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第55話 マクシミリアン・ダオスロードは背中を押すことしかできない……つまり役立たずか……うるせぇー!

ダイ視点

 あれから色々悩んだ末に、俺は地下8階の拠点に戻って来ていた。


 出口が見当たらなかった事もあるけれど、それ以上にこのプラントの不気味さに堪えたのがここへ戻って来た一番の理由だと思う。


 このプラントは一体何なんだ? 人が忽然と姿を消していて、当たり前のように現代技術では考えられない無人機が徘徊している。


 それに“敵”と言う存在にしたって何も分からないし、このプラントとどう言う繋がりがあったのかも分からない。分からない事だらけなのが不気味で恐ろしい。


 挙げ句の果てには眼帯野郎。あいつはどうして自殺なんかした? あいつには雪辱を果たす相手がいたんじゃないのか?


 一応あのフロアをまた調べ直してはみたけども。でもやっぱり人が通れるような道も、隠し通路とかも一切無かった。ならば眼帯野郎は自殺したんだ。それしか考えられない。


「何で、自殺なんかするんだよ……死んだら終わりじゃないか」


 別に眼帯野郎に死んでほしく無かったとか、そんな思いがあった訳じゃない。


 そもそも眼帯野郎は俺を殺そうと襲ってきた相手だし、それに日向さんを誘拐した悪人だ。死なれて困るような相手では無いけど。


 でもだからって死んで喜べる程、俺も冷淡にはなれないよ。誰であっても死なれるのは嫌だ。


 嫌だからこそ、俺はこのプラントが不気味でならない。人の生き死にが些細な事でいつでも起こり得る、そんな非人道的な事がここでは許されているようで、だから不気味で恐ろしいんだ。


 出たい。一刻も早くここから出たい。出たいけど、でも出口がない。


 どうしたらいいんだ。どうしたら……。


『―――随分と参ってるみたいだな、ダイ』


「……マックス?」


 気がつけばモニターにMの一文字(ひともじ)が表示されていた。


 随分と久しぶりな気がする。マックスと最後に話したのっていつだったか……ああ、あのくだらない恋バナをした時だ。


 あのくだらない恋バナから、もう2ヶ月も過ぎていたのか。どうりで久しぶりな訳だ。


「随分と間があったな、かれこれ2ヶ月も音沙汰無しで。何かあったのか?」


『別に。お前が順調そうだったんで、口を出す必要も無いと思っただけだ。ひょっとして、心配してくれたのか?』


 心配して無かった、と言えば嘘になるけど。でもそれ以上にマックスには聞きたい事がたくさんあった。


 と言うか今まさに聞き出さなきゃならない事があるんだ。


「マックス、俺をこのプラントに連れて来たのはお前だよな?」


『そうだな。俺が遠隔操作でイングリッドを操縦して、このプラントに連れて来た。それに関しては言い訳しねぇーよ』


「だったら、出口を知っていた筈だ。何故教えなかった?」


『それは言わなくても分かるだろ。この2ヶ月間、お前はプラント中を探索して出口を見つけられなかったんだ。ある一箇所を除いてな。それが答えだ』


 出口は怪獣のいる地下3階、そこを通る他に無いと言うのか。でも、もしそうだとしたらどうやって……。


「マックス、お前はどうやって俺を地下4階まで連れて来た? 怪獣のいた階層を無事に通過するなんてできないだろ」


 いくらマックスでも怪獣相手に無傷ではいられない筈だ。怪獣との戦闘を避ける何かしらの手段を使ったに違いない。


『確かに無理だ。遠隔操作じゃ操縦は覚束ないし、あの時は装備も(ろく)になかったからな。そんな状態であの怪獣とやり合うのは無理があるさ』


「じゃあどうやってやり過ごした? やっぱり別ルートがあるんじゃないのか?」


 そう考えるのが自然だ。マックスは地上に出る為のルートを最初から知っていたんだ。知っていて、それで敢えて黙っていたんだ。


『さて、それはどうだろうな?』


 やっぱり、マックスは教えようとしない。出口を知っているのにそれを教えようとしないって事は、俺がこのプラントを出られては困るからか。


「教える気が無いんだな。俺にここを脱出されたら困る事があるから」


 そもそもマックスが俺をここに連れて来たと言った時から気付くべきだったんだ。俺をここに閉じ込めた張本人がここから出そうとしてる訳が無いって。


『さぁーな。教えようが無いのかもしれないぜ。実は俺にも分からねぇー、とかな』


「それは絶対嘘だ」


 そんなチープな嘘に騙されると思ってるのか? それともバカにしてるのか?


『んじゃあ聞くがダイ、俺がその解答に答えるとして、お前は俺に何を答えてくれる?』


「……どう言う事だ?」


『俺がお前の知らない事を教えるとして、お前は俺の知らない事でも教えてくれるのか?』


 それは……無理だ。マックスの知らない事を俺が知ってる訳無いし。


『一方的に聞き出そうとするなんざフェアじゃ無いぜ。まずは取引材料を提示してみせるんだな』


「俺は……相棒じゃなかったのか?」


『都合のいい時だけ相棒扱いしてもらおうとは図々しいんじゃないかい? それに相棒ってのは互いに協力し合いもんだ。一方的に協力させるだけなら、そりゃただのパシリと同じだぜ』


「俺がここを出られないと……マックスも助けられないぞ」


『相棒に脅しはよく無いな。それに、それは脅しにならねぇーぜ。最初に言ったと思うが、自分のことも碌に守れないような奴に助けてもらおうと考える程、俺は愚かじゃないんだよ』


「だったら……どうして俺をここに連れて来た!?」


 勝手に連れて来て、後は勝手に何とかしろって……そんなの無責任だろ!


 俺は望んでこんな所に来たんじゃない。連れて来た理由があるなら、最後まで連れて来た責任を持て。


『それは、言わなくても分かってる事だろ。だがそうだな、俺だって申し訳ないとは思ってるさ。だからアドバイスは出してやったんだ』


「ならアドバイスとして解答を聞かさせてくれ。怪獣と戦わずにこのプラントを出る方法は何なんだ?」


『言ったろ、そりゃフェアじゃないってな。アドバイスはフェアであるから意味があるんだよ』


「そんな―――」


『それにな、ダイ。もう答えは出てるんだろ』


 ……何を言っている? 答えが分からないから聞いていると言うのに。


『いいや、分からないんじゃない。分かり切った解答を受け入れられないから、逃げ道を探しているんだ。違うか?』


 違う、本当に分からないんだ。だって、それじゃ……!


『残念だが逃げ道はねぇーぜ。お前に残された道は、1つしかないんだ』


 嘘だ。マックスは知っている、その……逃げ道の在り処(ありか)を。


 そうさ、逃げ道だよ。逃げて何が悪いんだ? 俺は望んでこんな事になってる訳じゃ無いんだ。


 そもそも、俺は十分戦った。戦ってきた筈だ。これ以上何とどう戦えって言うんだ。逃げたっていいだろ、俺には逃げる権利がある。


『逃げるのは構わないさ。しかしな、追い詰められたら逃げ場は無くなるんだぜ。ダイ、今のお前みたいにな』


「だから戦え、と。戦って死ぬしか、俺には残されて無いと……そう言うのかよ」


『それはお前次第さ。言ったろ、お前はもう歩兵機を棄てられないってな。だからな戦え、ダイ』


 最初のアドバイス……マックスが戦えと言った事の意味は、こう言う事だったのか?


『戦って戦って戦って、行き着く所まで戦え。お前にはもう、それしか無いんだよ』


 それで俺が死んだら、マックスはどうなる?


 自分自身を助けてほしいが為に俺をここへ連れてきたんじゃないのか? 俺が死んだらそれも叶わなくなるだろ。


 それとも代わりがいるのか? 俺の代わりは、他にいくらでもいると、そう言う事なのか?


『俺はお前の相棒だ、お助けマンじゃねぇーんだよ。差し伸べる手は出してやれないが、それでも背中を押す手は出してやれる。だから聞け、これが最後のアドバイスだ』


 手は差し伸べないけど背中は押してやるって、結局は強要してるだけじゃないか。


 本当に無責任で勝手な奴だ。そんなマックスから最後のアドバイスって、もうこれでアドバイスは終わりなのか。


 どうしてそんな突然に、と思わなくも無かったけど。でも俺は、どうして最後のアドバイスがそれなんだって言う不満の方が大きかった。


 マックスの最後のアドバイス。それが何なのかは聞く前から、もう分かっていたからだ。


『ダイ、覚悟を決めろ―――』


 ―――ブツ


 それを皮切りに、マックスの通信は切れた。


 最後のアドバイス、そう聞くともう通信は来ないのかもしれない。これが最期の通信でもあったのか?


 その最後の通信で最後のアドバイスが……


「覚悟を決めろって……何の覚悟だよ?」


 不満を抱えて文句をたれるけど、マックスが何を言わんとしているかは分かっていた。俺に何をさせようとしているのかも。


 そりゃあ、今のこの状況を考えたら俺にできる事はもう1つしか残されていない。それに覚悟を決めろと言っているんだ。


 でも俺には無理だ。そもそもただの高校生の俺に何が出来るって言うんだ。


 今までだって、ただ運が良かっただけかもしれない。でも今度ばかりは運でどうにかなったりはしない、それは素人目にも明らかだ。


 死ぬ。今度こそ死んでしまう。だから、死ぬ覚悟をしろってか? そもそも死ねってか?


 何でだよ……どうしてこうなった? あの時、崖の下で歩兵機を見つけてしまったから……いや、違う。見つけたまでは別に問題じゃない。


 問題はその後、俺は興味本位で歩兵機に乗ってしまったから、だから今こう言う状況に陥ってしまっている。


 本当に何て事をしてくれたんだよ、俺の馬鹿野郎。


「……うがぁあああああああああああああああ!!」


 もういい、止めだ止めだっ! 俺は()めるぞ、全部止めるぞ、絶対に止めてやるぞ!!


「もう止めだ! 俺は止める事にした!! 止める覚悟を決めたぞ!!! 分かったな、マックス!!?」


 これでいい、何もかも止めてしまえばいいんだ!


 大体マックスの口車に乗る必要なんか無いんだ! マックスが勝手気ままなら俺だって自分勝手にしてやるさ!!


 どうしようと俺の勝手だっ! だから俺は止める! もう止めにする!!


「俺は……止めてやるぞぉぉぉぉぉ!!!」






 考えてみると、ここに来るのは3ヶ月ぶりになるのかな。


 あれから色々あった。200もの四本脚に追い詰められたり、出っ腹に囲まれたり大頭無しに襲われたり、特に木乃伊(ミイラ)になるまで空腹に苦しめられたのには堪えたな。


 極め付けは恐竜だろう。木乃伊化した状態で恐竜8機を相手にさせられたのには参った。


 お陰でげっそり痩せたし白髪も出てきた。得られたものもたくさんあったけど、一生分の苦労を一気に味わったようで思い返すのも嫌になる。


 まぁそれでも、お前に比べたらずっとマシだったと再会して改めて思い知らされたよ。


「久しぶりだな、怪獣」


 怪獣。地下3階を統べる規格外の歩兵機。


 その大きさ、約40……いや、45mはあるな。その装甲は四本脚のガトリングガンをものともしない。更には一撃必殺の波動砲まで内装した超凶悪戦闘歩兵機。


 地下3階にやって来た時点で、怪獣はいつからそこに立っていたのか俺を出迎えるようにそこで佇んでいた。相変わらずの凄まじいプレッシャーを放って。


 3ヶ月経って俺も幾分成長したと自負しているけれども、やっぱり怖いな。


 地下3階の入り口を通った時から身体が震え出していたし、今もこうして相対するとちびりそうになる。スゲェー怖い、前以て出しておいてよかった……。


 怖い。言葉にならないくらい怖い。処刑台に立たされる怖さって、多分こう言うものなんだろうな。


 怖くて今直ぐにでも逃げたしたい気持ちだけど、怖くて足がすくんで動けない。なんとも情けないな、俺って奴は。でもな、怪獣。俺はもう止めにするって決めたんだよ。


 うじうじするのはもう止めにするって決めたんだよ。


 マックスに触発されたからじゃない、みっともない自分に嫌気がさしたんだ。いい機会だから今までの自分を綺麗さっぱり止めにしてやったんだよ。


 これからは堂々としてやる。堂々として、お前を潰してやるぞ。


「さぁ、潰し合おうぜ。お前は俺の敵だ!」


 ガァー―――。


 まるで待ち侘びたとでも言っているように唸る怪獣。無人機にしては粋な事をしてくれる。やはり同じ無人機でも、お前だけは別格と言う訳か?


 いいさ、これが今までの俺を止めにする、運命の決戦だ。存分に楽しもうぜ、怪獣よぉ!

客観的に見るとこれって……やけくそになっただけじゃね?


ヤバァ……

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