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第52話 “敵”と言う存在……知りたくない! ノーコメントで!!

ダイ視点(前半だけ)

『お前はもう歩兵機を棄てられない。“敵”に目をつけられているからな』


 最初の通信でマックスが言っていた、“敵”と言う名の存在。


 ずっと気になっていた。マックスはまだ知らない方がいいと言っていたけど、それって裏を返せばマックスは“敵”について知っていると言う事だ。


 なら何故隠す? 俺が“敵”について知る事は、マックスにとって何か不都合があるのか……あれ? そう言えば前にもこんな事がなかったか?


 ………………そうだ、マシナロイド計画。あの計画書を手に入れて、それで初めてマックスの本心を垣間見たんだ。


 マックスは、自分がどうなったのかを知るのが怖いと言っていた。……遠回しにだけど、でも自分が死んだかどうかも分からないままでいると言うのは想像を絶する恐怖なんだろうとは流石に分かる。


 そしてその事実を知るのは、より一層に勇気がいる事になる。俺だったら到底無理だ、気が狂ってしまう。


 “敵”についても同じ事が言えるなら、多分マックスが遭遇した歩兵機と言うのは、“敵”だったんだ。


 マックスは“敵”にやられて捕まったんだ。多分、ここプラントの何処かに。そして何かしらの手段を用いて俺をここに連れて来て、通信を繋いだ。


 つまりこのプラントは、“敵”のアジトだ。


 と言っても、元々は違うのだと思う。本来ならここは歩兵機の研究開発を目的とした普通のプラントだったのだろう。


 それに目をつけた“敵”が占領してアジトの1つとし、無人機の開発に着手したんだ。


 ならマシナロイド計画の計画書も“敵”が作成した事になる。あれには無人機の設計図が記させていたから……


「あれ? それはおかしいぞ」


 あの計画書はここの従業員スタッフに配られたもののようだったし。そもそも“敵”が作成した計画書をプラントのそこら中に放置しままにするのは変だ。


 ならやっぱりマシナロイド計画はこのプラントで最初から計画されていた事? だとしても何故隠しフロアみたいなところで無人機を作っていたんだ?


 それにここの人達が無人機を作っていたとしたら、無人機は“敵”とは関係無いって事になるけど。でも俺はそうは思えない。


 無人機は“敵”の勢力であると、俺の中で何かが訴えかけていたからだ。


 単なる勘でしかないし、そうだとすると色々と辻褄が合わなくなるのも確かだけど。でも何故だかそう思うのは俺の勘に何かしらの確信みたいなものがあるからだ。


 或いはマックスの記憶が反映されてきたからかもしれない。マックスは“敵”について知っているし、無人機が“敵”の勢力であるなら、それを知ってるマックスの記憶が俺に訴えかけているのだと考えたら色々合点がいく。


 もし本当に無人機が“敵”の勢力なのだとして、ならどうしてここで開発された無人機がここを占領した“敵”の勢力になった?


 “敵”とこのプラントには初めから何かしらの繋がりがあったのか? いや、だとしたら占領する必要は無いよな。


 なら元々プラントで行われていた計画も、“敵”が目を付けて引き継いだのか? それもおかしい、あまりにも“敵”側にとって都合が良過ぎるだろ。


 ダメだ。考えれば考えるほど泥沼にはまっていくみたいで、余計に分からなくなる。


 そもそも“敵”って一体何なんだ? 個人、では無いと思う。なら組織か、まさかとは思うけど国家とかじゃないだろうな?


 “敵”の全貌も分からなければ規模も脅威も分からないし、無人機だってどれ程揃えてるかも分かったもんじゃない。


 まぁ俺がどうこうできる相手で無いのは確かだけど……え?


 あれ? 待てよ……俺がどうこうできる相手で無いって、それってまさか……え、まさか……


「か、かかかかか……怪獣!?」


 まさか、まさかまさかまさか……“敵”って、怪獣の事だったのか!?


 …………


 ………………


 ……………………


 ちょっと待て、落ち着こう。一旦落ち着いて色々整理しよう。


 ……よくよく考えたら、このプラント全体を見ても怪獣の右に出る奴なんていないだろ。あれ1機で世界征服も不可能じゃない気がするし。……ヤバ。


 ヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバヤバ。


 万が一あんな怪獣が世に出てきたら……日本なら2、3日で滅ぼせるよな。


 しかもあの怪獣、絶対1機だけじゃない。他にも何機かいる筈だ、無人機の真骨頂は個々の性能より数の暴力だから。


 そもそも怪獣を相手にどう戦うんだ? 歩兵機は(ろく)に普及してないし、戦車や戦闘機じゃ話にならないのは目に見えている。


 対抗手段があるとすればガ〇ダムとかマク〇スを使うしか……って、ふざけてる場合かぁ! 真面目に考えろ、真面目に!


 真面目に……考えると、核ミサイルって事になるよなぁ。


 あの怪獣を倒す事が出来るとしたら核ミサイルを使う以外に考えられないし、それで破壊できるかどうかも怪しいけど。でもそれは問答無用で却下だ。


 怪獣は地上を歩く。なら核ミサイルは怪獣がいる地上に落とされると言う事だ。


 1機だけならまだしも何機もの怪獣が地上の各国で現れて、それで何発もの核ミサイルが世界中に落とされたとしたら……世界の終わりだよ、馬鹿野郎!


 ……ちょっとこれ、どうするんだよ? 世界規模で詰みになってるじゃん。


 と言っても、まだ憶測の域を出ないけど的外れって事も無いと思う。“敵”の全貌はまだ分からないままだけど、怪獣が“敵”戦力の中心にいる事はまず間違いない。


 怪獣が戦力の中心って、そんな相手にどうしろって言うんだよ? 対抗できる戦力なんてある訳がない、一方的に蹂躙されてしまうのが落ちだ。


 そんなの世界征服じゃないか。それも救いも希望も何も無い、圧倒的暴力による征服だ。


 俺達はその“敵”に征服されるしか無いって言うのか?


 それじゃあまるで宇宙から来たエイリアンの支配者か、或いは異世界から来た魔王の軍勢のやる事だ。それともそれが“敵”の正体だとでも言うのか?


「ヤバァ……」


 ダメだ、これ。完全に投了ものだよ。






 ダイの推理は凡そ正解と言っていい。


 確かに“敵”は怪獣を主戦力とした強大な存在だ。しかもその怪獣は量産が進められている。


 ただ、怪獣だけで全世界を蹂躙できると言うのは言い過ぎだ。確かに怪獣の戦闘力は計り知れないが、それだけで世界を征服できる程の力は無い。


 まぁ数が揃えば話は別だが数十機では少ない、百機以上は必要だ。


 たがな、“敵”はそれだけの数だけを用意する準備はできてるし、しかも脅威はそれだけでは無い。


 つまるところダイが想像してる通り“敵”はとんでもない奴らだって事だ。


 俺はそんな“敵”の実体を知っていた。こんな状態になる前にな。


 白状すると俺が今の状態に陥ったのは歩兵機に襲われたからだ。それもこのプラントでな。


 俺がアメリカ軍特殊部隊ディガロの兵士としてこのプラントに来たのは調査任務の為だった。


 このプラントで何かよからぬ事をしているとの報告を得て、プラントから最も近い日本駐留部隊の俺達に白羽の矢が立ったのが任務の始まりだ。


 それでプラントに潜入した。当時は怪獣も無人機もいなかったし、従業員スタッフも普通にいたからな。俺達も従業員スタッフに扮して潜入調査を行ったよ。


 長い調査期間だったが、その大半は殆ど無駄に終わり別段調査に進展は表れなかった。


 隊長もそろそろ潮時だと考えたらしくてな、頃合いを見て調査を切り上げようと言う話が出た。事件が起きたのはその直ぐ後だ。


 プラントでマシナロイド計画が立案されたのは。


 ただ、俺はその計画の全容を知らない。正規スタッフも知らない者は多く、マシナロイド計画の全容は一部の管理職の職員にか知らされて無かったんだ。


 だからマシナロイド計画の情報を盗み出す事にした。実行したのは隊長ともう1人、俺の後輩に当たるルーキーの2人だけだ。


 計画の全容を知った隊長は俺達に情報共有するよりも先に本部へ報告しようとした。だから俺はマシナロイド計画の全容を知ることはできなかった。


 それを知る前に、俺達は歩兵機に襲われてしまったからな。


 潜入調査がバレたんだ。よくある間抜けな話だが、それで今はこの様だ。自分がどうなっているのかも分からないし、仲間がどうなったのかも分かりゃしない。


 結局何も分からないのは今の状態になる前も後も変わらないって事だ。唯一“敵”に関する事を除いてな。


 “敵”。マシナロイド計画を立案した張本人であり、俺達を襲った歩兵機を操っていた者。俺はその敵を知っていた……と言うより、知ってしまったんだ。


 歩兵機に襲われた時、俺は為す術も無くやられた訳じゃない。それなりに抵抗はしたさ。


 抵抗して、追い詰められて、そしてやられた。しかし抵抗したが故に俺は知ってしまったんだ、“敵”の存在の何たるかについてな。


 もしもそれが普通の歩兵機だったなら、俺の必死の抵抗も報われたかもしれない。だがその歩兵機は違った。常識を逸脱した、異質の歩兵機だったんだ。


 そんな未知の兵器に襲われたから、この様さ。まぁこの様がどう言う様なのかはも分からないんだけどな。


 故にだ。そんな“敵”の存在を知ってしまったからかもしれない。俺が真実に迫る事へ臆病になっているのは。


 マシナロイド計画の全容をダイに知られたくなかった理由もそこにある。俺自身と言うより、“敵”の存在に近付く事が、俺には出来ないんだ。


 何故なら、その“敵”は―――


「……うがぁー!!」


 ―――って、うぉおおい!? またどうした、ダイ?


「ええい、もう考えるのは止めだ止めだ! だいたいエイリアンだとか魔王だとかがいたとして、俺に何が出来るって言うんだよ! 怪獣1体にすら手も足も出ないんだぞ!!」


 ……ああ、まぁたヤケを起こしやがったな。


 こりゃ“敵”の存在に関しては、まだ教えない方がいいな。俺でも臆病風に吹かれたんだ、今のダイじゃ容量(キャパ)オーバーで発狂するかもしれん。


 今暫くは俺の胸の内に留めておくとしよう。


「とにかく、俺はここを出るっ! ここ出て、歩兵機なんか捨ててやる! “敵”の事なんか知った事かぁ!!」


 ああ、それでいい。今はそれで……って、いい訳が無いだろ!!


 歩兵機を捨てるとか、まだそんな事を抜かしやがるか。俺は許さんぞ。絶対に許さんからな。


 そもそもだぞ、ヤケを起こして忘れてるようだが前にも言ったよな? お前はもう歩兵機を棄てられない、“敵”に目をつけられてるって。


 “敵”に目をつけられてんのに歩兵機なんか捨ててみろ。それこそ冗談抜きで詰みだからな! な!!

実際問題、怪獣みたいな歩兵機が世に出たらどうなるんだろうな。


普通に歩けるゴツい脚。やたらと硬い装甲。1発の威力がエゲツない波動砲に反則級の波動光線。+αの何か。


しかもこれが数で押し寄せてくるとしたら……想像しただけで死ねるぞ。

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