第61話 運命の決戦、ダイvs怪獣……そして主人公は死んだ。ちょっと待て!
システム補助51%
ここに来て、ダイは怪獣の波動砲を受けてしまった。尻尾じゃなくて、口の方の、な。
怪獣の波動砲は規格外だ。歩兵機はもちろん、大型航空機や空母だって一撃で破壊し得る威力がある。それをダイは、遂に受けてしまったんだ。
直撃なら即死確定だろう。機体は木っ端微塵にされて原型も残らない筈だった。
しかし、ダイは無事だ。
そう、無事だったんだ。怪獣の波動砲を、右手に持ち替えたシールドで防いだのさ。エネルギーが回復した、波動シールドでな。
「た、助かったぁ〜……」パート2
恐竜どもの時と同じパターンだ。直撃の寸前でエネルギーが回復し、復活した波動シールドで怪獣の波動砲を受け流した。相変わらず悪運もパネェのがダイだぜ。
正直今回はダメかと思ったけどな。波動シールドが復活するかどうかはギリギリの賭けだったし、復活しても波動シールドで怪獣の波動砲は防げないんじゃないかとも思った。
結果は首の皮一枚繋がったと言うところだ。眼帯野郎の波動シールドは大したものだったんだな。
怪獣も1撃あれば死んだだろうと考えて次弾を撃って来なかったんだろう。だがもしも次を連射してきたら間違いなく死んでいたな。だってさぁ―――
「え、エネルギー残量……28%って」
―――聞いたか? 回復したばっかだと言うのにエネルギー残量28%だぞ。
つまり怪獣の波動砲を1発受け流しただけで70%以上もロスったんだ。って事は次に受け切るのは絶対に無理って事だ。
さて、どうするダイ? 未だ怪獣を倒す術は、破損した左脚太腿を攻撃するだけ。落としたグレネードジャベリンを拾うとしても、その後どうやって当てる?
遠くから投げても尻尾で叩き潰される。故に直接叩きつける他は無いが、さっきみたいに回り込もうとしても同じパターンで波動ウェーブにやられる。
あの波動ウェーブを躱すにはイングリッドの脚力だけで跳び越えるのは不可能だが、しかし有効範囲もかなり広い。波動ウェーブの範囲外まで逃げてたら距離が開いて本末転倒だ。
かと言って範囲外から超速球手榴弾やロケットランチャーを使っても有効打は与えられない。結局あの波動ウェーブを何とかするっきゃねぇーんだ。
「SWEMブースターは……70%出力で1分くらいか」
やっぱそうなるよな。あの波動ウェーブを躱すにはイングリッドの脚力だけでは不可能だし。
可能にできるとしたらSWEMブースターの推力を加える他無い。しかしエネルギー残量が30%を切った今、SWEMブースターが使える時間も限られている。
その時間は僅か1分、厳密には1分と無い。
もし、この1分で波動ウェーブを躱し、怪獣に接近してグレネードジャベリンを直撃させるとしたら……
「……正面突破、だぁー!」
それしかねぇーだろっ! やっちまえ、ダイ!
ダイはSWEMブースターを70%まで解放し、シールドを背中にマウントして再び猛ダッシュで走り出す。但し、今度は横回りではなく真正面からな。
怪獣も波動砲を撃って来やがった、口と尻尾の両方を使った擬似連射だ。ダイはそれをジグザグに移動しながら躱していき、まずは落としたグレネードジャベリンを拾いに行く。
怪獣もそれに気付いてグレネードジャベリンから先に破壊しようしたが、しかしSWEMブースターで猛ダッシュするダイの方が速い。
波動砲が当たる前にヒョイっと拾い上げて軽やかに回収した。そしてそれからも相当な速さで駆け回り、怪獣も照準を合わせられていない様子だ。
「いける!」
とてもSWEMブースターの推力だけとは思えない速さだった。ダイ自身の脚力がレベルアップして、それがブースターとの相乗効果を発揮しているんだろう。
ブースターが使えなくなってから休み無しで走り回っていたからな。それにこれまでも、怪獣と遭遇してからダイはずっとこのプラントの中を走り続けていたんだ。
基本的にスポーツなんて苦手で、マラソンも短距離走もドベを争う運動音痴だったダイだぜ。
それが今や陸上選手顔負けの疾走力で駆け回り、怪獣の波動砲も躱しながら接近できるまでに成長した。これはイングリッドのSWEMブースターだけではあり得ない、ダイの成長の証だ。
いけるかもしれない。絶対に敵わないと思っていた怪獣に……考え得る限り最強と言っていい怪獣に、今のダイなら勝てるかもしれないんだ!
「うがぁー!」
更に接近、そしてまた更に接近、怪獣の口と尻尾の波動砲の疑似連射をギリギリで躱しつつ猛スピードで距離を詰めていく。
あと少し、もう少し。そしてSWEMブースターの限界まで……あと10秒。
「あぁあああああ……来たか!?」
そして接近するダイに波動砲が全く当たらない事に危機感を覚えたのか、怪獣が再び足元から波動ウェーブを放ってきた。
怪獣を中心に全方位へ、床を伝って広がっていく波動の波は、イングリッドの脚力だけでは到底跳び越えられない程の高さがある。
おそらく上の方なら衝撃波に吹っ飛ばされるだけで済むだろうが、下の方だと波動砲をまともにくらうのとそう変わらないダメージがある。つまり下から上に行くにつれて威力が低下しているんだ。
なら、避けるなら上しかない。それも思いっ切り上に。即ち―――天井だ!
「うぉりゃぁあああああ!!」
残りのエネルギーを全て使い切る勢いで、ダイはSWEMブースターの推力を解放できるだけ全解放して跳躍した。
ほぼ100%に近いブースターの推力で跳躍したイングリッドは、怪獣の波動ウェーブを飛び越え、高さ6、70mはあろうかと言う天井に達した。
その瞬間エネルギー切れを起こし再びオーバーヒート状態になったがダイは構っていられない。波動ウェーブの難を逃れたダイは、達した天井を思いっ切り蹴って直ぐさま床に戻る。
V字回復ならぬ逆V時跳躍だ。いくら怪獣と言えども波動ウェーブは連射できまい、その隙に床へ降りる。
床に戻れば怪獣との距離はもう目と鼻の先、グレネードジャベリンを投擲しても尻尾では潰されない距離だ。今度こそいけるぞ。
だが、それは怪獣も予測していた。だから落下中のダイの着地点に向けて口の波動砲を撃って来やがったんだ。相変わらず躱し辛い砲撃を的確にしてきやがるな、くそったれが!
「フックランチャー!」
しかしダイの対応も的確だ。落下中にフックランチャーを床に打ち込んで落下軌道を変える。
それで怪獣の波動弾を躱せたが、着地の瞬間に今度は尻尾の波動弾が迫っていた。既に着地体勢にあるダイはもう落下軌道を変えられない。
「ならスライディングだぁー!」
ダイは着地と同時にスライディング、機体を仰向けに寝かせて落下の勢いに乗って床を滑り込む。それでギリギリ波動弾を躱した。
尻尾の波動弾はイングリッドの胸部を掠って背後で着弾する。本当にギリギリで躱せたが、しかしせっかくのマントもまたまた少し破けちまった、コンチクショー……。
そっからダイは腹筋背筋の力で立ち上がり、背中に波動弾の着弾時に起こる衝撃波を受けて猛ダッシュに加速を付けた。
距離は、もう至近距離と言っていい。今ならグレネードジャベリンを当てられれる。
遂にこの時が来た。怪獣に引導を渡すこの時が!
怪獣も続けて口の波動砲を撃ってくる。回避しなきゃならねぇが今この時を逃す訳にもいかねぇ。
「勝負だ、怪獣!!」
ダイは加速をつけた猛ダッシュで横に跳躍、怪獣の波動砲を躱すと同時にグレネードジャベリンを怪獣の左脚目掛けて投擲した。
今度こそ、これで終わりだ、怪獣!
―――ガシャン!
「え?」
え?
ひ、開いた? 怪獣の胸板が、開いただと!?
ダイがグレネードジャベリンを投擲したと同時に、怪獣の分厚い胸板の装甲板が左右両開きにガシャンッと開きやがった。
そして装甲板が開いた両胸の中にあったものをスキャニングして、俺はゾッとしてしまったんだ。何故ならそれは―――
[M78 クレイモア地雷]
―――嘘だろ、クレイモア地雷って。
ありゃ踏んで爆発する地雷と違って、地上に設置して水平方向に爆発する指向性の地雷だ。今起爆すれば、グレネードジャベリンごとダイを襲う。
―――ズドシャァァァァァン!
起爆はリモコン操作も可能で任意のタイミングで起爆させられる。しかもクレイモア地雷は爆薬だけでなく散弾も詰め込まれているから有効範囲も広く、そして威力も遥かに高い。
それが怪獣の両胸から炸裂しやがった。無数の散弾と強烈な爆風が飛来するグレネードジャベリンを破壊し、爆発の衝撃波すらクレイモア地雷の爆風で押し退けられてしまったんだ。
そして散弾はそれだけに留まらない。接近したダイ自身にも散弾は容赦なく降り注いで来やがる。
「う、うわぁあああああ!!」
咄嗟に波動シールドを装備してガードする。エネルギー切れで機能しなくなったシールドでも、今は他に防ぐ手立てが無かったからな。
だが宙に浮いていたダイは踏み留まる事はできず、ガードしたまま押し飛ばされて床に叩きつけられてしまう。単純な散弾のくせにとんでもない威力だぞ。
「ぐふっ! ……あ、脚が!?」
そして更に間の悪い事に、床に倒れたイングリッドは脚まで破壊され、無くなっていた。
ジャストサイズ化した波動シールドではイングリッドの全身を守り切る事はできない、どうしても脚元ははみ出てしまうんだ。
無数に飛んでくる散弾に躱す場所なんて当然無いし、シールドで守れなかったら直撃は免れない。故に破壊されてしまったんだ。ダイの命綱と言ってもいい脚が、2本とも失われてしまった。
ダイが培ってきた脚力も、脚が無くなっては意味が無い。これではも立つ事も、走る事も出来なくなった。そしてグレネードジャベリンも、今のが最後だ。
それに対して怪獣は胸板の装甲板を閉じると、床に倒れたダイに眼光を向ける。
まるで、もうお前の負けだと宣言しているかのような、そんな完全勝利者の如き佇まいで床に倒れたダイを見下ろしていやがる。
「……ここまでか」
ダイも諦めがついたように呟いた。正直俺も、諦めはついた。
両脚に加えて左腕も無い。おまけにエネルギー切れで武器も無くなったときた。動けないし反撃も出来ないと詰み状態のオンパレードだぜ。
その上ダイ自身の息も上がっている。スタミナももう限界に達しようって状態だ。
歩兵機は満身創痍、パイロットは疲労困憊、こんな状態で何が出来るって言うんだよ? 普通に死ぬしかねぇーだろ。
それに比べて怪獣は左脚を破損した以外は無傷。ダイがここまでやって碌なダメージは殆ど無かった訳だ。
本当に規格外だぜ。逆立ちしようが何をしようが、結局ダイの勝てる相手じゃなかったんだ、怪獣は。
ははは……ここまでくると笑えてくるな。寧ろ笑うしかねぇーだろ。
「クレイモア地雷に波動ウェーブ、それに波動装甲とその他諸々……そりゃあ勝てる訳無いよ」
文句を垂れるダイは、それでも怪獣に屈する事無くクレイモア地雷の散弾を防いだシールドを右手に持って掲げた。
「やってみろよ、こっちにはまだ波動シールドが残ってるんだ。それに、秘密兵器だってある。お前の波動砲を防いで、秘密兵器を使って、そして今度こそお前を倒してやるよ」
それは分かり易い程のはったりだった。波動シールドはエネルギー切れで機能していない、ただの鋼板でしかなくなっている。
例え機能してたとしても、散弾を受けた際にイングリッドを守ったのと引き換えに、シールドの表面はズタズタに破壊されていた。これでは怪獣の波動砲を防ぐ事は、どの道不可能だと分かる。
それに秘密兵器も。確かにまだ使ってない秘密兵器が2つ残っているが、手元に無いのは明らかだ。片腕も無い両脚も無いイングリッドで、それを取りに行って使う余裕なんて無いだろ。
仮に使えたとして、それで怪獣に勝てる見込みなどあるだろうか? 普通に考えて、答えはNOだ。それはこれまでの戦果が物語っている。
怪獣には何をしても無駄だと、ここまで必死にやってきてほぼ無傷で佇んでいる怪獣の姿そのものが、その事実を証明しているんだ。
つまり、もうダイに手立ては何も無いって事だ。はったりをかます以外には、な。
―――ガァー!
しかし怪獣は、そんなダイの見え透いたはったりに乗ったのか、それともあまりにしぶといダイを確実に仕留めたいのか、ここに来て奥の手を使い出した。
背中にある縦並びの背ビレがパカッと左右に開いていき、その間から空気を歪ませる程の熱が排出される。
閉じた口からは青紫色の光が隙間から漏れ出し、今にも物凄い勢いで吐き出されようとしていた。
波動光線。ダイにトラウマを植え付けた、怪獣の最強兵器を使うつもりだ。
怪獣もダイに引導を渡そうと言うのか、余程ダイを確実に仕留めたいらしい。そこまで怪獣を本気にさせるとは、ダイも隅に置けない奴だぜ。
「……かかって来い、怪獣っ!」
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放たれた。怪獣の波動光線が、ダイに向かって放たれてしまった。
全てを薙ぎ払う光線がダイを、イングリッド、そしてその階層の床や壁をも焼き払っていく。
まるで世界の終りを示すかのような不気味な光が、その空間全てを包み込んでしまう。
それらの光は徐々に弱くなり、やがて波動光線は止まって視界が開けた。砲口を冷やしているのか、半開きになった怪獣の口からは蒸気が上がっている。
そして怪獣の目の前には、ただただ深く抉れた床があるだけ。そこにいた筈のイングリッドは、跡形も無く吹き飛んでいた。
実は波動光線を躱して何処かに隠れているのかと思えるかもしれないが、しかしそれは絶対にあり得ない事だ。ダイのイングリッドは、怪獣の波動光線を受けて間違い無く消滅したんだ。
宙に舞うイングリッドの破けたマントが、その嫌な事実を物語っていたのだからな。
怪獣観察日記その6
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『……あれ? 日記はどうした、ダイ?
……まさか、本当に死んだりしてないよな、ダイ? ダイ??
……ダイィィィィィィィィィィ!!!』




