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第53話 エンヤ~コ~ラ~上へ参りま~す

 システム補助52%


 それからダイは黙々と撤去作業に勤しんでいた。


 隠しフロアの地下6階に位置するフロアの一角、以前眼帯野郎と激しい戦闘を交わしたこの場所には眼帯野郎が逃げたエレベーターがある。


 エレベーターは見事に破壊されて、入口は破損した瓦礫で埋もれていたがな。しかしこの瓦礫を撤去すればシャフトは開通する筈。そうしたら上へも行けるだろう。


 そんな訳でダイは持ち込んできた歩兵機用のハンマーで瓦礫を掻き出していた。かなり地味な絵面なんで撤去作業の様子はダイジェストで済ます。異論は認めん。


「父ちゃんのためならエンヤ~コ~ラ~♪」


 だってダイの奴、気楽に鼻歌なんか歌ってやがるんだぜ。これをいちいち事細かに説明してたら気が遠くなるから勘弁してくれ。


 そうそう、この隠しフロアの事だけどな。眼帯野郎は壁が開いた向こうから現れたんだけど、他にも壁の向こうに隠しフロアがないか調べてたらな、たくさんあったんだ。


 てかな、この隠しフロアを全部繋げたらドーナツ状の円環フロアに繋がったさ。俺達がいたフロアはその一角に過ぎなかったんだな。


 この分だと下の階層の隠しフロアも同じようになっているかもしれない。後で調べておく必要がある。


 んで、調べて見付かった隠しフロアにはな、出っ腹だとか煙突人間だとかの無人機が製造されてたんで、徹底的に破壊しておいた。手応えが無くなってきたとは言え、無人機には増えてもらうと困るのでな。


 これでまた無人機の出没が少なくなると思うとちょっとばかり寂しい気もするが、しかしいつ出られるか分からないプラントではなるべく安全を確保しておかないとならない。


「母ちゃんのためならエンヤ〜コ〜ラ〜♪」


 それで隠しフロアもあらかた調べ尽くして、特に通路らしいものも見つからなければエレベーターや階段みたいなものも見つからなかった。


 つまりところ、この瓦礫を掻き出してシャフトを開通するしか他に道はないってこった。


 誠に地味な作業で申し訳ない限りだが、しかしこればかりはコツコツやっていくしかない。


 デカいショベルカーとかクレーン車とかでもあったら楽だったかもしれないけど、生憎この隠しフロアにそんな便利なものは無かった。


 結局、手で掻き出すしかないんだよな、これが。


 しかしこの瓦礫、掻き出しても掻き出しても出て来るんだけど、どういう事?


 まぁ、普通に考えたらシャフトの中が瓦礫でギッチギチに埋まってるんだろうけど。これを全部掻き出せるまで一体どんだけかかるんだ?


 既にもう3時間くらい作業を続けてるのにだぜ。


 本当にこれ、いつになったら終わるんだよ。一日中って事にはならないでくれよ。


「姉ちゃんのためならエンヤ〜コ〜ラ〜」


 歌詞を勝手に変えるな。


 てかダイの奴、どこでヨイ◯◯ケの唄なんぞ覚えやがったんだ? 世代じゃねぇーだろ。


 ……まぁ鼻歌はいいとして、これがいつまでも続くと思うと気が滅入る―――


「もうひとつおまけにエンヤ〜コ〜ラ〜……あ、開通した」


 って、言ってたそばから開通するんかい。


 まぁやっと開通したんだからいいけどな。これでやっと上に行ける。


 上、この隠しフロアの上は地下5階に相当する。果たしてこの先に地上への出口があるのか……いや、無い事はないだろ。


 眼帯野郎はこのエレベーターを使って地上に逃げた筈なんだから。少なくとも怪獣のいる地下3階を回避する何かしらのルートがある筈なんだ。


 とにかく今はそこへ向かわないとな。眼帯野郎が通ってきた道ならイングリッドでも通れるだろうし。


「早速行こう。フックランチャー!」


 ダイはイングリッドの両腕からフックランチャーをシャフト内の上に向かって撃ち込み、ワイヤーを張ってシャフトの壁に足をついて昇っていく。


 シャフトの上を見る限り一階層分の高さだ、この上が地下5階相当なのは間違いないな。そこからあと5階層分上がるのか。それもなかなか気が滅入るな。


「……でも待てよ。ここって眼帯野郎が通った道なんだよな。って事は、まさかこの上に眼帯野郎が待ち構えてるとか……」


 いや、それはねぇーだろ。あんだけボロボロになってりゃ急いで撤退するもんだぞ。


 まぁあれから2ヶ月が経過してるからな、仮にリフレッシュして再び挑んでくる事があったとしてもわざわざ来るかどうかも分からない隠しフロアで待ち構えてるような事はしないだろ。


 俺だったら待たねぇーで探しに行くな。けど眼帯野郎の捨て台詞だと―――


『ここでダオスロード共々、のたれ死ぬがいい!』


 ―――この口振りから察するに眼帯野郎は完全放置を決め込むつもりのようだ。待ち構えてると言う事はまず無いよな。


 ただし、それは眼帯野郎に限った話であって無人機が待ち構えてないとは限らないけど。


「ゲッコー」


 ダイはシャフトの出口に近付いたところで小型カメラロボットのゲッコーを出し、イングリッドの頭の上に乗せた。


 そしてカメラの頭を伸ばしてシャフトの出口から中の様子を確認する。ここで不用心に中へ入る程ダイはポンコツでは無くなったんだよ。


 それでゲッコーの(カメラ)で見たフロアの中は―――


「うわぁ……」


 ―――何と言うか、滅茶苦茶だった。


 フロアは壁で区切られることも無く既にドーナツ状に広がっていた。本当は壁で区切られていたんだろうけど、爆破か何かで全部吹っ飛んでしまったんだろうな。


 そう、爆破だ。このフロアは完膚なきまでに爆破され尽くしていた。


 ここも下のフロアと同様に無人機のパーツか何かを製造していたのだろうけど、それも見事に破壊され尽くしているし、ぶっちゃけ滅茶苦茶で何も残っては無かった。


「よっと」


 ゲッコーをしまって中に入ると、やはり凄い破壊され様だ。


 そこら中に破壊された部品やら残骸が散乱していて、元の様相が全く分からない。てか足の踏み場も無い状況そのものだった。


 相当徹底的に破壊したんだろうな。やったのは眼帯野郎で間違いないけど、何でここまで徹底的に破壊したのだろうな。


 エレベーターを破壊したのはダイを追って来させない為だとして、ここを破壊した目的は何だ? 


 これもダイの足し止め目的か? それとも―――


 ―――ぞわっ


「……何かいる」


 ああ、何かいるな。


 ゲッコーで見た時も、今見渡す限りも、無人機らしい姿はどこにもいない。なのにこの“ぞわっ”とする嫌な感覚。


 これは、波動兵器の感覚だ。


 散々波動砲に苦しめられてきたダイは感覚的に波動兵器を認識できるようになっている。この“ぞわっ”と来る嫌な感覚は波動兵器特有のものだ。


 しかしフロアを見渡す限り敵影は無い。フロアは破壊され尽くして色々散乱してるけど、歩兵機が隠れられる場所は何処にも無い。


 見当たらない敵、と言うより見えない敵か。それに波動兵器を使っているとすれば、考えられるのはあいつしかいない。


「……モヒカン頭無し。ジャマー!」


 ダイは感覚で敵のいる凡その位置を定めて、そこにジャマーブラストを照射した。


 そしたら予想は的中、透明化を解いて姿を現したモヒカン頭無しがそこにいた。


 モヒカン頭無し、無人機の中で唯一波動兵器を応用して透明化する機能を持った奴だが、生憎ダイが得た超感覚の前にそんなものは無駄さ。


 そしてモヒカン頭無しはジャマーを照射してやると起動も静止して透明化も解除される。ここ2ヶ月の間で対処方は熟知済みなんだよ。


 そして静止したモヒカン頭無し目掛けてライフルを2、3発発砲。それでモヒカン頭無しは大破した。


「ふぅ、楽勝だ」


 だな。もはやモヒカン頭無し程度では相手にならないぜ。かと言って眼帯野郎が待ち構えていられても困るけど。


 さて、邪魔者もいなくなった事だし、これで心置きなく―――


 ―――ざわっ


「っ!?」

 っ!?


 まだ、いる?


 しかも……真後ろ!?


「うぎゃぁあああああ!?」


 咄嗟に飛び退くと、さっきまでダイのいた場所に何かグサリと刺さった。


 直ぐにジャマーを当ててみると、そこには姿を現したモヒカン頭無しが、モヒカン状の鋭利な刃を振り落としていた。まるでお辞儀でもするように。


 あのモヒカン、ああやって使うんだな。


 まさかの奇襲に驚かされたが、コイツもライフルを数発撃って撃破する。奇襲さえされなければ恐るるに足らない。


 奇襲さえなければ……って、それがコイツらの真骨頂だったな。


「ああ、ビックリしたぁ〜……でもまさか、他にも?」


 嫌な予感がしたダイは感覚を研ぎ澄ませてフロア全体の気配を察知する。するとやっぱりと言うか、他にもモヒカン頭無しの気配があと1機……


 ―――ざわっ


 ―――ざわざわっ


 ―――ざわざわざわざわざわっ


 ……1機どころじゃねぇーぞ。


 なんかすげぇー数のモヒカン頭無しがいるんだけど、どうなってんだ?


 まさか本当にダイは来ると予想して待ち構えていたのか? ……バカな。


「……4、5、……8機はいるなぁ」


 マジかぁ。ここ最近は多くても3、4機編成の四本脚だけだったのに。それ以外はほぼ単独だったから油断してたな。


 久々の数の暴力か。しかし8機程度なら何とかなるだろ。例え透明化するモヒカン頭無しだろうと。


「これを使ってみるか」


 ダイはシールドを手に取った。眼帯野郎からくすねた波動シールドだが今までの物とは少し違う。


 使い易いようにコンパクトにした波動シールドだ。今まではイングリッドの全身を覆う程の大型だったが、今は片手でも扱い易いよう一回り小さくなった。


 ここ2ヶ月の間にダイは波動シールドの構造についても徹底的に調べ尽くしていた。その結果シールドの構造や波動兵器の機構なんかも凡そ分かりかけていたんだ。


 ただ波動兵器の核となる部分はブラックボックス化されていて全く分からなかったけど、逆にこのブラックボックスさえあれば波動兵器を利用できるかもしれない域には達した。


 なので波動兵器の機能を残しつつ、シールドを今よりも扱い易いようにコンパクト化した新型の波動シールドがこれなのだ。


 まぁぶっちゃけ小さくなっただけなんだが、しかし整備技術を独学で学んで、たった2ヶ月でこの成果は大したものだろ。


 案外ダイは整備士の方が向いているのかもしれないな。


 そしてその新型の波動シールドを使って何をするかと言うと、足元に散乱している部品やら残骸やらをシールドで薙ぎ払ったんだ。


「でりゃぁー!」


 シールドで薙ぎ払えば、波動の力で弾かれるように飛ばされる。それをフロア全体に飛ぶように薙ぎ払うと、いくつかの場所で部品やら残骸やらが何かに当たった。


 もちろん当たったのは透明化したモヒカン頭無しだ。ダイはその瞬間を逃さず、流すようにライフルをフルオート連射した。


 その連射だけで3機ものモヒカン頭無しを撃破に成功、倒し損ねた奴もジャマーで静止させてから撃破。


 まずは4機、一気に半数程の撃破に成功した。やはり何とかなりそうだな。寧ろ楽勝か?


「よし、せっかく脱出ルートが見つかりそうなんだ。こんな所で、足止めをくらっていられるか!」


 ゴールを真近に感じたのか、ダイは一層気合いを入れて姿の見えない敵に挑んでいった。


 それからモヒカン頭無しを全滅させるのに、そう時間はかからなったけどな。

今更だけど、感覚的に波動兵器が分かるってスゲェー能力だよな。


一体どうやって身に付けた?


……ああ、怪獣にいじめられて身に付いたんだったな。


そう考えると当然の獲得スキルかもしれんな。


てか寧ろよく生きてたな、ダイ。

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