第58話 運命の決戦、ダイvs怪獣……そして波動光線は放たれた。逃げろぉ〜!!
システム補助52%
「ヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバ……」
開始早々ダイは壊れてしまった。怪獣がまさかの全身波動装甲なんてチートな鎧を身に纏っていたからだ。
あれは反則だろ。以前ダイは眼帯野郎との戦闘で波動シールドの防御力を嫌と言うほど思い知らされた。
その後、眼帯野郎からくすねた波動シールドをジャストサイズ化した際にどれ程の耐久力があるのか、念入りに調べておいたんだ。
そしたらさぁ、マジで手の打ちようがない耐久力があったんよ。これを貫通する威力の武器は、少なくともこのプラント内には存在しなかった。
攻撃の手段が無い。それでどうやって怪獣と戦えってんだよ? バカじゃねぇーのか?
―――ギロッ
と、怪獣が不意に睨んできた。……いや、そんなバカな。今は発煙弾の煙幕で見えない筈―――
「ヤバヤバヤバヤバ……あ、あああああ!! 煙が晴れてる!?」
気が付けば発煙弾の煙幕も晴れつつあった。いくら密室空間とは言え、いつまでも煙が充満する筈もなかったと言う訳か。
てか怪獣、間髪入れずに波動砲を撃ってきやがった。
「うぎゃぁあああああ!」
間一髪で躱すも、また大事なマントが少しやぶけちまった。コンチクショー!
徐々に徐々に背中のマントがやぶけていく。まるでダイがどんどんと追い詰められている事実を示しているかのように。
直ぐにまたブーストをかけて全力疾走するが、エネルギー残量もあと半分までに達した。
このままじゃ何れエネルギー切れになって怪獣に滅多撃ちにされる。そうなったら跡形も無くなってお終いだ。
その前にどうにかしねぇーと。しかし、どうしたらいい?
全身を波動装甲で覆った怪獣に打つ手なんかねぇーぞ。あの装甲に覆われていない所と言ったら、波動砲の砲門くらいのものだ。関節でさえがっちり覆われている徹底振りなんだからな。
しかし唯一狙える砲門も、口は閉じたら狙えなくなるし、尻尾は小刻みに動くからまるで狙えない。
今度はこっちが八方塞がりになっちまった。マジでどうしたらいいんだよ?
「こ、こうなったら……」
この八方塞がり状態で、ダイは何かを仕掛けようとしていた。
しかし何だか、今までの計画的な戦法と違って……やけくそ感があるんだが。ちょっと嫌な予感がするぞ。
「シールドで口を塞いでやる!」
アホかぁあああああ! 無茶にも程があるだろ!!
確かに恐竜戦ではそれが通じたけど、相手は怪獣だ! 流石に無理があるだろ、シールドだってジャストサイズ化して小さくなったんだし!
けど俺の声が届く筈も無く、ダイは無謀な特攻に挑む気満々でいた。これは……死んだかも?
「うりゃあああああ!」
ダイは尻尾の波動砲が頭に隠れる位置まで移動して、拾った発煙弾を怪獣の頭目掛けて投擲。
怪獣も素早くCIWSで迎撃したが、それで舞い上がった煙が煙幕となって怪獣の視界を覆う。これで口元まで飛び付く隙はできた。
問題はここから、再びブーストを70%まで解放して驚異的な跳躍力でジャンプ、一気に怪獣の口元に突っ込む。
怪獣もダイが煙幕の中から突っ込んでくる事に気付いて波動砲を撃つ構えに出るが、しかしダイの方が早い。発射する前にダイの波動シールドが口を塞げるのは確実だ。
あとは怪獣が撃つ波動砲をシールドが抑えて口内爆発させられるか、抑えて切れずにダイが粉砕されるか。
つまるところ波動砲が勝つかシールドが勝つか、だ。……どう考えてもシールドに勝ち目はねぇーんだけど。
―――ズガァァァァァン!!
「ぎゃあああああ!」
ほら、やっぱり……。
怪獣の波動砲に耐え切れず、ダイはシールドごと吹っ飛ばされてしまった。イングリッドの機重が嘘のように軽々とな。
正直これで死んだかと思ったけど、驚いた事にイングリッドは無事で、シールドも潰れずに済んだ。単に怪獣の波動砲に押されただけだったんだ。
それから受け身をとって着地したが、シールドはまだ健在で故障した様子も全く無い。波動シールドの耐久力は俺が想像してた以上の性能だったようだな。
それが証明されただけでもめっけもんだが、しかしもうシールドは使えない。何故なら―――
「え、エネルギーが……切れた」
そう、今の波動砲をガードした事でエネルギー切れになってしまった。
故にシールドは使えない、もうただの鋼板と変わりなくなってしまったし。ついでに言うと、ブーストも使えなくなってしまった。
「……レーザー!」
ダイは再びレーザーで床に転がってる発煙弾を爆破し、煙を充満させた煙幕で怪獣の視界を奪った。
ブーストが使えないんじゃ波動砲のフルオート連射は躱し切れん。煙幕で視界を奪うなり何なりしないと忽ち波動砲の餌食にされる。
この隙にダイは―――
「戦略的撤退! だぁー!!」
……まぁ賢明な判断だな。エネルギー切れのまま怪獣に挑むのはあまりに無謀、それはもうお腹一杯だ。
ここはトンネル状の通路まで一旦退避するのがいい。それでエネルギーの回復を待って再度挑戦するのがベストな選択だろう。
こっちには怪獣が追って来れない安全地帯がある。圧倒的な性能差というハンデを抱えているんだ、使えるものは有効活用しないと―――
―――ぞわっ!!
「っ!?」
しかし撤退しようとした瞬間、ダイはまた波動砲の気配を感じだ。しかもそれは、今までの比じゃなかった。
これは……そう、ダイに恐怖と言うトラウマを刻み付けた、あれだ。
「ま……まさか!?」
振り返ってみると、怪獣の背ビレが二枚貝のようにパカッと開いており、その間からは空気が歪む程の高熱を排出している。
そして口からは、波動の青紫色に灯る炎のような光が漏れ出ていた。あれを使うつもりだ。ダイにトラウマを刻み付けた、あの凶悪兵器。
波動光線を、使うつもりだ。
「う……うわぁあああああああああああああああ!!」
逃げろぉおおおおお! ダイィィィィィ!!
あれはダメだ。あれだけは、マジでダメなやつだ!
ガチでヤバいと察したダイは急いで通路へ走って―――直ぐに足を止めた。
何故なら怪獣はダイを狙っていない。そもそも煙幕でダイを見失った怪獣がダイを狙える筈が無いんだ。
だから周囲一帯を薙ぎ払うつもりでいるのかと思ったんだが、そうじゃなかった。怪獣はトンネル状の通路の出入口に狙いを定めていたんだからな。
―――――――――!!
放たれた。
あの冗談みたいに恐ろしい波動光線が、また放たれてしまった。
幸いダイは射線上から離れていたら難を逃れたけど、怪獣の放った波動光線は出入口を破壊して瓦礫で道を塞ぎやがったんだ。
凄まじい破壊力だ。その光は全てを浄化するかの如く眩しく、目を開けていれば網膜を焼かれかねない程の凶悪的な光だった。
目を瞑らざるを得なかったが、この光は出入口を含む壁一帯を焼き払ったかのようで、その後は落盤で天井が崩れたようなけたたましい音が鳴り響いていた。
そして恐る恐る目を開ければ、出入口は瓦礫の山で埋まってしまっていた。恐るべき波動光線、こんな兵器を持った怪獣が世に出たら世界は終わるぞ。
てか、またかよ。前回も波動光線で塞がってたのをやっと開通させたばかりだと言うのに、また波動光線で塞いでくれるか。
怪獣め、これは嫌がらせと言うよりダイをこの地下3階から逃すまいと、監禁しに来たか。
マズいぞ、唯一のアドバンテージである退路まで無くなってしまった。これでもう後戻りはできない、この地下3階からは逃げられなくなったんだ。
武器は何一つ通用しないしエネルギー切れで万策尽きて、挙げ句の果てには退路まで失った。
つまり、また追い詰められちまったよ。ここまで来ると逆に笑えてくるな。ははは……。
てかこれ、今度こそ終わっただろ。退路を失ったとなりゃあ、もう面と向かって怪獣とやり合うしなねぇーだろ。……つまり死ねってか?
普通はここで匙を投げるものだろうかど。だがな、もうここで諦めるようなダイでは無くなったんだぜ。
「ヤ……ヤバ…………」
無くなった……と思う筈だ、多分。
「ど、ど、どうしよう……どうしたら………………ひっ!?」
不意に怪獣がこっちを見た。さっきの波動光線のせいか、既に煙幕は吹き飛ばれていて怪獣の視界はダイを捉えていたんだ。
ダメだ、ブースト無しで波動砲のフルオート連射は―――
―――ズドドドドドドドドドドドドドドドン!!
「っ!?」
っ!?
撃ってきた。フルオート連射をけたたましく撃ってきた。実弾を。
「うがぁー!」
ダイは猛ダッシュして怪獣の連射を躱す。
躱しながら、怪獣が使う実弾の連射をスキャニングした。
[XM1017 90mmチェーンガン]
チェーンガンだ。怪獣が使ってるのはチェーンガンだった。
しかもダイが使ったものより大口径で威力も高い。それが2門同時、フルオート連射で撃って来やがる。
それを何処から撃っているのかと言うと、腕の下だ。怪獣は腕の下にチェーンガンを内装してやがったんだ。
最初のスキャニングで分からなかったのは隠れて見えなかったからだろうけど、そんな事より怪獣は何故波動砲を使わずにチェーンガンを使ってきたのか、そっちの方が気がかりだ。
確かにチェーンガンは波動砲よりも遥かに連射性があるし、1発でも当たれば致命傷になり得り兼ねない威力だ。それが2門同時ともなれば一瞬で蜂の巣されそうなものだが。
しかし四本脚やら恐竜やらで動体視力と反射神経を徹底的に鍛え上げたダイならブーストを使わずともギリギリで回避できる。
それに決定的にちがうのは、チェーンガンには着弾時の衝撃波が無い。
あれが有るのと無いのとでは全く違う。波動砲は着弾時の衝撃波のせいで1発1発避けるのが非常に困難なんだ。
だから波動砲の疑似連射に比べて、チェーンガンの2門同時連射の方が遥かに避け易い。怪獣とて、それは分かっている筈なんだが。
では、どうして波動砲ではなくチェーンガンを使う? 敢えてチェーンガンを使う必要性は無いだろう。ならチェーンガンを使わざるを得ない理由があるのか?
チェーンガンを使わざるを得ない理由。逆に言うなら、波動砲を使わない理由?
「波動砲を使わない……まさか、使えない!?」
いや、そのまさかかもしれねぇーぞ。もしそうなら……勝機が見えてきた!?
ダイもそれに気付いて、全力疾走のまま床に散らばっている武器の中から手榴弾のポッドを拾い上げる。
そして空のポッドと手早く交換すると、跳躍して振り向き様にマントを翻して超速球手榴弾を投擲した。
―――ズドォーン!
チェーンガンの銃撃の中でも、ダイは的確な投球で怪獣の右肩に命中させた。
その巨体と比較して少し小さめな腕が、超速球手榴弾の爆撃を受けた瞬間にダランと垂れ下がる。肩関節が破壊されて機能しなくなったんだ。
「やっぱり……コイツ、エネルギー切れを起こしている!」
そう、本来なら少し小さめとは言え波動装甲で覆われた肩が手榴弾1つで破損するなんてあり得ない事だ。
それに波動砲を使わずチェーンガンでの銃撃に出た事も、怪獣がエネルギー切れを起こして波動兵器が使えなくなっている事を裏付けている。
間違いない、怪獣はエネルギー切れになったんだ。
冷静に考えると当然の結果だ。無人機は元々イングリッドの倍以上の出力があるし、怪獣程の巨体ならその3、4倍も悠にあるだろうけど、それにしたって限度がある。
実際ダイがSWEMブースターや波動シールドを使うと物凄い勢いでエネルギーが消費される。怪獣とてあれだけ波動砲をばんばん撃ってりゃ消費も激しい筈だ。
極め付けは波動光線、あれがエネルギー切れ最大の原因だろう。
ダイを逃すまいとして波動光線を撃ったが、それでエネルギー切れを起こすとは本末転倒だぜ。それとも承知の上での行動か?
もしそうなら余程ダイを逃がしたくないみたいだな。そんなに恋しかったのか? よかっなダイ、お前モテモテみたいだぞ。
「これは、勝てるか!?」
ああ、勝機が見えてきたな。
エネルギー切れはこっちも同じで退路も無くなっちまったが、しかしまだ脚がある。
全力疾走の猛ダッシュで銃撃を躱しながらやれば、怪獣とも戦える。何せ波動装甲が無くなった今の怪獣には有効打が幾らでもある訳だし、武器だって幾らでも散らばっている。
そして怪獣のチェーンガンはあと1門だけ。エネルギーが回復する前に、せめて波動砲だけでも破壊してしまえば、勝機は十分にあるだろ。
「よし、反撃開始だ!」
ダイは銃撃の中を全力疾走し、身を捻ってマントを翻しながら新たに武器を手にした。
さぁ、漸くきたダイのターンだぜ!
怪獣観察日記その3
両腕にはチェーンガンがありました。しかも90mmでした。
イングリッドが扱える限界の威力を普通に連射してきて、改めて怪獣は恐ろしいと思いました。
でもそれより何より波動光線の方が恐過ぎでした。
お終い。
『……確かにあれは恐かった』




