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第54話 プラントには魔物が住んでいる……寧ろプラントが魔物じゃん

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「…………」


 結論から言ってモヒカン頭無しは全滅した。今のダイなら敵にならない相手だからな。


 だが、全滅したモヒカン頭無しの死骸は当初推測していた8機ではなかった。


 全部合わせて……24機もいた。


 多過ぎだろ、3倍になってんじゃねぇーか。


 まぁ3倍に増えたところでダイが追い詰められるような事は無かったんだがな。


 しかし24機、当初の3倍もいたとなると、まだ他にも何処かに潜んでるんじゃないかと警戒したくなる訳よ。


 何分相手は見えないしレーダーにも映らない相手だからさぁ。いつ何処で奇襲されるか分かったもんじゃないんだし。


「……流石にもういないか」


 かなり慎重になって周囲の気配を察知してみること1時間、モヒカン頭無しの気配も無くなって漸く安心できるようになった。


 しかし24機かぁ。一体全体なんだってこのフロア1つにモヒカン頭無しが集中してやがんだ? このフロアがモヒカン頭無しの製造場所だったのか―――


 ―――ざわざわっ


「まだいるぅぅぅぅぅ!!」


 まだいたんかい! しかも1機じゃねぇーし! いい加減にしろよ!!


 ダイはお馴染みのジャマーでモヒカン頭無しを静止させつつ、持った来たハンマーで叩き潰した。


 予想外の数でな、ライフルの弾もかなり消費したんでなるべく節約しようと途中からハンマーを駆使するようになったんだが、しかしこの作業用ハンマー、意外と使える。


 ナイフと違って小回りは効かないけど、イングリッドの馬力で振るえば頭無しを叩き潰すくらい訳なかった。


「はぁ、はぁ、も……もう出て来ないよな?」


 俺もそう願いたい。今の追加で更に3機、計27機じゃねぇーか。


 どんだけいるんだよ。いや、マジで。


「……行こう。これ以上時間を無駄には出来ないし」


 ダイは警戒しつつもフロアの調査に出た。確かにこのままじっとしてても埒が明かない、ここは行動を起こすべきだ。


 さてさて、フロアの機器は滅茶苦茶に破壊され尽くしているけど、通路のどこかが埋まっているような事はない。


 ドーナツ状のフロアだからな。通路があれば直ぐに分かると思うんだが、しかしザッと見渡した限りそれらしいものはない。


「取り敢えず適当に移動してみるか。……いや、適当じゃダメだ。ちゃんとフロアの壁一つ一つを調べて見ないと」


 おっ、分かってきたじゃんか。


 ダイも賢明な判断ができるようになってきて、壁伝いにフロアを調べていく事にいた。ここで適当にやったら墓穴を掘る羽目になるだろうからな、多分。……いや絶対。


 ドーナツ状のフロアなら外側と内側を沿って行けば壁全体を調べられる。そうすれば見付かる筈だ、上の階層に通じる通路が。


 一応は人しか通れない通路とかも無いか隈なく探しておくとしよう。歩兵機が通れない道はない筈だけど、念の為な。


 それに壁の様子も一つ一つ確認しておかなければならない。眼帯野郎の時みたく隠し部屋なり隠し通路なりがあるかもしれんし。


 かなり手間のかかる作業だが地道にやっていくしかないだろ。どうせ時間はいくらでもある―――


 ―――ぞわっ


「まだいたのかぁぁぁぁぁ!!」

 まだいたのかぁぁぁぁぁ!!


 慌てて迎撃したけど、現れたのはやはりモヒカン頭無しだった。一体どんだけ出てくるんだよ。いやいや、マジで。


 ついでにモヒカン頭無しの警戒も怠ってはいけない。これで終わりと言う事でも無いんだろうし、警戒するに越した事はないし。


 手間はかかるが仕方ない。滅茶苦茶気が遠くなるが、マジで地道にいこう。


「……はぁ。憂鬱」


 言うな。俺だって憂鬱だ。






 それから数時間が経過してフロアの調査は終了した。気が遠くなって何度か寝落ちしかけたけどな。


 まだ現れるだろうと予想していたモヒカン頭無しだが、それ以降現れる事はなかった。思わぬ肩透かしで無駄に警戒したから気力だけ消耗してしまった。


 一体何なんだ、あいつらは。もう現れないと思ったら現れるし、また現れるかもと思ったらもう現れないし。天邪鬼か? 天邪鬼なのか?


 まぁモヒカン頭無しの奇襲が無くなったのは喜ばしい限りだが、しかしまだ調べていない壁ももう無くなったんだ。


 フロアの壁一つ一つを隈なく調査して、その結果隠し通路も抜け穴とかも何も無い事が分かった。


 ドーナツ状になったフロアの外側と内側の壁、それらを3回程調べ直したにも関わらず、通路のようなものは見つからなかった。


 つまり、完全に行き止まりなんだ。このフロアは。


「バカな……」


 あり得ないだろ。あれだけ丁寧に調べ上げたと言うのに通路が見つからないって。


 まさか通路が存在しないって事は絶対にない。眼帯野郎はここを通って何処か、おそらく地上に出た筈なんだ。


 通路が存在しないなら、眼帯野郎もここから出られないだろ。


 ならどうして見つからない? 念の為に床や天井なんかも調べ尽くしたけど、それらしいものは全く見つからなかった。


 一体どうなってんだ、このフロアは?


「はぁぁぁ……どうしよう。眼帯野郎、一体何処へ逃げたんだよぉ〜!」


 言ったって仕方ないだろ、眼帯野郎はここにいねぇーんだし。


 しかし本当に謎だ。まるで転移か瞬間移動でもしたのかのようだぞ。まぁそんな事できる訳無いとは分かってるけどな。


「……いや、転移装置ならあったのかもしれない。このフロアに」


 ある訳ねぇーだろ、そんなもん。アニメの見過ぎだ、馬鹿野郎。


「だから眼帯野郎はここを滅茶苦茶に破壊したんだ。転移した後、俺が追って来れないように時限爆弾か何かを使って転移装置ごと破壊する必要があった」


 だからある訳ねぇーだろって。しかしここを滅茶苦茶に破壊し尽くした理由としては一理あるかもな。


 眼帯野郎は何らかの手段を用いてここを脱した。そしてダイが追って来れないように……と言うよりダイをこのプラントに閉じ込める為に脱出手段諸共このフロアを滅茶苦茶に破壊した。


 確かに、辻褄は合うな。しかしだとしたら、もうダイに脱出手段は無いって事だぞ。


 つまり詰み、じゃねぇーか。どうすんだよ、ダイ。


「……この散乱してるパーツとか残骸とか、修理できないかな?」


 いや、無理だろ、それ。


 てか修理してどうにかなる程度に留めておくような事、眼帯野郎ならしないと思うぞ。奴なら徹底的に破壊するだろうし。てか破壊され尽くしてるし。


 しかし手掛かりが無い現状を考えると、この散乱している物体から何かしらのヒントでも見つけたいところではあるな。


 そうしてダイは床に散乱している物体を物あさった。所謂ゴミあさりだな、こりゃあ。


 しかしヒントみたいなもの、そんなものがあっても眼帯野郎が手掛かりを残すようなヘマをするとは思えないけどな。


「………………ん?」


 するとゴミあさりの最中、ダイは1つの部品に目を止めた。


 思わず目を止めたの部品は……何と言うか、見覚えのある形だったからだ。


「あれ? これって……」


 その部品はイングリッドから見てボーリング球程の大きさだったが、しかし球体ではない。


 凡そ球体に近い形状だが、かなり独特の形状で一度見たら忘れないと思うような物体だ。


 気になったダイはそれを手に取って見ると―――目が合ってしまった。


 そいつの目が、ダイを見ていたんだ。


「うぎゃぁあああああ!!?」

 うぎゃぁあああああ!!?


 恐ぇーよ! いきなり目と目が合うとか洒落にならねぇーよ!!


 てか目が合うってどう言う事だよ! 一体ダイは何を拾ったんだよ!?


 冷静になってもう一度よく見ると、それは歩兵機の頭部だった。少しひしゃげているけど、ちゃんと目に当たるカメラアイがある。


 しかしその頭部は無人機の物では無い。モヒカン頭無しはそもそも頭が無いとして、四本脚や出っ腹など如何なる無人機とも違うものだ。


 もちろんイングリッドのものでも無い。しかしダイにとっては非常に見覚えのある歩兵機の顔だった。何故ならそいつは―――


「が、眼帯野郎!?」


 そう、そいつは眼帯野郎の顔だった。左目の眼帯のように見えるバイザーは見間違えようが無い。


 しかし何故、眼帯野郎の生首……じゃなくて頭部がここに転がっていた? 眼帯野郎はここを経由して地上に出たんじゃないのか?


「まさか、誰かにやられたのか? ……いや、それは無いか」


 確かに、ここにはモヒカン頭無ししかいなかったんだ。他に敵はいないし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 なら眼帯野郎はどうしてやられた? いや、やられたんじゃないとしたら……まさか!?


「じ、自殺した!?」


 或いは機体を捨てて自爆させたか。しかしそれだとパイロットが何処へ逃げたかが分からなくなる。


 フロアを隈なく探してみたが、人が通れる所だってありはしなかった。機体を捨てたとしてもパイロットが見当たらないのは変だ。


 それにモヒカン頭無しだっている。機体を捨てて身一つで30機近くのモヒカン頭無しから逃れられるとも思えない。


 ならばダイの言う通り、眼帯野郎は自殺したのか? 機体諸共自らを爆破し、手掛かりに繋がる痕跡を完全に消す為に。


「バカな……狂ってる」


 信じられないと言う様子のダイだが、しかし任務の為なら自分の命も顧みない。そう言う無情な兵士は実際に存在するんだぜ。


 と言ってもまだ決まった訳でも無いけどな。眼帯野郎はやっぱり機体を捨てて何処かに隠れている可能性も無くはないんだし。


 だが、もしも眼帯野郎が機体諸共自爆したと言うのなら、どうしてわざわざここまで来たんだ? 自爆するならダイに追い詰められた時にすればいいものを。


 まさか……外部との通信か?


 フロアの中を調べた際にでっかいモニターのようなものも見つけた。既に破壊された後だったが、自爆する前にあれで地上の仲間と連絡を取り合ってたとか?


 ……あり得る。このプラントは電波が届かないからネットワークも電話回線も繋がらない。しかしあのモニターは別で、唯一このプラントでの連絡手段だったのかもしれないな。


 眼帯野郎は死の間際に、仲間へ最期の報告したと言う訳か。大した奉公人根性だぜ。


「……だとしても、死ぬ必要なんて無かった筈だ!」


 しかし冷静に分析する俺と違って、ダイは感情的になっていた。眼帯野郎の自爆自殺がそんなにショックだったのか。


 でも考えてみればそうだな。自殺にしても機体を捨てたにしても、そうする理由が見当たらない。何故なら眼帯野郎は……“敵”だった筈だからだ。


 “敵”、眼帯野郎は美女軍団よりも強大な組織に属していて、“敵”のアジトであるこのプラントに当たり前のように出入りしてる様子だった。


 そして何より、ダイは“敵”に目をつけられていた。俺がそう言った事だが、なら“敵”はいつから目をつけられていた?


 決まってる、眼帯野郎との最初の一戦だ。


 それらを全て考えれば、眼帯野郎は“敵”だったと言う事実は自ずと辿り着く。


 ならモヒカン頭無しを含めた無人機は“敵”の勢力、即ち眼帯野郎の味方だ。味方がいるなら例え機体が半壊してようと自爆する必要はないだろ。


 だったら何故眼帯野郎は自爆した? 命を賭してまで、眼帯野郎は一体何をしようとしたんだ。


「おかしい……何もかもおかしいよ! 一体何でこんな事になるのさ!?」


 本当に嫌な感じだぜ、知れば知るほど分からなくなっていく。まるでプラントの底無し沼に嵌ってしまった気分だ。


 或いは、このプラントそのものが1つの魔物のような存在なのかもしれない。一度手を出したら何処までも闇に飲まれていくかのような形容し難い魔物のプラント。


 ひょっとしたら俺は、ダイをとんでもない所で連れて来てしまったのか? ここは俺が想像してたよりも、ずっとヤベェ―場所だったんじゃないのか?


 どうする? 今更取り返しはつかねぇーぞ。 こんな得体の知れないプラント相手に……俺はどうしたらいいんだ?


「……知るかよ、馬鹿野郎」

しかし眼帯野郎はここで大破したんだから、もういないって事だよな。まさか実は地上に出て大暴れしてるなんて事は無いよな。……無いよな?

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