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第62話 運命の決戦、ダイvs怪獣……そして主人公は復活した。何故に!?

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 怪獣の波動光線が放たれて、後に残ったのは凄まじく抉られた床や壁の惨憺(さんたん)たる惨状だった。


 まるで隕石でも落ちて来たのじゃないかと疑いたくなるその悲惨さは、この世の終わりを垣間見たようでもあった。


 それが波動光線だ。世界を滅ぼし得るその破壊力は、核兵器にも匹敵する脅威がある。


 この惨憺たる惨状が、その現実離れした事実を物語っているのだからな。


 そしてその惨状に、ダイのイングリッドがいた―――筈だった。跡形も無く吹き飛んでしまったが、ダイのイングリッドは確かにここにいたんだ。


 そのイングリッドの背中に付いていたマントだけが、そこにひらりと落ちていたから。


 ダイのイングリッドは間違いなく波動光線を受けて焼き払われた。無謀にも機能しなくなった波動シールドを掲げてガードしようとしてな。


 そして跡形も無く消し飛んだんだ。その瞬間は、怪獣も目にしていた筈だ。


 ダイのイングリッドが、跡形も無く消し飛ぶその瞬間を。


 だからだろう。怪獣はダイを倒した、今度こそ確実に仕留めたと、そう確信していたから油断したんだ。


 油断して、口の中にグレネードジャベリンが投げ込まれた事にも気付かなかった。口の中に投げ込まれて、爆発する直前までな。


 ―――ズドォォォォォン!!


 けたたましい爆発音が鳴り響き、怪獣の頭は爆発にのまれた。


 黒い爆煙が立ち込め、怪獣の顔は煙に包まれていく。


 突如として投げ込まれたグレネードジャベリンを、怪獣は自身の急所と言ってもいい口腔内部に受けてしまったんだ。


「―――この感じ、波動装甲はまだ機能しているのか? どうやら波動光線を使っても必ずエネルギー切れになる訳じゃないんだな」


 爆煙にまみれる怪獣の傍で、何処からとも無くダイの声が聞こえる。


 客観的に見ると死んだダイが化けて出てきたようにも見えるかもしれないけどな、しかしそうではない。


 何故ならダイの声が聞こえる場所で、突然イングリッドが姿を現したからだ。ダイが乗っているイングリッドが、五体満足でな。


「だが、さしもの怪獣も口の中で爆発されたら一溜まりも無いだろ。それも、たった今死んだ筈の俺にやられるとは、夢にも思わなかったか?」


 そうだ、確かにダイは死んだ筈だ。波動光線を受けて、跡形も無く消し飛んだ筈なんだ。


 なら何故ダイはここにいるのか? それどころか失った筈の左腕や両脚も元通りとなった、五体満足の状態で?


「残念だったな、怪獣。今お前が倒したのは俺の秘密兵器第4弾、身代わりイングリッドだ!」


 身代わりイングリッド。簡単に説明するとそれは、遠隔操作で身代わりにしていたイングリッドだ。


 そう、遠隔操作だ。怪獣が波動光線で消し飛ばしたのは、ダイが遠隔操作していた無人のイングリッドだったのさ。


 ゲッコーバイクの時も説明したが、遠隔操作は追加で2機までなら同時操作が可能だ。追加で2機、即ち小型カメラロボットのゲッコーを含めて3機だ。


 しかし怪獣戦でゲッコーが役に立つかと言えば、立つ筈が無い。だからゲッコーを遠隔操作枠から除外(オミット)して、別の遠隔操作できる機体を設定した。


 それがイングリッドだ。プラント内にあったイングリッドの1機を身代わりとして遠隔操作する。それが秘密兵器として用意したダイの作戦だった。


 ではいつから身代わりとすり替わっていたかと言うと、最初からだ。


 今までずっと戦っていたSWEMブースター搭載型イングリッドは、遠隔操作していた無人の歩兵機だったのさ。わざわざ身代わりにする為にSWEMブースターの全パーツを移植し直したんだからな。


 背中のマントもその為の物だ。プラント内のイングリッドはコックピットが無いし背中がごっそり空洞になっている。それを隠す為にマントで背中を隠していたんだ。ただの飾りじゃなかったんだぜ。


 現にダイの搭乗機はSWEMブースターを搭載していない、元の量産型イングリッドに戻っているからな。


 そんな事しなくてもただの量産型イングリッドを身代わりにしとけばいいんじゃないのかと思うだろうが、しかしダイはこのイングリッドを元に戻さなければならない理由があったんだ。


 本当にわざわざ、手間をかけてSWEMブースターのパーツを全て外して、身代わりに付け直してまでな。そこまでするだけの理由が、確かにあったのさ。


 故に止むを得ず、今まで世話になってきたSWEMブースター搭載型イングリッドを捨て駒にさせてもらった。


 さらばだSWEMイングリッド、お前の事は忘れないぞ。交換品(代わり)は幾らでも……無いぞ、コイツは!?


 ……まぁそれでも成果はあった。SWEMイングリッドを生け贄にしてやっとの事、怪獣にグレネードジャベリンを叩き込む隙を作る事ができたしな。


 グレネードジャベリンは搭乗機の方に(あらかじ)め1本持たせておいたんだ。それで投擲する隙を、ずっと隠れて伺っていた訳よ。


 地下8階に降り立った、あの縦穴に隠れてな。


 忘れてるかもしれないけど、ダイはこの地下3階から縦穴を降りて地下8階の拠点まで降りてきたんだぜ。そっから地獄を見たけどな……。


 その縦穴は地下8階で色々やらかして塞いじまったけど、それもコツコツ掘り返して何とか開通させた。


 それからずっと縦穴に隠れて機会を伺っていたのさ。ダイの得意技、不意打ちを仕掛ける機会をな。


 身代わりを(おとり)に、縦穴に隠れて不意打ちを仕掛ける。清々しいくらいにド汚ねぇ戦略だが、チートな怪獣にはそれも許される!


 これで許されないとか言うなら裁判沙汰にしてくれるわ。


 そして結果は重畳(ちょうじょう)だ。砲口を冷やす為か、怪獣は口を半開きにして蒸気をあげていたからな。その隙を突いて、グレネードジャベリンを口の中に投げ入れてやった。


 それで盛大にドカーンだ。怪獣の主武装(メインウェッポン)たる口の波動砲を破壊し、()いては凶悪過ぎる波動光線もこれで使えなくしてやったぜ。


「ざまぁ見ろ、怪獣! 波動砲が無くなったお前なんか、もう恐くはな―――いいいいいっ!?」


 使えない、と思ってたら使って来やがった!?


 爆煙にまみれた頭部から、あの強烈な波動砲が飛んで来やがった!?


「うぎゃぁー!」


 直ぐに飛び退いて回避したが、しかし何故波動砲を撃てた? グレネードジャベリンは確かに口の中へ入った筈なのに。


 ……まさか、グレネードジャベリンをくらっても無傷だと言うのか!?


 いやいやいやいやいや、それは無い! 絶対に無い!! それが有りだったらチートを通り越して怪奇現象だ、ゴラァ!!!


「う、噓だ。こんな……うっ!」


 波動砲で爆煙が吹き飛ばされ、露わになった怪獣の頭を見て、ダイは思わず言葉を詰まらせた。


 怪獣は無傷なんかじゃなかった、ちゃんとダメージがあったんだ。と言うか、上顎から頭の上半分が丸々無くなっていて、か~なり不気味な感じになっていた。


 何と言うか、これじゃあゾンビだ。怪獣ゾンビになってやがるよ。


 辛うじて波動砲だけが無事だった様子を見ると、グレネードジャベリンの爆発と同時に波動砲を撃ったんだろう。それで爆発の衝撃波を波動弾で押し退けようとした。


 かなり強引な手段だった故に波動砲だけは守られたが、頭の上半分を失ってしまった訳か。


 怪獣め、ダイも相当だがお前も相当しぶといじゃねぇーか。波動砲を破壊できなったのは滅茶苦茶痛いぞ。


 どうする、ダイ?


「…………」


 ダイは縦穴を見た。あそこに逃げ込めば一先ず安心は出来るし、手元には発煙弾もあるから逃げ込むのは容易だ。


 手持ちのグレネードジャベリンはあの1本限り。しかし拠点にストックが何本かあるから一度縦穴を通って拠点に戻り、態勢を立て直すのも1つの手段だろう。


「……理屈ではそうするのが正解だって、頭で分かってるんだけど。でも理屈じゃないところで、それはダメだって気がするなぁ」


 ぶっちゃけ言うと、ダイの心はこの時既に決まっていた。戦略的撤退では無く、無謀的特攻に覚悟を決めていたんだ。


 かつてダイはここで怪獣の波動光線を目の当たりにして、心に深いトラウマを植え付けられた事がある。


 しかしそれと同時に、踏み(にじ)られたんだ。ダイがそれまで唯一守ってきた大事な“強さ”を、怪獣に呆気なく踏み躙られてしまった。


 ダイの心には、今もその時に負わされた大きな傷痕を胸の内に残している。


 その傷痕の痛みが、ダイの魂を奮い立たせていたんだ。逃げるな、ここで奴と戦え、と。


「やっぱ無理だな。ここで逃げたら、あの時の屈辱を受け入れる事になる」


 屈辱に(へりくだ)って悔しさを抱えたまま一生を生きて行かなきゃならないってか。しかもダイにとっては唯一守ってきた“強”さだろ。


 それを諦めて謙るとか、冗談じゃねぇーな。俺だったらいっそ死んだ方がマシだ。


「そんなのもう御免だ。色々妥協して生きてきた俺だけど、それを受け入れるのだけは絶対に御免だ!」


 今のダイは変わりつつある。いや、変わろうとしているんだ。それまでの妥協主義でダメダメだった自分から、新しい自分へと。


 その眼には闘志を燃やしている。もはや今のダイは別人と言っていいかもしれない。まるで何年も修羅場をくぐり抜けて来たかのような、そんな猛者の眼をしていたんだからな。


「俺は止める、止めるって決めたんだ! うじうじするのはもう止めにして堂々と生きるって、そう決めたんだ!!」


 ダイはイングリッドの肩に何かを掛けた。まるで(たすき)掛けにした帯のようにも見えるそれには、幾つもの手榴弾が固定されている。


 それは弾帯ベルトならぬ、手榴弾帯ベルトだ。怪獣戦に備えて搭乗機の方に用意しておいた、ダイのお手製さ。


「発煙弾っ!!」


 ダイは腰のポッドから発煙弾を手に取り、怪獣に向かって投げた。ポッドに装備しているのは発煙弾だ、攻撃手榴弾は手榴弾帯ベルトで十分だからな。


 発煙弾は煙を撒き散らし、階層の視界を覆っていく。しかしそれも怪獣は尻尾の波動砲を撃って一瞬に吹き飛ばしやがった。


 ところが、煙が撒き散らされてから吹き飛ばされる僅かの間に、ダイのイングリッドは姿を消していた。


 おそらく怪獣は見失った事だろう。波動砲を撃たない(さま)がその証拠だ。


 そして姿を消したダイのイングリッドだが、今度は忽然と姿を現した。それも怪獣の至近距離で。


「くらえ!」


 ダイは手榴弾を怪獣の頭目掛けて投擲、剥き出しの波動砲を今度こそ破壊してやろうと思ったが、手榴弾は怪獣の下顎に当たり波動砲には達しなかった。


 下顎は波動装甲に覆われてるからダメージも無い。やはり下からだと怪獣の波動砲は狙い難いようだ。


 しかし怪獣も驚いただろうな、こうもあっさりと接近を許すとは。ダイがいきなり姿を消したり現したり、まるで幽霊のように神出鬼没と化しているんだからな。


 それにさっきも、グレネードジャベリンを口の中に叩き込んだ時もイングリッドは忽然と姿を現した。何故だか分かるか?


 そうさ、イングリッドは透明化していたんだ。


 モヒカン頭無しの透明化する機能クリアフォーム、それをこのイングリッドは搭載しているんだよ。


 これがSWEMブースター搭載型イングリッドを捨て駒にせざるを得なかった理由だ。


 ジャマーブラストを外すだけではクリアフォームは使えない、容量(キャパ)オーバーだったんだ。クリアフォームを搭載するには、SWEMブースターの機能も含めて丸々取り外すしか無かったんでな。


 ダイの秘密兵器第4弾、身代わりイングリッドで不意打ちを仕掛けるには、なるべく接近して尚且つ気付かれないようにする必要があった。


 故にクリアフォームは必要不可欠。これが怪獣戦で絶対的な切り札になると予想したダイは、苦渋の決断でSWEMイングリッドを捨て駒とした。


 残念ながら怪獣の波動砲を破壊するには至らなかったが、しかしクリアフォームの機能は効果覿面(てきめん)だ。レーダーにも映らないし、発煙弾と組み合わせて使えば絶大な戦術が繰り広げられる。


「っ、来たな!」


 怪獣も追い詰められてると察したのか、口と尻尾で波動砲を連射して来やがった。これは躱すしかない。


 クリアフォームの弱点は、透明化すると激しい動きができない事だ。機能に負荷がかかって強制停止してしまうんよ。


 だから回避行動や手榴弾の投擲とかではどうしても止めないとならない。クリアフォームで透明化するには発煙弾で隙を作る必要があるんだ。


 しかしクリアフォーム無しでも怪獣の波動砲連射は避けられそうだ。尻尾の方は相変わらず的確な砲撃だが、口の方はまるで狙いが定まっていない。


 頭の上半分を失った訳だからな、カメラやセンサーももちろん失っている。狙いが定まらなくて当然だろう。


 尻尾の方は、多分尻尾そのものにカメラかセンサーが付いているんだろうな。だから狙いが正確なんだ。


 しかし一番危険な口の波動砲が、狙いも定まらなくなったとなれば連射も躱すのに余裕が生まれる。SWEMブースター無しでも十分な程にな。


「やっとここまで来たんだ! 怪獣っ、お前の死骸を俺の(いしずえ)にしてやるぞ!!」


 遂に反撃の時が来た。さぁこっからは、待ちに待ったダイのターンだぜ!


 覚悟しろ、怪獣っ! ダイはもう覚悟してるぞ!!

怪獣観察日記その7


怪獣の胸にはクレイモア地雷が内装されていました。


波動光線を使うと、口を冷却するのに半開きになるようです。


それが弱点だったみたいで、やっとこっちの攻撃が通用しました。


お終い。


『……今度ばかりは本当に死んだかと思ったぞ』

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