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第68話 色々と逆境に立たされた件について……毎度の事だろう

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 ズドォーン!!


「うぎゃぁー!」


 奇跡的にもドリル戦車が掘った穴に逃げ道を見い出したダイだが、当然無人機どもは追って来た。なのでロケットランチャーで入口を破壊しておいたんだ。


 そしたら落盤を起こして入口は見事に塞がったんだがな、落盤は穴全体に起こり出していて、ダイ自身も生き埋めの危機に陥っていた。……まぁ考えたら分かる事だけど。


 ダイもテンパっていたから、そこまで考えが回らなかったんだろうな。でもこれで死んだらマジで笑えねぇーぞ。


 穴は歩兵機が通れる大きさだが立っては無理だ。四つん這いにならないと通れないサイズだから俊足ダッシュができないんで、落盤が起きた時は正直もう駄目かと思ったけどな。


 しかしダイはまさかの四足歩行で俊足ダッシュを可能とし、チーターもビックリなスピードで落盤する穴をくぐり抜けたんだ。


 またまた間一髪だぜ。毎度毎度冷や冷やさせられるな、俺の相棒は。


「いたたたた……死ぬかと思った。もう慣れたけど……」


 慣れるな。死ぬような思い慣れる奴があるか。


 毎回毎回九死に一生を得られると思うなよ。こんな事続けていたら本当にくたばるぞ。


 まぁ言ってもしょうがないけど。次から次へと無人機が現れるんじゃ、どうにもならないからな。決死の覚悟で戦うしか他にない訳だし。


 改めて考えると、よく生きてたな、ダイ。そりゃ頭の髪も真っ白になるわ。


 で、そんな死ぬ思いをしてやってきたのは、またも洞窟みたいなフロアだった。


 所々にライトが設置してあるし、何かしらの機材もある。それに―――やはりここも人がいた痕跡があった。


 人が何人かいて、ここで作業してる最中に忽然と姿を消した。そんな不気味な様相は下の階層と変わらないままだ。


 しかし下の階層や、さっきまで無人機とバトっていたフロアと決定的に違うのは、このフロアには地下水の水溜りがあった事だ。


「……地底湖?」


 いや、地底湖と呼べる程のものじゃないが、しかし地底池となら呼べるくらいの大きさはあった。


 ダイは周囲を警戒して他に敵がいないか用心しながら、その地底池に近付いてみる。


 中々大きな池だが、水は澄んでいるな。もしかしたら飲めるかも?


 そう考えたダイは一旦イングリッド改から降りて池の前まで来た。


 しゃがんて手で水を掬い、一切躊躇わずにゴクッと一口飲む。何の変哲も無い、無味無臭の水だ。


「よし、これなら大丈夫そうだ」


 ダイは輸液などの空容器に池の水を入れる。この洞窟は水道がどこに通っているかも分からないんでな。万一に備えて蓄えておくに限る。


「にしても身体が気持ち悪い……。せっかくだし水浴びもしようかな」


 それがいい。制服は汗だくだし、おまけに小便も垂れ流しちまったからな。服も身体も綺麗にしておけ。


 しかし、この階層は不便だな。


 水道が見当たらないからトイレも手洗い場も何も無い。おまけに日用器具の類いも無いからこの階層で長居はできないぞ。


 フロアも岩肌剥き出しの洞窟だし、ライトも下の階層に比べたら随分と少なく、見通しも悪い。更に言うなら各フロアにあったガラス地図もこの階層にはなさそうだ。こりゃ迷う羽目になるだろうな。


 そして何よりも問題なのは、この階層にはイングリッドが無い。下の階層にはゴロゴロあったからパーツ交換に困らなかったが、しかしここにはそれが無いんだ。


 そりゃ探せば少しくらい見つかるかもしれないが、しかし機体が破損したら暫くは直せないと考えた方がいい。こりゃ今まで以上に気を引き締めないといけないぜ。


 改型になっても互換性はあるから、いざという時パーツ交換で何とかなるようにしていたのに。それがここに来てパーツが無いと言う事態に陥るとはな。


 それに、ここには四本脚もいない。故にライフルも手榴弾も補充できないと来た。今となってはナイフも失くしちまったし。


 特に手榴弾が無いのは痛い。ダイの得意武器だし、音速手榴弾たる大技も使えないとなると、この先の戦闘は相当苦労する羽目になるぞ。


 今の手持ち武器は蜘蛛(くも)の使ってたサブマシンガン2丁と使い捨てのロケットランチャー1つだけだ。


 サブマシンガンは予備弾倉を太腿の収納ラックに1つずつ納めてあるけど、それでも予備弾倉が1つずつと言うのは心許ない。


 火力だけ見ても随分見劣りしてしまった。出来る事なら一度下の階層に戻って色々補充したいところだが、下へ戻るにはあのエレベーターを使わにゃならん。


 しかしそのエレベーターは無人機に包囲された。またあそこに戻ったら地獄を見るだけだし、自分から進んで針の(むしろ)に入る馬鹿もいるまい。


「それ以前に、どう考えてもあの数は異常だよなぁ」


 確かにな、あの数はねぇーよ。真夏の蚊だってあんな大量発生しないからな。


 ありゃ十中八九生産場があるんだ。それもかなり大規模な生産場がな。そうでなかったらあの蜘蛛と(はち)の数に説明がつかん。


 そうなれば目標は決まった。まずは無人機どもの元である生産場を断つ、それで数が増え無くなれば徐々に狩っていけばいい。


「よし、こんなものかな」


 脱いだ服も水洗いしたダイは、取り敢えず全裸は良くないと思ったらしくトランクスだけ水気を切って履いておいた。


 制服はそうはいかないから乾かしておく必要がある。その間にイングリッド改の整備を始めた。


 3日間も駆使し続けてきたからな、この辺で簡単にでも整備しておかないと後々に響く事になるだろう。


 本当なら念入りに整備しておきたいところだが、この場所も安全とは言えないからな。いつ無人機が現れるかも分からないんだ。


 今はイングリッド改の金属探知センサーをセットしている。無人機が現れたならセンサーがアラームを鳴らせて知らせてくれる仕組みだ。


 それが鳴っていない今のうちに整備を済ませておかないとな。幸い結構駆使した割にイングリッド改のフレームは殆ど疲弊してなかった。これなら整備も直ぐに済みそうだ。


 ダイの扱い方も上達したんだろうな。機体の負荷を最小限に留まるように戦っていた成果が表れてるぜ。


「ふぅ〜、機体はこれでいいとして、服はどうしようかな?」


 ダイは保存食を食べて空腹を少し満たしながら、未だ濡れたままの制服に目をやった。


 流石にこのままじゃ着れない。かと言ってパンツ一丁で歩兵機を操縦するのもどうかと思うしな。そうなると残された手段はあれしかない。


「あれ、着てみるか」


 あれと言うのは、ダイが拠点から持って来たもう1着の衣類だ。ただし普通の衣類じゃない。


 見た目は黒いバイク用のレーシングスーツを思わせる繋ぎ服で、伸縮性があり身体にフィットするから細かなサイズ調整がいらない便利な服だった。


 これが歩兵機専用のパイロットスーツだ。地下4階を探索してた時に見つけたもので、一応何かに必要かと思って持って来たんだ。


 着慣れた服じゃないから避けていたんだが、今の状況を考えると背に腹はかえられないからな。


 なのでダイはパイロットスーツを着る事にした。


 スーツは背筋にかけてチャックが付いているが、1人でも開け閉めできるように工夫が施されている。それに手足もグローブとブーツが一体となった仕様だ。


 グローブは手の平側が薄手の生地で出来ているらしく、手を握ってもごわごわとした感じが無く動かし易い。足のブーツも地下足袋みたいで素足でいるように歩き易かった。


 物凄く着心地の良いスーツだ、これなら最初から着ておけば良かったとダイは今になって後悔する。


 最後に頭を保護するヘッドギアを着けて完了。スーツを見事に着こなしたダイは、立派な歩兵機のパイロットに見えた。馬子にも衣装とはこの事か。


「まぁ……こんなものかな。さて、イングリッドに戻って―――」


 ―――ビビビビビビビビビビビビビビビ!!


「……そろそろ鳴る頃だと思った」


 ……俺もそう思った。


 鳴り響くアラームに、ダイは即座にイングリッド改に乗り込んでレーダーを確認した。


 レーダーには、もちろん反応がある。敵機だ、それも複数いる。


「クリアフォーム!」


 ダイは取り敢えずクリアフォームでイングリッド改の姿を消して様子見に出る。


 クリアフォームは姿を透明化するだけで無くレーダーにも映らなくなる。持続時間は5分だが、その間に何処かへ隠れておけばいい。


 レーダーに映らなくするだけなら、イングリッドに元々備わっているジャミングを使えば済むからな。色々気を引き締めてなきゃならん現状では、慎重過ぎるくらいが丁度いい。


 ダイは透明化した後、クリアフォームを維持したまま身を隠せる所に移動し、レーダーで敵の様子を確認する。


 反応は6つ、しかしこの大きさは蜘蛛や蜂じゃ無い。この反応の大きさはイングリッド改と同程度のものだ。


 この大きさで6機編成となると、四本脚か? だとしたら寧ろラッキーだ。ライフルや手榴弾が補充できるぜ。


 距離は結構あるから、スコープを展開して望遠する。薄暗い洞窟だから良くは見えないが、しかしシルエットで分かった。残念ながら、これは四本脚じゃないぞ。


 明らかに人型だ、普通に二足歩行で歩いてやがる。


 機影が近付いてきた。明るい所に出て次第にその姿が鮮明になる。……ん?


「え? こ、コイツは……」


 その6機の中に、見覚えのある奴がいた。


 それもよく知ってる奴で、その歩兵機の姿は絶対に忘れない思い入れと言うか、トラウマがある。そしてそいつは―――死んだ筈の奴だった。


「が、眼帯野郎!?」


 そこにいたのは、紛れもなく眼帯野郎だ。あの隠しフロアで死んだ筈の奴が、どう言う訳だがそこにいた。


 いや、機体は同じと言うだけで中に乗っているのが同一人物とは限らない。あのヤクザ口調とは違う紳士的な別人が乗っているのかもしれないし―――


『――――――!!』


 ―――まぁ、何を言ってるのかは分からなかったが、何かを怒鳴り散らしているのはよ〜く分かった。


「……眼帯野郎だ」


 まだかなり距離があるのに鮮明に聞こえる眼帯野郎の怒鳴り声に、ダイはどういう訳か一瞬で確信を得られた。


 間違いない、あれは自分の知ってる眼帯野郎だと。最初に歩兵機戦でバトった相手に違いないと、嫌になるくらい確信が持てた。……なんか地味に悲しいけど。


 どうやは眼帯野郎は生きていたらしいな。あの隠しフロアから機体だけ棄てて何処かから脱出したのだろう。あの隠しフロアは徹底的に探したつもりだったが、甘かったみたいだ。


『――――――! ――――――!!』


 かなり言い争っている様子だが、他所の国の言語で喋ってるから内容は全く分からない。日本語しか分からないダイには理解しようも無い話だな。


 そもそも他の5機は声量が普通だからか、全然聞こえないし。ここからだと眼帯野郎1人が怒鳴り喚いているようにしか見えなかった。


 改めて見ると他の5機も眼帯野郎と同様に有人機のようで、(いず)れも独特のデザインな歩兵機ばかりだった。


 そいつらはダイに近付いて来るも、途中の脇道に入って今度は逆に遠ざかる。


 このままでいれば何事も無くやり過ごせる……なんて都合のいい事は無いよな。そう思った矢先で、追い詰められて袋叩きに合うのがいつものパターンだ。


「堂々と生きるって決めたんだ。ここで逃げるとか無いだろ」


 怪獣戦から堂々と生きる事を決心したダイだが、それもついさっき蜘蛛と蜂の大群を前にとんずらと言う醜態を晒してしまった。


 まぁあれはどう考えても戦略的撤退だったが、ダイとしてはあの撤退で自身の決心が揺らぎそうになったのが不安なんだ。


 だから、ここでは逃げない。敢えて逃げずに戦う事を選ぶ。背後からの不意打ちでな。


 勘違いしてもらっちゃ困るが、ダイの堂々とは単に逃げない事にあり、逃げずに戦うならやり方は問わない。それがダイの堂々たる流儀だ。


 いやだってさぁ、相手はあの眼帯野郎だぜ。まともにやり合って勝てるかどうかも怪しいのに、それが6機とか勝ち目ねぇーじゃん。


 だったら不意打ちなりなんなりするっきゃねぇーだろ。実戦では手段なんざ選んでられねぇーんだよ。


「よし、やるぞ」


 ダイはクリアフォームを解除してジャミングを展開しつつ、眼帯野郎達の後を尾行する。


 見つかったら間違いなくやられる。だったらやられる前にやるだけだ。相手は複数だが、そこは何とかするさ。どの道戦闘は避けられそうに無いんだからな。


 徹夜3日目でコンディションは良くないが、そこは気合いでカバーすりゃいい。怪獣を倒した今のダイにその程度の障害は問題じゃない。


 武装もサブマシンガン2丁とロケットランチャー1発分しか無いけど、どう言う事はない。ダイの技量なら乗り切れる筈だ。多分……。


 ……いや、やっぱ無理じゃね、この逆境は?

しかし手榴弾が無くなったと言うのは本当に痛いな。今まで培ってきた音速手榴弾なる大技は何だったんだよって話になるぞ。


てか、この先手榴弾も無しで本当に大丈夫か? 寧ろこれ詰んでね?

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