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第63話 運命の決戦、ダイvs怪獣……そしてイングリッドはパワーアップした。ちゃんと説明しろ!

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 ―――ズドォーン!


 ダイの手榴弾が怪獣の破損した左脚の太腿に命中、中々の威力で爆発した。


 怪獣も口と尻尾の2門で波動砲を疑似連射して応戦するが、しかし今となっては躱すのも無理ゲーではなくなった。


 怪獣の頭は上半分が吹っ飛んで、口の波動砲は狙いが定まらない。実質尻尾の波動砲だけを避けてるようなもんだ。


 それでも口の波動砲は稀にダイの近くで着弾するもんだから油断はできねぇけど。当たったら一発即死は免れないし、今となっては波動シールドも無くなっちまったから防ぐ手段も無いからな。


 ならば先に口の波動砲から破壊すればいいんじゃねって話だが、全高40mもある怪獣に8mそこそこのイングリッドでは当て辛いんよ。


 それで脚を先に破壊しようと言う作戦に出た。


 上手く転倒してくれりゃ願ったり叶ったりだし。例え倒れなくても動きを封じれば跳躍して投げる隙も生まれてくる。


 倒すとは決めたが、早まった真似はしない。地道に崩していかないと怪獣はまだ何を隠しているか分からねぇーからな。


「い……いいいいいい加減に倒れろぉー!」


 しかし、立て続けに手榴弾を投げるダイの方にも焦りが見えてきた。


 無理もない。機体は新品同然で戦えるようになったとは言え、ダイ自身のコンディションは疲労困憊のままだ。


 身代わりイングリッドを遠隔操作でずっと戦わせてはいたものの、ゲッコーバイクと違って身代わりイングリッドは遠隔でも手動操作だ。


 つまり縦穴で隠れている間もずっと機体を操縦して戦っていた訳だから、疲労は蓄積したままって事だ。


 加えて怪獣の攻撃も気を配り続けないとならない。波動砲は実質尻尾だけ躱せばいいが、それにしても集中力を切らしたら一発即死になるのは目に見えてるから、回避必須も変わらないままだ。


 破損した左脚に何個か手榴弾を叩き込んでみたが、グレネードジャベリン程の威力が無い手榴弾で破壊するには、まだまだ時間がかかりそうだぜ。


 まさにイタチごっこの体力勝負だ。ダイの体力が尽きるか、怪獣の脚が尽きるか、どっちに転んでも不思議ではない。


 だが怪獣には手数がある。口の波動砲が役に立たなくなったところで奴にはまだ、それを補って余りある武器があるんだ。


 現にその1つが、たった今使われたし。


「っ!? き、来た!」


 怪獣の足元から、全体攻撃兵器の波動ウェーブが放たれた。


 これは躱せない。床を伝って広がる波動の波は、高さが怪獣の首元まである。イングリッドの脚力だけでは飛び越える事はできない―――


「―――とでも思ったかぁぁぁぁぁ!!」


 しかしダイは、イングリッドの脚力だけで波動ウェーブを飛び越えてしまいやがった。SWEMブースターが無くなった今、推力の助力も無いのにだ。


 同時にこれを待っていた。波動ウェーブを跳び越えて怪獣の頭に近付くこの瞬間をな。


 これだけ近付けたなら波動砲にも手榴弾が当たるだろ。予想外の跳躍回避に怪獣も反応が遅れてる、仕掛けるなら今だ。


 だったら、ここでもう1つ隠し技を使ってくれる。


「秘技、音速手榴弾!」


 ダイは全力投球で手榴弾を投げる。すると手榴弾は、衝撃波を放つ程の超スピードで投げ飛ばされた。


 これまでの超速球手榴弾よりも遥かにスピードアップしたそれは、ガチで銃弾ものの投射速度だった。


 ―――ズドォーン!


 直撃だ。怪獣の頭にギリギリ残っていた波動砲は、今度こそ破壊された。


「うっしゃぁー!」


 遂に怪獣の主力武装(メインウェッポン)を破壊したぜ。


 驚いただろ、超速球手榴弾を越えたダイの新秘技、音速手榴弾だぞ。


 超速球は時速500km、ほぼ銃弾に近い速さだがしかし、音速は時速1000km越え。厳密には亜音速だが銃弾に近いではくガチで銃弾の速さだ。


 故に単純な運動エネルギーだけでも十分な威力があるし、爆発の威力も大幅に底上げされる。まさに簡易的なロケットランチャーだ。


 怪獣の剥き出しになった波動砲を破壊するには、十分過ぎる威力だぜ。


 では何故そんな音速手榴弾なる投球が投げられたのか? それに波動ウェーブを跳び越えた跳躍力も。


 この投球力と跳躍力は、悠に人間の技量を逸脱している。いくらダイが成長したと言っても、これは異常だ。どうしてそんな事が可能となったと思う?


 教えてやろう。今回に限ってはダイが成長したのでは無く、イングリッドがパワーアップしたからだ!


 このダイが搭乗してるイングリッドはな! 見た目こそただの量産型イングリッドだが、中身はSWEMブースター搭載型にも匹敵する性能があるんだよ。


 SWEMブースター搭載型から全パーツを移植し直した際に、そのまんまただのイングリッドに戻す訳ねぇーだろ。


 クリアフォームを搭載すると同時に、他にも色々試して実用性のあるものを搭載したのさ。鬱蒼(うっそう)とある無人機の中からな。


 それでダイが抜擢(ばってき)したのは3つだ。


 やたら出没した四本脚の強靭なマッチョ腕の肩。


 プラント内をぴょんぴょん飛び跳ねた一本脚の脚。


 頑丈で軽量な出っ腹の外装も両腕の籠手に使わせてもらった。


 ここの無人機は機体の出力だけじゃない、機体各所のパーツもイングリッドの物よりずっと高性能なものばかりでガチッガチに組み上げられていたんだ。


 そんな無人機を今まで相手にしていたと思うと、思い返すだけで死にそうになったけどな。


 だが、それを使わない手は無いだろ。イングリッドと互換性のあるパーツの中から選び抜いて、ありがたく移植させてもらった。


 それが出来る程にまで、ダイの整備技術も向上していたのさ! ビックリしたか!? 俺もビックリしたわ!!


 そして完成した。波動ウェーブを飛び越える脚に、超速球の倍の速さで投げられる豪腕の肩。


 アサルトライフルを物ともしない外装の籠手に、透明化するクリアフォーム。それらを搭載して完成したのが、ダイの新生歩兵機だ。


 その名もイングリッド改。名前に拘らないのがダイの流儀だぜ。


 そしてイングリッド改の性能は目覚ましいもんだ。やっとのやっとでやっとの事、怪獣の波動砲を破壊するに至ったんだからな。


 散々苦しめられてきた、あの空恐ろしい波動砲を遂に破壊できたんだ!


「もう終わりだ、怪獣! 波動砲が無くなったお前なんか恐くない―――って、まだあったぁぁぁぁぁぁ!?」


 忘れてはいけない、怪獣はまだ尻尾にも波動砲がある。てか、今はこっちの方が厄介だ。


 口の波動砲程の威力は無いが、狙いは正確だし当たったら一発即死も間違い無い。次はこっちをどうにかしないとな。


「もう一度、脚狙いだ!」


 流石に尻尾は波動装甲で守られてるからな、音速手榴弾と言えども歯が立たない。ならば歯が立つ左脚の太腿から先に潰すまでだ。


「発煙弾!」


 ここで発煙弾を使い、煙を撒き散らす。怪獣も焦って直ぐに尻尾の波動砲で吹き飛ばしたが、しかしその時にはもうイングリッド改の姿は無かった。


 クリアフォームで透明化したんだ。怪獣は見失った様子だな、波動砲を撃たないのがその証拠だ。


 だが、怪獣も頭がいい。見えなくなったダイに波動砲は当たらないと判断するや否や、今度は波動ウェーブを放ってきた。


 全体攻撃の波動ウェーブなら姿が見えなかろうと関係無い。躱すには射程圏外まで離れるか、跳び越えるしかないんだからな。


 そして跳び越えれば、怪獣の思う壺だ。跳躍すれば透明化(クリアフォーム)も解除されるし、空中では回避できない。波動砲で狙い撃つには絶好の機会となる。


 そしてダイは怪獣の狙い通りに跳躍して、波動ウェーブを跳び越えた。同時に姿を晒したダイに、怪獣は狙いを定めてくる。


「んな事はお見通しなんだよ、ゴラァ!」


 しかしダイもそれは予想していた。だから跳び越えた瞬間に怪獣の尻尾に向けて音速手榴弾を放った。


 ―――ズドォーン!


 先に直撃したのは音速手榴弾の方だ。波動装甲だからダメージは無いが、衝撃で波動砲の砲撃を逸らす事はできた。


「もう1発だ!」


 ダイは着地と同時にもう1発投擲。今度は怪獣の破損した左脚に直撃させた。


 ―――ズドォーン!


 今まで以上に盛大な爆破で怪獣の左脚から部品の数々が大量に吹き飛んだ。


 これは相当なダメージだ。まだ完全に破壊し切れていないが、怪獣はその巨体で立っているのがやっとの様子。もう旋回も出来そうにない。


 このまま立て続けに投げたいところだが、怪獣も波動砲で応戦してくる。取り敢えず今は回避だ。


 イングリッド改の脚力ならSWEMブースターの30%出力相当をエネルギー消費無しで走れる。尻尾の波動砲を躱すのも楽だぜ。


 しかし、その途端に事件は起きた。怪獣の波動砲が突然止まったんだ。


「―――えっ?」


 何故止まったのか、それを考えた瞬間にダイはある結論にたどり着く。


 そもそも怪獣は身代わりイングリッドを消滅させる為に波動光線を使った。それから波動ウェーブも2回使ったし、波動砲も何発となく撃っている。


 それだけの波動兵器を使えばどうなるか、SWEMブースター搭載型のイングリッドで戦っていたダイには嫌と言う程分かる事だ。


 そしてそれを裏付けるように、怪獣は左腕のチェーンガンを発砲して来た。


「まさか……発煙弾!」


 ダイは最後の発煙弾を使って煙をまき散らし、その隙にクリアフォームで姿を消す。今度は炙り出される心配は無い。


 何せ怪獣は波動砲も波動ウェーブも使えないんだからな。つまり―――エネルギー切れだ。


 怪獣はエネルギー切れを起こした。ただ怪獣の場合は回復速度も尋常じゃないが、エネルギー切れの今なら透明化したダイを見つけるのは不可能だ。


 そして波動装甲も機能していない。ならば音速手榴弾で何処を当ててもダメージになる。


 故にダイは、尻尾の関節部に手榴弾を立て続けに5発も投擲した。左腕では超速球程度しか出せないが、それでも透明化していれば十分だ。


 5発の手榴弾は盛大に爆破し、怪獣の長い尻尾をちぎり落としてやった。


「やっっっっっだぞー!! 遂に怪獣の波動砲を全破壊したぁー!」


 投擲の際に透明化(クリアフォーム)は解除されたが、それで尻尾を破壊できたのは大きい。


 尻尾は波動砲や波動装甲無しでもそれ自体が打撃武器として脅威だ。それを潰してしまえば怪獣に打てる手立ては殆ど残されていない。


 しかも、ダイがいるのは怪獣の背後位置だ。これではチェーンガンも当てられないだろ。


「っ!?」


 しかしここで怪獣は背ビレを開いた。波動光線を使う為の背ビレを。


 波動砲も無しにどうするつもりなのかと思ったら、その開いた背ビレから途轍もない熱波が襲ってきた。


「うぎゃあー! な、何だこれ!? ヤバ、ヤバ、ヤバァー!!」


 何か色々警報が鳴り出した。このまま熱波を受けるのはマズいと思って、ダイは怪獣の横側に退避した。左はチェーンガンが来るから右側にな。


 怪獣の右腕は既に関節を破損させたから、ダランと垂れ下がっている。故に右腕でチェーンガンは飛んでこないし、左腕は死角だから撃てない。


 と思ったら、怪獣は胴体だけこっちに向いて左腕のチェーンガンを撃って来やがった。まぁ腰が回るのは当然か、イングリッドもそれくらい回るし。


「ちぃ!」


 ダイは熱波から離れるようにチェーンガンを躱していく。その最中に音速手榴弾で怪獣の左腕も破壊しようとした。


 だが、それもチェーンガンの弾幕に迎撃される。流石に直線コースだからな、常に連射してるチェーンガンなら音速手榴弾と言えども迎撃させるか。


「だったらコイツだ!」


 ダイは疾走しながら床に散らばってる武器を1つ手に取った。それは大型の重火器、125mm滑腔砲だ。


 怪獣の意表をついて立ち止まり、素早く狙いを定める。狙うはチェーンガンを撃つ怪獣の左腕。


「くらえぇー!!」


 ―――ズドォォォォォン!


 放たれた滑腔砲の砲弾はチェーンガンの弾幕を押し退けて怪獣の左腕に直撃し、肘から先を吹っ飛ばした。大した威力だぜ、滑腔砲は。


 銃座がなければ外れたの悲劇になるところだが、四本脚の肩を移植した今なら肩が外れる事も無く撃てる。わざわざジョイント機構から改良した甲斐があったってもんだぜ。


「まだ来るか!?」


 その次はミサイルだった。右脚の太腿からミサイルポッドがせり出し、連装されたミサイルが容赦なく放たれる。


 しかしこれも回避。重火器の滑腔砲を持ったままでも大多数のミサイルを、ダイは身軽に回避していった。一本脚の脚力を秘めた脚だからこそ可能となった事だ。


 ダイが培って来た陸上選手顔負けの脚力、それに一本脚の脚力を加えたダッシュはもう今までの猛ダッシュとは違う。


 敢えて呼び名を付けるなら俊才の脚力を持ってしたダッシュ、俊足(しゅんそく)ダッシュとでも名付けるか。


 そしてこの俊足ダッシュの利点は走りながら回避しつつも、反撃できる事だ。


「おぉらぁぁぁぁぁぁ!!」


 ダイは俊足ダッシュの最中に滑腔砲を撃ち、怪獣の胸元に命中させた。外装は凹んだが貫通はしない。


 しかし怯みはした。その隙にもう1発、今度はミサイルポッドに向けて撃った。


 ―――ドカァアアアアアン!!


 ポッドが破壊され、ミサイルが連鎖的に爆発していく。怪獣の右脚は左脚と同じくらいに損傷した。


 更にまたもう1発、右脚に撃って直撃させる。それが決め手となって右脚は本体から崩れ落ちた。


 左脚の方も損壊が激しい。怪獣は巨体を支え切れなくなって、遂に膝を崩して床に座り込んだんだ。


 あとは本体を破壊するのみ。ダイは弾切れになった滑腔砲を捨てて音速手榴弾を投げる。このままゴリ押しで破壊するつもりだ。


 しかし直撃した怪獣にダメージは無かった。直撃した瞬間にダイは感じ取ってしまったんだ、怪獣の波動装甲が復活した事を。


「くそっ、もう回復したのか!?」


 流石に早い。それに怪獣もまだ反撃してきた。


 左右鎖骨の部位からレーザーを撃って来やがった。CIWSとは違う、攻撃用のレーザー砲だぞ。


「うがぁー!」


 俊足ダッシュで回避する。あのレーザー砲も破壊したいところだが、レーザー砲は波動装甲の奥底に内装されている。ピンポイントで破壊するのは難しい。


 なら残りの手榴弾で怪獣の破損をちまちま破壊していくか? しかしそれだと体力的に限界を迎えつつあるダイには厳しいぞ。


「ええい、まどろっこしいのは止めだ止めだ! 堂々だ、堂々と決着(ケリ)をつけてやる!」


 またもやけくそ気味になっちまったか。だが、これでいいのかもしれない。


 ダイはやけくそになってこそ能力を発揮できる。それにもう、ダイはあの頃のダイじゃ無いんだ。


「終わらせてやるっ! ここで怪獣を倒して、それであの時の自分と決別するんだ!」


 あの時、それは2度目に怪獣と遭遇して、波動光線を目の当たりにした時だ。


 あの時ダイは恐くてうずくまるしかなかった。だがそれこそが、ダイの“強さ”を踏み(にじ)られた姿でもあったんだ。


 ダイはそれが許せなかった。悔しさに何度も何度も自分を追い詰めていた。


 だからダイが自分の“強さ”を取り戻す為にも、そしてあの時の自分と決別する為にも、怪獣は倒さなくてはならない。今、ここでだ!


()めるんだ! 俺は止めにして、堂々と生きるんだ!! だから……勝負だ、怪獣っ!」


 決意と覚悟を決めて、ダイは正面から怪獣に突進した。


 レーザー砲を躱し、俊足ダッシュで一気に怪獣へ接近する。そうすれば、怪獣はあれを使ってる筈だ。


 両胸に内装された対近接兵器、クレイモア地雷を。


 怪獣の胸がパカッと両開きに開く。クレイモア地雷が来る。これは躱せるか? いや、躱す必要はない。何故ならダイには秘密兵器がある。


 最後の最後まで取っておいた、ダイの秘密兵器その5。それを使う時が遂に来た。


 さぁ、受けてみろ、怪獣! これが最上(もがみ)ダイ、俺の相棒の秘密兵器(ちから)だぁ!!


「波動砲!!」

怪獣観察日記その8


やっと口の波動砲を破壊しました。


それから左脚を破壊しました。


そして尻尾も関節を壊してちぎり落としました。


しかし背ビレから熱波が来たので逃げるついでに左腕と右脚も破壊しました。


それでやっと怪獣が座り込んだと思ったら、鎖骨からレーザー砲を撃って来ました。


なので、波動砲を使う事にしました。


お終い。


『……波動砲があるのか!?』

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