第57話 運命の決戦、ダイvs怪獣……詰みました。……やっぱり?
システム補助52%
―――ズドォォォォォォン!
125mmの滑腔砲は凄まじい発射音を立てて発砲、そして怪獣の横っ面に直撃した。
滑腔砲の弾は榴弾じゃない。単発の威力を追求した徹甲弾だ。地下5階にある恐竜の死骸に試し撃ちしたら弾が貫通する威力が証明された。
これ程の威力だ。どんなに怪獣の装甲が硬かろうと、無傷で終わる筈が無い。
実際、滑腔砲の直撃を顔面に受けた怪獣は、その衝撃のあまり首を仰け反らした。それはつまり、確かなダメージがあった証拠だ。
「……やったか?」
自動照準機能があるとは言え呆気ないくらい簡単に命中した事に、ダイは信じられない気分でいた。
そして怪獣はと言うと、仰け反らした首を元に戻してダイに向き直る。その鋭い目で睨む顔は―――無傷だった。
「嘘だろ!?」
嘘だろ!?
いくら装甲が硬いと言っても限度があるだろ! 何なんだ、奴の装甲は!? フェイ◯◯フト装甲でも使ってんのか!!?
ヤバいぞヤバいぞヤバいぞ! この滑腔砲でダメなら何やってもダメじゃねぇーか。
てか波動砲が来やがった!?
「うぎゃぁあああああ!」
間一髪で躱したが、せっかくの滑腔砲が銃座ごと一瞬で破壊されちまった。しかもせっかくのマントも少しやぶけちまった。コンチクショー!
「ダメだ! 単発の威力じゃダメだ! あの装甲を破るには……蓄積ダメージじゃないと!」
そう判断して次にダイが目をつけたのはチェーンガンだった。
以前大頭無しのいたフロアで四本脚の大群とやり合った時に使った57mmのチェーンガンだ。滑腔砲と比べたら単発の威力が随分見劣りしているが。
しかしチェーンガンには連射力がある。一撃で決めるのでは無く、連撃でダメージを蓄積していけば如何に強固な装甲と言えどいつかは破壊できる。
「でりゃぁー!」
ダイは怪獣の波動砲を躱すと同時に、マントを翻して超速球手榴弾を投げる。手榴弾は怪獣の顔面に当たって爆発したが、例によって怪獣は無傷。
しかし怯みはした。この隙に新しい銃座を設置してチェーンガンを固定する。本当に手軽に設置できるから助かるぜ。
そしてすかさず発砲。中々の連射力で撃ちまくるチェーンガンの弾は、怪獣の口元に集中して命中する。
ダメージを蓄積させるには時間がかかる。その間怪獣の波動砲をやり過ごすには、撃たせないようにしなければならない。だから口元を狙うんだ。
怪獣は今口を閉ざしたまま俯いている。波動砲を撃つには口を開けないといけないが、しかし口を開ければチェーンガンの弾が撃ち込まれる。口の中の、砲門にな。
どんなに強力な波動砲を素早く撃とうと、この連射の中で口を開けたら2、3発は直撃するだろ。そうなりゃこっちのものさ。
流石に波動砲そのものにチェーンガンの弾が2、3発でも当たれば破壊できる。それは即ち怪獣は大事な主力武器を失う事にも繋がる訳だ。
そうならないように口を閉ざして波動砲を守らなくてはならない。しかしそれでは波動砲が使えず、反撃の手段が無くなる。
要するに、八方塞がりって訳だ。ざまあ見ろ、怪獣!
こうなると怪獣が採れる手段はチェーンガンの弾切れを待つか、接近して直接攻撃に出るか、或いは隠し武器でも使うかだが―――
―――ぞわっ
「っ!?」
っ!?
こ、この感じ……波動砲を使う気か?
今口を開けたら大惨事になるぞ。それを覚悟の上でやるつもりなのか?
だが俺達の予想は少し違っていた。怪獣は確かに波動砲を撃ってきたんだが、しかし口は閉じたままだったんだ。
口を閉じたまま―――尻尾の先から撃ちやがった。
「そんなの有りかぁー!?」
俺も思う。そんなの有りか?
怪獣、まさかの波動砲をもう1つ備えてやがった。1つでも十分反則級な波動砲を、この怪獣は2つも持ってやがったんだ。
やけに長い尻尾が付いてるな、とは思ってたけど波動砲はねぇーだろ!
「うぎゃああああああああああ!!」
これも間一髪で躱したが、チェーンガンはこれまた銃座ごと一瞬で破壊されちまった。そしてまたマントが少しやぶけちまった。コンチクショー!
受け身を取って体勢を立て直すと、改めて怪獣の尻尾の先に波動砲が付いているのが分かった。まさかの2つ目の波動砲だよ。
尻尾を持ち上げて、先端の波動砲を頭の左横側から覗かしている。そして怪獣は口も開いた。……おいおい、嫌な予感がするぞ。
「ま、まさか……それは無いよ………………な?」
残念だが無くはなかった。嫌な予感は的中したよ。
怪獣は口と尻尾の両方で、波動砲を撃って来やがったんだ。
つまり、2連射だ。
「うぎゃぁあああああ―――ゲフッ!」
直ぐに逃げようとしたけども逃げ切れなかった。怪獣の波動砲はギリギリ躱せたが、衝撃波に煽られて吹っ飛ばされたんだ。
受け身をとって素早く猛ダッシュするが、流石にダイの脚力だけでは躱せそうにない。
怪獣は口と尻尾の波動砲を同時に撃っている訳じゃない、相互に撃っているんだ。そうやって発射間隔をカバーして、擬似的にフルオート連射している。
波動砲のフルオート連射とか、マジで死ねるぞ。
「か、躱し切れない……ブースト!」
満を持してダイはブーストを起動した。あの波動砲を躱すにはブーストを使った高速機動しかない。
ブーストを30%解放したら、怪獣の波動砲も何とか躱せるようになる。しかしこれも長くは持たないだろうな。
30%でも完全電力式のブースターだ、エネルギー切れを起こしたら暫く使えなくなる。それまでにこの波動砲フルオート連射を何とかしねぇーと詰むぞ。
「し、尻尾の方は……破壊できるよな?」
確かに、口と違って尻尾の波動砲は砲門が丸見えだ。ライフルで狙い撃てば破壊できるだろう。
よくよく観察してみれば、尻尾の波動砲が口のものと異なるのはそれだけじゃない。連射性は同じだが、威力においては口の波動砲に大きく劣る。
おそらく地下5階で遭遇した恐竜の波動砲と同格程度、着弾時の衝撃波もそこまで大したことない。口がメイン波動砲なら尻尾はサブ波動砲と言ったところか。
ならサブ波動砲に狙いを定めて破壊しよう。ブーストがまだ使える間に。
「レーザー!」
ダイは全力疾走しながらレーザーCIWSを撃つ。床に散らばっている手榴弾目掛けて。
手榴弾は3個1セットのポッドに固定されているものだが、床にはポッドに固定されていない単体の手榴弾がチラホラと転がっていた。
この手榴弾を狙ってダイはレーザーで破壊する。そうすれば手榴弾は勿論爆発、そして大量の煙を巻き上げた。
そう、これは発煙弾だ。武器を詰めたコンテナには発煙弾も入れておいた、ダイのもう1つの秘密兵器だ。
攻撃手榴弾と見分けがつくようにポッドから外して、床に散らばったところをレーザーで破壊すれば、忽ち煙幕が出来上がる。
発煙弾を見つけた時、これは使えると直感した。
発煙弾の煙はどんなに舞い上がっても十数メートルしか上がらない。イングリッドの身は隠せても怪獣の頭は隠せないのだ。
これでジャマーをスポット照射すればイングリッドはレーダーにも映らない。怪獣はダイの姿を見失う事になる。
「レーザー! レーザー!」
それから何度も発煙弾を爆破して地下3階を煙で充満させていく。
怪獣の波動砲で吹き飛ばされそうにもなったが、如何に広いと言えども密室空間だ。行き場のない煙は滞留して結局は視界を塞ぐ事になるのさ。
ジャマーを展開してレーダーからも、姿を消す。煙に包まれようとも怪獣の姿は丸見えだ、その巨体が仇となった、怪獣。
そして尻尾も丸見えだ、狙い撃ちするには十分だぜ。
それに対し怪獣はこちらを見失ったらしく、波動砲を撃って来ない。この隙に新しい武器を使う。
[OSV-996 90mm対重装甲狙撃ライフル]
所謂スナイパーライフル、または狙撃銃だ。90mmは歩兵機が扱える限界の威力であり、歩兵機の携行実弾火器としては最大級の威力を持つ。
まぁ今回は威力よりも命中精度を重視してるんだけどな。狙撃銃は射撃精度も良く、弾速も非常に速い。しっかり狙い撃てば当たらないと言う事は無いだろ。
だからダイ、こんな所で外すとか間抜けな事をするなよ。これ振りじゃねぇーからな。なっ!
「………………ぐっ」
しかし外す前からダイは当てられなくなった。怪獣は尻尾の先を上に向けたんだ。
尻尾の波動砲は正面こそがら空きだが周囲は外装に覆われている。正面からでないと砲門は狙えない。
それを上に向けて正面から撃たせないようにしやがったんだ。この怪獣、自分の弱点を把握してやがるな、これじゃあね狙えねぇーぞ。
しかしダイが躊躇ったのはほんの一瞬の事、直ぐに狙いを変えて発砲した。何処へ撃ったかって? 天井だよ。
忘れたかもしれねぇーが、ダイは跳弾撃ちも得意だ。天井を狙って跳弾で尻尾の砲門に当てようとしたのさ。その弾が跳弾すればな。
「あれ?」
ぶっちゃけ跳弾していればダイの狙撃は命中していたと思う。跳弾撃ちという不確かな狙撃を、ダイはほぼ百発百中で命中させる程の技量があったんだ。しかし、跳弾はしなかった。
狙撃した弾が、そのまま天井にめり込んでしまったからな。
どうやら天井は柔らか目の材質みたいだ。弾が跳弾するには、ある程度の硬度が必要だが天井にはそれが無い。つまりこの階層では跳弾撃ちが使えねぇ。
そして今の狙撃でダイの位置が怪獣にバレてしまった。既にこっちを見てロックオンしてらっしゃる。
「ヤバ……」
すかさず怪獣が撃ってきた。狙いが定まっていないのか、口と尻尾の2発同時発射で撃ってきた。
これは、死ねってか?
「うぎゃあああああ!」
直ぐさま飛び退いて煙の中に逃げ込む。これでまた怪獣は見失う筈だ。
暫く怪獣は波動砲を連射していたが、狙いは見当違いなとこばかり。これならうっかり直撃コースにいても容易に回避できる。
「狙撃できない。跳弾も使えない。だったら、もう最後の手段に出るしかない……プランC!」
ここでダイは最後のプラン、Cに出る決意をした。
その内容は怪獣に接近して巨体に取り付く試みだ。怪獣に取り付いて直接叩く、非常にシンプルで分かり易い方法である。
多少のリスクは覚悟しないといけないが、怪獣に取り付けばあの厄介は波動砲は当てられねぇ。砲撃に特化した機体は至近距離こそ弱点に他ならねぇーんだ。
「ブースト、70%解放!」
ブーストを一気に70%まで解放して跳躍、怪獣の肩に飛び付く。
怪獣は完全にダイを見失っている。取り付くなら今しかない。
「怪獣、取り付いてやったり―――うぎゃぁあああああ!」
何ぃぃぃぃぃ!? 弾かれただと!!?
肩に飛び付こうとした瞬間、何故かダイは弾かれてしまったんだ。しかも弾かれた瞬間、ダイはぞわっとした感覚に見舞われた。
これはつまり……そう言う事かぁ!?
「は、波動シールドの装甲!?」
ああ、ああ、そうかよ。おかしいとは思ってたよ。いくら何でも装甲が硬過ぎなんじゃねぇーのかって最初からずっと思っていたよ。超速球手榴弾も125mm滑腔砲も無傷で受け流すなんて常識外れだと思ってましたともよ。
案の定これかぁーい!!
波動シールドと同じ、波動で衝撃を緩和する超堅牢な波動の装甲……波動装甲ってか? てかそんなの有りってか、おぉーい!?
どうなってんだよ、怪獣。口の波動砲に尻尾の波動砲、おまけに全身波動装甲で覆われてるって、どんだけ波動兵器を詰め込んでんだよ!
波動兵器のオンパレードじゃねぇーか! 波動兵器で堅めた要塞そのものだろ、これ!?
どうするんだよ、流石にこれは想定外だ。波動装甲で覆われた巨大歩兵機なんてどうやって倒すんだよ。
今までとは訳が違う、武器が全く通じないんだぞ。
「ヤバ……ヤバ……ヤバ、ヤバ、ヤバ、ヤバ、ヤバ、ヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバ!!」
しかもダイまでメンタル崩壊寸前に追い込まれてしまってる。
ヤバ、これ詰んだ。
怪獣観察日記その2
長い尻尾の先にはもう1つ波動砲、多分恐竜と同じものだと思います。
外装は全部が波動装甲で、攻撃が何一つ通じませんでした。
これでSWEMブースターもあったら完璧なんだけど、それは無いと信じたいです。
お終い。
『……恐い事言うなっ! 怪獣にSWEMブースターとか想像しただけで死ねるわ!』




