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第60話 運命の決戦、ダイvs怪獣……結局怪獣には勝てないのかぁ

 システム補助51%


 ……俺がバカだったんだ。


 ダイなら奇跡を起こして怪獣にも勝てるだろうと言う安易な期待に、勝ち目のない無謀なギャンブルを挑ませてしまった。


 だが、これはギャンブルでは無かった。0.01%の勝機も無い、120%の敗北が確定した負け戦だったんだ。


 戦っちゃいけなかったんだ、歩兵機としての能力が別次元の怪獣とは。


 そんな事は、最初から分かっていたと言うのに。あの時初めて怪獣の波動光線を目の当たりにした時から分かっていた事だと言うのに。


 なのに何で俺は、ダイを怪獣と戦わせてしまった!?


 怪獣の危険性は承知した筈だった。ポテンシャルがイングリッドとは比較にならない事も十分に理解したつもりだった。なのに何故こんな事になってしまった?


 承知した危険性も、理解したポテンシャルも、その全てが俺の推測を超越していたからか?


 確かに、それはこの異常なまでのエネルギー回復速度の速さが物語っている。天地がひっくり返っても勝ち目なんて無い。怪獣は完全不敗の域にいる、まるで神話の遺物だ。


 こんなに早くエネルギーが回復してしまった怪獣と、未だ回復していないダイ。これがどれ程絶望的な状況か分かるか?


 怪獣には最強の矛と楯を備えている。桁外れな威力の波動砲に、125mmの滑腔砲でも傷1つ付かない波動装甲。エネルギーが回復した今、怪獣はそれを存分に発揮できる。


 それに比べてダイはどうだ? ただでさえ性能に雲泥の差があると言うのに、波動シールドもSWEMブースターも使えないんだぞ。


 これは本当にダメだ。こんな化物と、戦わせるんじゃなかったんだ。戦ってはダメだったんだ!


 くそっ! くそ、くそ、くそ、くそ、くそったれぇー!!


「……いや、まだだ」


 だ、ダイ?


「まだ……まだ戦える!」


 なっ、ダイはまだ諦めていないのか?


 匙を投げた俺と違って、ダイの闘志はまだ消えていない?


 だが、戦いようも無いだろ。波動装甲が復活した今、怪獣に太刀打ちする術は無いのも事実。


 怪獣の波動装甲を打ち破るのは不可能だ。滑腔砲をも凌駕するグレネードジャベリンを頭に直撃して、それでも尚無傷だったんだからな。


 それは即ち、ダイでは何をやっても打ち破る事はできないと言う事になる。


 そしてその波動装甲で怪獣は全身を覆っている。覆われていないとしたら波動砲の砲門くらいだ、他にはどこも無い。徹底した完全防備っぷりだ。


 まさに打つ手無しだぞ。これで一体、どうするつもりだ、ダイ?


「脚を、ぶっ壊してやるっ!」


 いや、だから波動装甲には無理だって……あ、ああ、あああああ!!


 そうかぁ! 怪獣の左脚は、太腿が破損していた。


 その破損部位なら、波動装甲は無い。ダイの攻撃が通じるんだ!


 でかしたダイ、やはりお前は追い詰められた時こそが真骨頂だぜ!


 怪獣は左脚が破損してるが、これを完全に破壊して左脚がごっそり無くなれば、怪獣は右脚と尻尾でしか身体を支えられなくなる。


 あれだけの巨体だ。脚1本失えば立てなくなるのは容易に想像がつく。そうなれば怪獣の最強たる矛も大幅に制限されるだろ。


 しかしエネルギーが回復した怪獣との長期戦を避けるには、迅速に脚を破壊する必要がある。


 使うならグレネードジャベリンだ。これならあと一撃でも破壊できるだろうし。だが槍は残りあと2本、後々の事を考えると絶望的な状況には変わり無い。


 行けるのか、ダイ?


「うりゃぁあああああ!!」


 ダイは猛ダッシュで怪獣の背後に回る。背後ならば口の波動砲は飛んで来ないからだ。


 怪獣の首は左右120度ずつの可動域で、後ろの120度は完全な死角となる。だから背後に回れば、波動砲は尻尾の先からしか飛んで来ないんだ。


 今までならあの巨体で驚異の旋回速度を発揮したから背後に回り込めなかったが、しかし片脚を破損して動きが鈍った今なら回り込める。


 そしたらあとは尻尾の波動砲だけだ。それならブースト無しでも躱し切れるさ。


 それにダイの猛ダッシュも、追い詰められたせいか更に速くなっている。驚くべき疾走力だ、なびくマントがそれを証明しているぜ。


「あああああ……あっ、あっ、あがぁ!? く、口の波動砲を撃ってきた!?」


 しかし背後への回り込みが速くなったダイだったが、怪獣の旋回速度もまた速くなっていた。


 信じられない事だが、怪獣の足裏にはSWEMブースターを応用したホバークラフトのような物が搭載されているようだ。タイヤでもキャタピラでも無く、SWEMブースターのホバーかよ。


 それでエネルギー回復と同時に旋回速度が上がったのか。動きが鈍ったのは単にエネルギー切れが原因だっただけかい。


 まぁ今更SWEMブースターを搭載したくらいで驚きゃしねぇーけどな、流石にちょっとレパートリーが多過ぎなんじゃないかね、怪獣さんよぉ!?


「くっそぉー!」


 しかしダイも負けじと猛ダッシュで怪獣の背後に回り込む。怪獣の旋回速度が上がったと言っても最初の頃に比べれば幾分遅い。やはり脚の損傷が尾を引いてるみたいだな。


 それにダイ自身も、火事場の馬鹿力が発揮されたのか、また更に速くなりやがったみたいだ。


 思えば幾度となく追い詰められた状況に立たされてきたダイも、その都度驚異的な成長を見せて切り抜けてきたんだったな。


 そう言う意味では、ダイも十分チートかもしれないぜ。


 しかし今度ばかりは本当にダメかもしれない。これまでずっと全力疾走で走り続けていたダイだ、そろそろスタミナ切れも起こしつつある。


 息も上がってきた。持久戦になれば確実に終わる。そうなる前に怪獣の脚だけでも破壊しておきたい。


「もっと……もっと小回りに!」


 ダイは回り込みを大回りから小回りになるよう怪獣に近付きながら回り込む。


 正直あまり近付きたくは無いだけどな。ある程度距離を取らないと尻尾の波動砲だけでも躱すのが難しくなるからだ。


 しかし近付いて小回りにでもならないと、怪獣の旋回速度に追いつかれる。背に腹はかえられねぇー、リスク承知で接近あるのみだ。


「も、もう少し……あと、ちょっと……今だ!」


 回り込みながらの接近である程度距離を詰めた瞬間、ダイはマントを翻して反対側へ跳躍。怪獣の意表をついて破損した脚に狙いを定めた。


 右手にグレネードジャベリンを構えて、跳躍中に身を捻り投擲する。


「いっけぇー!」


 超速球とはいかないが、それでもかなりの投擲速度で投げたグレネードジャベリンは怪獣の左脚、破損した太腿の箇所に真っ直ぐ飛んでいった。


 これは、やったか?


 ―――ズドォオオオオオン!!


 グレネードジャベリン特有の凄まじい爆発音だが、しかしそれが直撃していない事はダイの目にも明らかだった。


 怪獣が直撃する前に、尻尾で飛来するグレネードジャベリンを叩き潰したんだ。


 流石にあれの直撃を破損した脚に受けるのは怪獣もマズいと思ったんだろうな。波動装甲でがっちり覆われた尻尾を振って叩き潰してくれやがったぜ。


「そんな……」


 やってくれたな、怪獣。貴重なグレネードジャベリンだって言うのに、しかもあと1本しかねぇーんだぞ。


 あと1本、これだけで怪獣の脚を破壊できるかどうかも怪しいと言うのに。やはり怪獣には勝てないと言うのか。


「だったらもう……直接叩きつけてやる!」


 若干やけくそ気味になったダイだが、しかし投げても叩き潰されるなら直接叩きつける他はないな。


 爆弾の類いはあまり直接と言うやり方はしたくないところだが、しかし贅沢も言えない。素早く飛び退けば何とかなるだろう。てか、そう信じたい。


「だぁー!」


 ダイは猛ダッシュで怪獣の背後に回り込みつつ、今度は至近距離まで接近する。


 ぶっちゃけ無謀を通り越して自殺行為なんだが、直接叩きつけるなら至近距離まで接近するしかないんだし。こうなりゃ腹をくくるっきゃねぇーだろ。


 死角に入ったから口の波動砲は飛んでこない。尻尾の波動砲は何とか躱せるが、接近する毎にそれも難しくなる。


 それに警戒すべきは波動砲だけじゃない。接近すればあれもくる、おそらくは尻尾の波動砲よりも更に危険なあれが。


「来たか!」


 やっぱり来たか、怪獣の尻尾攻撃。


 単純な打撃だが、あのデカさと関節の多さで繰り出される打撃は凄まじく、更にしなりを巧みに使いこなした怒涛の連撃となって襲い掛かってくる。


 そして何より、波動装甲が機能した状態では尻尾攻撃の威力も爆発的に跳ね上がるんだ。実際叩きつけられた床がエグい感じに凹んでいるし。マジ洒落になんねぇー。


 しかも怪獣は器用に尻尾攻撃を繰り出しながら、尻尾の先の波動砲も同時に撃って来やがる。なんてトリッキーな事を。


「ぬぅううがぁぁぁぁぁ!!」


 そんな凶悪な尻尾攻撃にもダイは臆さず、打撃と同時に飛んでくる波動砲をも躱しながらじりじりと接近していく。


 尻尾連撃はとにかく凄まじい。躱した瞬間にはもうすぐそこまで次の打撃が迫っている、連撃の間隔がまるでマシンガンのように速過ぎるんだ。


 それに加えて波動砲も絶え間なく飛んでくる。これら全てを躱すのは至難を通り越した無理ゲーそのものだが、それを躱しながら接近を続けるダイもこの時既に人間離れしていたのかもしれない。


 だが、それでもスタミナが切れたら問答無用で終わる。既にダイの息は上がっているし、身体も重く感じてきている。疲労が溜まってきた証拠だ。


「あああああ!!」


 そんな中でも、ダイは気力を振り絞って躱しながらの接近を続ける。僅かなミス1つでもイングリッドの大破は免れない、そう言う危険極まりない状況にも関わらずだ。


 そんな猛攻を怒涛の連撃として絶え間無く繰り出されながらも、何1つとして見落とす事無く的確に把握して躱し切る凄まじい集中力と極限の判断力がダイを支えていた。


 本当に崖っぷちだ、いつミスを犯してあの世行きになっても不思議じゃないって言うのにな。


 寧ろ今こうして躱し切っている現状の方が不思議だ。ダイがこの3ヶ月で最も鍛え上げられたのは、この回避力だったのかもしれない。


 そして怪獣まで随分と近付いた。ここまで近付くと尻尾の波動砲も撃ち辛くなったみたいで、砲撃の手も治まりつつある。


 もう少しだ。あともう少しで―――


「あああ……あ、な、何ぃ!?」


 なっ……何だ、ありゃ!?


 怪獣の足元から、突然何かが噴出した。そしてそれには、僅かな青紫色の光を纏っていた。


 波動? これは波動兵器なのか!?


 足元から噴出された波動は地面を伝って怪獣を中心に全域へ広がっていく。それはまるで水面に浮き出る波紋のように。


 波だ。地面を伝って全域に広がる、波動の(ウェーブ)だ。波動ウェーブってか?


 ふざけんなよ! ダイが神経をすり減らしてやっとここまで来たって言うのに、ここに来てまた新兵器だと? どんだけチートなレパートリーなんだ、怪獣は!?


 波動ウェーブが迫ってくる。ダイは危機感を抱いて、咄嗟にジャンプして回避しようとしたが、


「うぎゃぁー!?」


 しかし回避し切れない。地面を伝う波動ウェーブはイングリッドの全長程もあったが、衝撃波は更にもっと高くまであったんだ。


 イングリッドの跳躍力を持ってしても、それを回避する事はできない。目に見えない壁をぶつけられたようなもんだった。


 かなりの衝撃だ。これで衝撃波だけだと言うのだから恐ろしいぜ。もしも回避が遅れて地面を伝う波動ウェーブの直撃を受けていたと思うとゾッとする。


 しかしまだ、それだけでは終わらなかった。


 衝撃波に飛ばされたダイを、怪獣の尻尾が容赦なく襲って来たんだ。宙に投げ出されたダイに回避する術は無い。


「うがっ!?」


 咄嗟に波動シールドを出してガードしたが、波動が機能しないシールドはただのシールド。ダイは呆気なく叩き飛ばされてしまった。


 そしてダイは盛大に床へ叩きつけられる。その衝撃でフレームに損傷が出たのか、受け身も取れずに倒れてしまったぞ。


 かろうじてイングリッドは無事だったがな。シールドの純粋な防御力に助けられたんだ。今のはマジでヤバかったぜ。


 シールドも無事だったが、しかしシールドを構えた左腕が、肘からへし折れて外れてしまった。ある意味これも外れたの悲劇か。


 ついでに言うと最後のグレネードジャベリンも落としてしまったし、せっかくのマントも今度はかなり破けちまった。コンチクショー!


「くっ……っ!?」


 立ち上がろうとして上体を起こしたら、最悪の光景が目の前に飛び込んで来た。


 怪獣が正面を向いていて、口の波動砲を撃つ準備を整えていやがったんだ。あのバカげた威力の、波動砲を。


「う、うわぁあああああ!!」


 直ぐに逃げようとしたが、フレームが損傷して左腕も失くしたせいで思うように立てなかった。


 それを怪獣が見抜いていない筈が無い。ダイが立たなくなったこの機会をチャンスと見て、必殺の波動砲を放って来やがった。


 ダメだ、これは躱せない。


 ―――ズガァァァァァン!


 怪獣が口から放った波動砲にダイは躱す事ができず、正面からの直撃を余儀なくしてしまった。


 壮絶な着弾音、怪獣の波動砲が放った波動弾は倒れたダイに命中し、凄まじい衝撃波を放つ。


 一撃必殺を約束した、絶大な威力の波動砲。ダイはそれを、とうとう受けてしまったんだ。


 必殺の波動砲を。

怪獣観察日記その5


怪獣のエネルギー回復速度はイングリッドよりもずっと速かったです。


足裏にあったのはSWEMブースターのホバークラフトでした。異様な旋回速度にも納得です。


波動装甲が復活した尻尾攻撃はマシンガン並みの連撃速度で1撃1撃がエグい威力でした。


あと足からMAP兵器的な波動ウェーブが出ました。


お終い。


『……そもそもだけどな、吞気に観察日記なんか付けてる場合かぁ!』

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