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第51話 詰みました……これで何度目? ……多分10回目

 システム補助52%


「ヤバァ……」


 地下8階の拠点にて、ダイは追い詰められていた。


 もう何度目になるか分からない詰みの状態だったが、しかし今度ばかりは本当にどうにもならなさそうだった。マジでヤバいんだわ、これが。


 実を言うとな、あれからもう2ヶ月が過ぎた。2ヶ月だ。早いもので、このプラントに来てからだと3ヶ月と言う事になるが。


 しかし2ヶ月経ってシステム補助が4%しか減らなかったのはちょっと残念だが、しかし今はそんな事も言ってられない。緊急事態なんだ。


 何が緊急事態かと言うとだな……あ、別に無人機が大量に攻めて来るとか、食料が底を尽きたとか、そう言うんじゃ無いぞ。


 そもそも無人機が大量に攻めて来ると言う事は、はっきり言って有り得ない。


 ここ2ヶ月の間でシステム補助の減り幅はたったの4%、それだけ成長する程の無人機との戦闘は無かったと言う訳だ。


 全階層を通じて一番多発したのは四本脚との戦闘だ。主に3、4機編成で行動する奴らだが、ぶっちゃけ今のダイの敵では無かった。


 恐竜や大頭無しみたいな中ボスクラスが現れたなら違ってたかもしれないけど、生憎遭遇するのは楽勝できる相手ばかりで手応えが全然無かった。


 この2ヶ月間プラント中を探索して、新種の無人機も2種類現れたけど。しかしそれも楽勝だったから達成感も無いしシステム補助の数値も下がらないんだわ。


 その新種は、1つはまんまバイクだった。ロードスポーツタイプのバイクで機動力の特化したらしく、高速機動を活かしてマシンガンと丸ノコギリ状の前輪で攻撃してきたけど、超速球手榴弾を投げたら簡単撃破した。


 もう1つは一本脚のピョンピョン飛び跳ねる機体だった。器用に一本の脚で壁や天井を飛び跳ねるからライフルも手榴弾も当たらなくて厄介だったけど、ジャマーなら当てられたから簡単撃破した。


 故に無人機が大量に攻めて来る事は無いんだ、その都度その都度で撃破しまくってるから。それに心成しか、出没する無人機の数も減った気がするしな。


「ヤバァ……」


 ヤバァと言ってはいるが、食料問題の方も当面問題は無いぞ。……食料は、な。


 あれから更に地下4階を捜索したら、まだ見つけてなかった保存食をたくさん回収できたんだ。どうやら食料の類いは地下4階に集中してたみたいでな。


 それから2ヶ月、ちゃんと食って肉が付いてきたダイは漸く木乃伊(ミイラ)から脱して、やっと人間らしい体型に戻れたんだ。


 ただちょっとな。正直リバウンドしてまた太るんじゃないかと危惧していたんだが、寧ろその逆だった。


 一度吐いたせいで若干の拒食気味にもなってな、加えて歩兵機も操縦しっ放しだからまだまだ瘦せっぽちなままなんだ。


 筋肉は付いてきてるが逞しさは感じられないし、背も低い方だからかなり華奢(きゃしゃ)になってしまった。もうちょっと肉付けた方がいいと思うんだが、まぁデブでも木乃伊でも無いだけマシだと思えばいいか。


 やっと主人公らしい見られた姿になれた訳だがしかし、だがしかしだ。悲しいかな得るものがあると失うものもあるのが世の摂理みたいでな。


 ダイは今、大事なものを失ってしまったんだ。


「ヤバァ……」


 実は髪の毛がな、東洋人独特の真っ黒な髪の毛がな、色が薄くなったと言うか灰色みがかっていると言うか……端的に言うとな、白髪(しらが)が出てきたんだ。


 白髪……白髪って……ダイはまだ16歳の小僧だぞ。思春期真盛りの時期に更年期特有の白髪はないだろうよ……。


 今思い返せばそれ(白髪)相応の苦労がこのプラントであったのは確かだが……てか、苦労しか無かったな。それも死ぬような苦労ばかりで。


 ダイにしてみれば溜まったもんじゃ無かっただろう。突然こんな所に連れて来られて、何度も死ぬ思いをさせられて……そりゃ白髪も出るわな。


 全く、一体誰のせいで……ああ、俺か。


 まぁそれは置いといて、しかしこれはヤバい。この歳で白髪は流石にちょっとヤバい……いや、ちょっとどころじゃないよな。


 まともな体型を手に入れた代償が白髪って……神様どんだけ残酷なんだよ。


「ヤバァ……」


 しかしだけどな、ダイがさっきからヤバァ……ヤバァ……とぶつぶつ呟いているのは白髪の件とは関係無いんだよな、これが。


 と言うか妥協主義のダイが今更白髪程度で動じる筈も無かった。俺の主観では十分動じるべき事案なのだが。


 では何がヤバァ……なのかと言うと―――出口が見つからなかったんだ。


「ヤバァ……ヤバァ……ヤバァ……」


 そう、見つからなかった。この2ヶ月をかけてダイはプラントの地下4階から7階を、ついでに8階までも調べ直した。その結果、出口は見つからないと言う結論に至った訳だ。


 厳密には別ルートの出口が、無かったんだ。正規ルートは怪獣が待ち構えているから通れないし、しかしそうなるとこのプラントから脱出する手段が無くなる。


 故に緊急事態、追い詰められた現状なんだ。


 別ルートが見つからないとあっては残された道は2つしかない。1つは、この地下プラントで野垂れ死ぬか。つまりギブアップだ。


 もう1つは、決死覚悟で正規ルートに行き、地下3階の怪獣に挑むか……寧ろそれ有りじゃね?


「無いわぁー!!」


 うぉおおい、どうしたダイ!?


「怪獣に挑むとか、そんなの絶対無いわ! 出会い頭に瞬殺されるわ!! それとも死ねってかぁ!?」


 …………。


 俺の意思が通じたのか、たまたま俺と同じ事を考えてたのかは分からないが、ダイはとにかく怪獣との戦闘を拒否っていた。


 そりゃ冷静に考えれば機体の性能は雲泥の差だ、常識的な観点で言うと万に一つも勝ち目は無い。


 しかし、それは今までだってそうだった。そんな圧倒的な差を、ダイは急激に身につけた実力や、あの手この手の策も駆使して、果ては奇跡までをも起こして勝ち抜いてきたんだ。


 だから俺は思う、今のダイなら100%勝てないと言う事は無いだろうと。まぁ99.9%は勝てないけどな。


 ただそれ以前に怪獣と戦うには、何よりもダイの気の持ちようが問題だった。


 2度目の相対で波動光線なるものを目の当たりにしたせいで、かなり心の深いところに傷を負わされたからな。もう戦う前から気持ちで負けていた。


 だから、怪獣に挑むと言うのは無しになった。しかしダイよ、ならばここでくたばる事を選ぶのか?


 いくら妥協主義だからって、それはマジで止めてくれよ。


「ああ、どうしよう……いっそありったけの爆薬を使って天井に穴を空けるか」


 突貫工事かよ。それも止めた方がいいと思うぞ、地下で爆破は落盤の気配しかしないし。


「でもそれで空かなかったら今度こそ手詰まりだし。それに貴重な爆薬は無くなってしまうのはいただけないなぁ」


 思い留まるか? それとも意を決して行動に出るか? どちらに行き着く、ダイ?


「こう言うの何て言うんだっけ? 八方美人?」


 八方塞がりだ馬鹿野郎。だが今の場合、進むも地獄退くも地獄が適切だろうな。


 行き着く先はどっちも地獄だが、地獄に至る経緯はまるで違う。それをどう選択するかがダイに試されるな。


 さぁ、どうするダイ?


「……あれ、そう言えば前にも爆破して通路を開通したっけ?」


 ああ、あったあった。確かあれは地下7階を探索してた頃の事だ。


 大頭無しのフロアへ行く為の通路を塞いでしまったから、迂回して別ルートを探した時に壁を爆破して隠しフロアを発見したんだ。


 その後であの眼帯野郎と再会してしまったんだよな。全くあれにはビビらされたもんだぜ。


「ああ、そうだ。眼帯野郎と再戦した時だ。まさかあんな所で眼帯野郎に遭遇するなんて……」


 確かにあの時も地味に苦戦したな。本当にあの手この手を駆使して何とか勝てたけど、正攻法でやり合えばまず間違いなく勝てなかったし。


 本当によく勝てたよなぁー。その勢いで怪獣にも挑んでしまえば……


「……待てよ」

 ……待てよ。


 眼帯野郎には勝ったが、その後はどうなった? 確か眼帯野郎はまだ生きていて、不意をつかれて逃げられた。


 ……何処へ? 眼帯野郎は何処へ逃げた。


「……エレベーターだ。眼帯野郎はエレベーターに乗って上に逃げたんだ」


 そうだ。それでダイも追跡しようとしたが、エレベーターは爆破されて瓦礫に埋もれてしまった。


 これのせいで追跡を断念したんだが、しかしその瓦礫を撤去すれば……エレベーターのシャフトを通る事はできるんじゃないか?


 だとしたらその先に眼帯野郎がプラントへ出入りする為の通用口がある筈だ。そうでなかったら眼帯野郎がこのプラントに現れた説明がつかない。


 これはもしかしたら……進むも地獄退くも地獄、でも迂回すれば天国とか有り得るんじゃないか?


「よし、隠しフロアだっ! 隠しフロアへ行こう!」


 そうしてダイは直ぐに行動に出た。このプラントを出るには、もうそれしか無さそうだからな。






 それからダイは急いで隠しフロアに向かったが、その前に一度地下4階に立ち寄っていた。


 目的は武器庫だ。隠しフロアの瓦礫を撤去するのに何かいい物はないかと思ってな。それで色々探したら、ハンマーが見つかった。


 歩兵機用の長柄なハンマーで、しかも片方が釘抜きになったネイルハンマーだ、瓦礫を掻き出すには都合が良さそうだな。


 ハンマーと言うと眼帯野郎のハンマーを思い出すけど、あれは戦闘用みたく槌が大きめに出来ていたが、こっちはバリバリ作業用って感じだ。まぁ戦闘に使えない事も無いけど。


 で、ダイはそのハンマーを持って再び地下7階の隠しフロアに来た。随分と久しぶりな感じがするぜ。実際はプラント探索の時に再度訪れていたんだけどな。


 どうやらここは無人機の生産場みたいで、四本脚を初めとした無人機を大量生産していた。そこを大々的にぶっ壊したから無人機が少なくなったんだろうけど。


 生産場はぶっ壊して出没する無人機は少なくなったけど、それでもいなくなるような事は無い。それどころか新種だって現れる始末だ。


 おそらくはここ以外の生産場、地下3階より上にあると思われるけど、そこで生産された奴らがダイの存在に気付いて襲いに来ているんだろう。


 もしそうなら怪獣を素通りできる別ルートが必ず存在する筈だ。鍵はこの隠しフロアにある、何が何でも見つけ出さないとな。


「しかし改めて考えると、この隠しフロアは不自然にできてるよなぁ」


 確かに、それは最初にこの隠しフロアに来た時にも感じた違和感だ。


 どうもこの隠しフロアだけ、プラントが建設された後で強引に設立したみたいな感じだったからな。


 単なる増築とかじゃなく、まるで一軒家の部屋の中に自家用車を無理矢理入れたみたいな、そんな有り得ないだろって言う感じの違和感だったからな。


「そもそもどうしてこんな所に無人機の生産場なんか作ったんだろ?」


 確かに、このプラントは色々疑問が多いが、この無人機を開発する生産場は特に何か変だ。


 プラント内の機械は止まっているのにここだけ普通に稼働していて、それに人目にもつかないよう隠しフロアみたいに隠蔽されているし。そもそもあれら無人機は人が乗る為のものでは無いだろ。


 ここにいた連中は、一体どう言う目的で無人機を開発したんだろうな……あれ?


「あれ? ちょっと待てよ……ここにいた人達が無人機を開発した、とは限らないんじゃないか?」


 そうだ。このプラントにはそこかしこに、コックピットの無いイングリッドがあった。


 何故コックピットだけが無いのかは知らないが、多分このプラントの主な目的はイングリッドの開発、研究、製造の筈。


 なのに今はそれが全て停止していて、代わりに強引な方向で隠しフロアが設置されて、そこで無人機の方を大量生産している。


 これは明らかにプラントの主旨そのものが変わってしまっているんじゃないのか?


 それにここの開発スタッフ全員が忽然と姿を消したのも、隠しフロアで無人機が製造されていると関係しているのかもしれない。


「例えば、誰かが無人機を開発する為このプラントに目を付けたとしたら……」


 もしそうなら、その誰かにとってここのスタッフは邪魔になる。だから消したのか?


 そして隠しフロアを人目につかない所へ強引に設立して、そして無人機の大量生産に漕ぎ着けた。このプラントの設備も最大限利用して。


 つまりは占領されたって事か。歩兵機の生産能力を無人機開発に活かす為に。


 無人機、これはどう言う見方をしても戦力だ。人を必要としない命令に従順な、確かな戦力に他ならない。


 なら何故そんな戦力を必要としている? わざわざプラントを占領してまで……戦争、か?


 そうで無いしても、それに準ずる目的がある筈。無人機を大量生産してる誰かは、この戦力を使って何らかの目的を遂行しようとしている。


 その目的は……まだ分からないな。それに敢えて無人機を使う理由も。


 無人機は有人機と違って電子攻撃にめっぽう弱い側面を持つ。実際ダイがジャマーブラストを使えば簡単に静止させられるし。


 それでも無人機を使う理由は何か? 余程電子攻撃への対策に自信があるのか、それとも単に人員が不足しているからか?


 何にしても、その誰かは何か大掛かりな計画を目論んでいる。それだけは確かな事だ。


 なら、その誰かとは誰だ? この地下プラントを占領して、数百人のスタッフを消してまで無人機を大量生産していた誰かとは?


「……“敵”だ」

「因みに新種の呼び名はバイクと一本脚に決定」


『毎回思うがダイ、お前のネーミングって単純過ぎやしねぇーか?』


「だったらマックスはどう呼び名を付けるんだよ?」


『ん〜……乗り手無して走るバイクだからノンライダー、あと脚が1つだからワンフット、とか?』


「それ、大して変わらなくないか?」


『やっぱそう思うか……』

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