殺されようと文句は無いと、そういう事でいいよな?』
「…………」
『何だ? まさか自分が殺さる覚悟も無しに他人の命を奪おうとか、そんな身勝手な道理が通用するとでも思っていたのかい?』
……いや、違う。ダイが押し黙ったのは、自分も殺されようと文句は無いとか、それこそ今更過ぎるだろって呆れているんだ。
ダイはプラントに来てから今に至るまで、ずっと殺される思いで戦って来たんだ。今更、文句どうこうの話じゃねぇーんだよ。
「殺される覚悟は、今更だ……」
だから、ダイが決める覚悟は殺される覚悟じゃない。寧ろ逆だ。
「俺は……お前を殺す覚悟を決める!」
殺される覚悟じゃない、殺す覚悟だ。
未だ人殺しに抵抗を持つダイだが、実戦になればそんな事も言ってられない。
殺される覚悟も、殺す覚悟も、両方決めろ。これは命懸けの実戦だ。
『んん~……ちっとよく分からないんだけど、覚悟があるんなら遠慮はしないぜ。俺っちは、とにかく戦いたがりなんだからな』
ボクサーはファイティングポーズを取ってステップを踏む。
歩兵機の身でありながらその質量を感じさせない軽やかなステップに、一切の隙も伺え無い完璧な構えはとても洗練されていた。間違いない、コイツ強いぞ。
『ビギナーズラックだ、先手は譲ってやるよ。かかって来な』
……さっき先制攻撃を仕掛けた奴が、舌の根の乾かぬ内から何をほざきやがる。
だが先手を譲ると言うのなら、それは有り難く頂くのが意地もプライドもへったくれも無いダイの流儀だ。だから遠慮なくやらせてもらう。
「くらえぇー!」
ダイは最も威力のあるロケットランチャーを手に取り、素早く発砲した。
眼前で待ち構えているボクサーに―――と見せかけて、その後ろで機能停止状態にある眼帯野郎他3機に向けて、直撃コースでな。
のっけからド汚い手段を躊躇なく行う。これもまた、ダイの流儀だ。
眼帯野郎
ボクサー
マント野郎
デカブツ
リーゼント
カブトムシ
改めて考えると、コイツら全員ダイ1人で倒さなきゃならないのか?
……いや、無理じゃね?




