表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/239

第50話 ダ~ラ~ダ~ラ~……ダラダラすな!

 システム補助56%


「Zzzz……Zzzz……」


 ダイは寝息をたててぐっすり眠っていた。地下8階の拠点で。


 目的の地下4階に到達してから、既に3日が経過している。だからと言う訳では無いが、今は拠点でぐっすり眠っているんだ。


 3日前、地下4階に到達したダイは、以前地下4階にいた時の移動軌跡を頼りに、食堂まで大急ぎに向かった。念願の食料がついに手に入ったんだ。


 空腹で気が狂いそうになっていたダイは我を忘れて念願の食料を食い荒らしたよ。およそ2週間ぶりのまともな食事だったからな。


 そりゃもう、飢えた野獣のように食い荒らしたさ。食い荒らして……吐いた。


 ペース配分も考えずに胃袋へ詰め込み過ぎたから、そのまま吐いてしまったんだ。


 備蓄があるとは言え、貴重な食糧を吐き戻しやがってからに。まぁそれでも全部は吐き戻さずに済んで、取り敢えず空腹感は治った。


 長かった。本当に本当に長かった。


 ぶっちゃけ地下8階に降り立った時は死ぬしかないと思ってたけどな。てか2週間(ろく)なものも食べずに、よく生きていられたよな。


 それを考えれば、この醜態は……ギリギリ目をつむってもいいだろう。


 それから食堂に簡易的なバリケードを施してダイは一旦眠りについた。空腹も無くなってぐっすり眠れたんだけど、色々やる事も多いから6時間の睡眠で留めておく。


 その後起きてからは残りの食料を全て地下8階の拠点に持って行ったんだ。活動拠点に移しておいた方が、何かと都合はいいからな。


 あと地下4階には他にも食堂らしき場所や、保管用の食料庫が幾つかあったんでな。食べられそうな物は全部掻っ攫って持って帰った。思いの外大漁だったぜ。


 地下4階まで来られた成果は想像以上に大きかったな。かなりの備蓄食料を手に入れられたし、この量だと余程大食いしなければ1年くらい持ちそうだ。


 それから随分無茶をさせたイングリッドを久々にメンテナンスドックで大々的に整備した。ここ2週間ほぼぶっ通しだったからな、流石に色々ガタが来ていた。


 恐竜戦で妙にエネルギーが直ぐ切れると思ってたが、整備してみりゃジェネレーターが交換せにゃならん程イカれてたわ。こんなので戦わされていたのかよ……。


 で、それらを全て終えて悠々と食事を終えてから、イングリッドのコックピットをリクライニングモードにしてぐっすり眠ってたら、軽く1日が経過して今に至る訳だ。


 起きろー、ダイ!


「Zzzzz……んあ、あぁ……もうこんな時間かぁ」


 故に3日目の朝(厳密には朝か夜かも分からない)、ダイは伸びをしてリクライニングモードを解除すると、レーダーに示された移動軌跡を確認する。


 当面の食糧問題も解決し、機体のメンテナンスも完了して、色々一段落したから新たに行動を起こさないとな。


 当初の目的、このプラントを出る事だ。


 もう1ヶ月以上このプラントに閉じ込められたままだからな、いい加減外に出たいと思うのは当然だろう。まぁ閉じ込めたのは俺だけど。


 ここでの生活にも随分慣れたけどな。トイレもあるし水道が通ってるから水浴びもできたし、地下4階で洗濯機置き場も見付けてな、それも地下8階に持ってきたから服も定期的に洗えてる。


 地味に生活環境は整いつつあるが、しかしいつまでもあると思うな備蓄食料と歩兵機の予備パーツ。


 まだ何処かに食料が残っているかもしれないが、それだって永遠にある訳では無いし2年以上経っているから腐っているものが大半だ。


 それに予備パーツ、コックピットの無いイングリッドがプラント中にいくらでもあったが、それだって使い続けていれば(いず)れ無くなる。ジェネレーターも永久機関と言う訳では無いんだし。


 タイムリミット的にはまだまだ余裕はあるけど、その辺の危機感をダイはちゃんと分かっていた。


「ふぁ~……さて、これからどうしようかなぁ」


 ……ちゃんと分かっていた、筈だ。


 プラントを出る。その目的を達成する為に脱出ルートを確保する必要があるのだが、まずはそのルートを見つけ出すところから始めないとならない。


 ぶっちゃけ言うと目星は付いている、プラントを脱出する正規のルートが。


 てか普通に上を目指して行けばいいんだけどな、地下4階を目指していたように。しかしそれは即ち、地下3階を通過せにゃならん事を意味している。


 地下3階。あの怪獣がいる地下3階を。


「……無いな、それは」


 この通り、ダイには怪獣と戦う選択肢が無い。機体の性能差は言うまでもなく、まともに挑めば何もできずに瞬殺される。……ははは、死ねってか。


 それにダイのメンタル的にもネックがある。2度目の遭遇でえげつないトラウマを刻まれたからな、実力云々以前に相対するだけで縮み上がってしまう。恐竜に遭遇した時のがいい例だ。


 つまり地下3階には行けない。別ルートで上を目指すしか無いんだ。


 別ルート、そればかりは目星も何も付いてない。となれば、足で探すしかないよな。


「……よし、まずは地下7階から調べていくか」


 そうしてまずは地下7階から調べていく事にした。地下8階はもう調べ尽くしていたし、調べるならまずは地下7階からだな。


 地下7階には大頭無しがいた。あのフロアに来たお陰で思いの外早く上に行けたけど、逆に言うなら未開のフロアがまだまだたくさんあると言う事だ。


 そう言う所に別ルートがあるかもしれないんだ。実際地下7階から6階にも、5階から4階へも、まさかのショートカットコースがあったんだからな。


 ならば、何かしらの別ルートがあっても不思議では無い筈だ。未開のフロアを隈なく探して、何としてでも見つけないと。


「まぁ時間に余裕はあるし、の〜んびりダラダラやるかぁ」


 のんびりすな! ダラダラすな!


 これ後々痛い目に合うパターンだろ。もっと気を引き締めろ。


 やっと一段落したところだって言うのに、全く。どうなっても知らねぇーぞ。






「ダ〜ラ〜ダ〜ラ〜……」


 ―――ズダダダダダダダ!(ライフルが撃たれる音)


「ダ〜ラ〜ダ〜ラ〜……」


 ―――ズシャァァァァァ!(ナイフが突き刺さる音)


「ダ〜ラ〜ダ〜ラ〜……」


 ―――ズドォーン!(手榴弾が爆発する音)


「ダ〜ラ〜ダ〜ラ〜……敵いないなぁ」


 いたよ。結構いたよ。瞬殺だったけど。


 出てきたしりから瞬殺してるから全然戦った感が無いし。撃破と言うよりもはや駆除だよ、これ。


 しかもやり方がえげつない。ダラダラ言ってる言動とは裏腹に狂戦士みたいな荒れ狂う戦いっぷりで、撃破された無人機がエグい事になってるし。


 前言撤回だ。もうちょっと気楽に行こうぜ……ダイ。


「なんかいないかなぁ~……あっ」


 そんな時に見つけたのは、出っ腹だった。


 ボヨンとでた腹に腹巻き状のレールと、その上を高速で移動する2つの大型シールドで防御力に特化した無人機だ。


 本来なら誘き寄せて真上からナイフでぐさりとやるのが定番なんだが、しかしダイはここで―――


「うりゃぁー!」


 手榴弾を投げた。恐竜戦でたたき出した超速球手榴弾だ。


 時速500kmに達する速さの手榴弾を前にガードも迎撃も間に合わず、出っ腹はあっさりと爆破された。


「う~ん……もうちょっといけるかな?」


 あっさり撃破した出っ腹に特別感想も無く、ダイは今の投球について考察していた。


 拠点でメンテナンス作業に勤しんでいる合間にダイは超速球手榴弾を完全にものにしていた。凡ミスさえ無ければ失敗する事は無い程度には十分投げられる。


 ただこの超速球手榴弾には幾つか制約があった。イングリッドにしてもダイ自身にしても肩に負担が掛かる、連続で投げれるのは3球までが限度ってところだ。


 まぁダイの肩は休ませれば回復するし、イングリッドの肩は整備すれば直る。単に実戦では3球連続で投げなければいいってだけだ。


 あと時速500kmにもなる超速球手榴弾だが、これもあくまで最速だ。飛距離に応じて減速するし、それが手投げだと劇的に遅くなる。


 だからなるべく近距離で使わないと効果が出ないのも問題だ。ダイはその有効距離を考察していたんだ。


「次はもう10mくらい離れて投げてみるか。次はどこかな~?」


 本当に余裕だな。ここへ来た当初とは見違えるぜ。……まぁそれだけ地獄を見てきたから当然かもしれないんだけどな。


 そんなこんなで地下7階の探索を進めていって、無人機相手に投げた超速球手榴弾の有効距離も正確に分かりつつあった。


 勿論別ルートの探索も怠っていないが、しかしショートカットコースが見つかっても地下6階までしか行けないものばかりだ。


 考えてみれば当然だろ。別ルートを探すなら、まずは地下3階から最も近い地下4階から探すべきなんだ。わざわざ下から順に探す必要は無い。


「……やっぱ先に上から探すか」


 それがいい。てか、そうしろ。非効率的な事をするな。大体―――


 ―――ぞわっ


「っ!?」

 っ!?


 瞬時に後ろを振り返ってみたが、そこはただの通路で何もいなかった。


 歩兵機には狭い通路だ。隠れる場所もないし、何かいたら直ぐに見つかる。それにレーダーにも反応は無い。


 ならば、単に気のせいだな―――


 ―――ぞわっ


「っ!?!?」

 っ!?!?


 また振り返ってみるがやはり何もいない、疲れているのか? 長いこと眠ってたせいでボケたのか、長期間の空腹地獄で感覚が麻痺したのか。


 どちらにしても余りいい傾向とは言えないな。しっかり気を引き締め直して―――


 ―――ぞわっ


「やっぱり何かいるー!!」


 流石にこれは気のせいじゃないっ! 撃て、ダイ! 何もない通路だけど、とにかく撃てぇ!!


 俺の気持ちが通じたのか、ダイは振り返ってライフルをフルオートで乱射した。何もない通路にな。


 すると弾が何もない空間に着弾し、ひび割れを起こす。空間にひび割れって何だ?


 しかし直ぐに答えは出た。ひび割れたのは空間じゃなくて、透明化した無人機の外装だったんだ。


 透明化。そう、その無人機は透明化していた。初めて見る機能だったが、しかし透明化したそいつは初めて見る機種では無かった。


「あ、頭無し!?」


 どういう訳か、そいつは頭無しだった。しかもモヒカンの。


 何故か首の無い胴体の上にモヒカンが添えられていた。かなり趣味っぽい気もするが、おそらくアンテナか何かのパーツなのだろう。


 透明化するのには驚かされたが、しかし姿が見えればこっちのもんだ。ダイは乱射しているライフルをモヒカン頭無しに集中砲火した。


 そしてモヒカン頭無しは反撃する間も無く動かなくなった。銃撃を止め、慎重に近付いて機能停止を確認する。


 念の為伏兵がいないか通路に向けてレーザーを乱射したけど、どうやら他にはいないみたいだ。


「ふぅ、ビックリした」


 それからもう一度撃破したモヒカン頭無しをよく見る。どう見てもこの無人機は頭無しだ、頭部の無い人型で体格もイングリッドより一回り小さい頭無し。


 ただ普通の頭無しとの相違点はモヒカンだけでは無かった。肘に鋭利なブレードが付いているし、よく見ればモヒカンも鎌のように内反りになったブレードだ。


 手には爪もあるし、近接格闘戦に特化した頭無しと言ったところか。しかしコイツは他頭無しとは決定的に違う、透明化する奴だ。


「……まさか」


 ダイは頭無しの胴体の外装を引き剥がした。すると外装の下に、頭無しにはある筈のジャマーブラストが存在しなかったんだ。


 ジャマーブラストが存在しない代わりに、別の物が存在した。


 [クリアフォーム]


 それがスキャニングで表示された、ジャマーブラストの代わりに存在した物だった。


 おそらくこれが透明化する機能なのだろう。モヒカン頭無しはジャマーの代わりにこれを搭載して透明化していたんだ。


 透明化して音も無く接近し、ブレードで斬る。思いっ切り暗殺向けの装備だな。


 しかしこのクリアフォームと言う装備、波動砲の技術が用いられている。多分波動で空間を歪めて視覚に映らないようにしているんだろうな。


 だがダイは波動兵器が来れば感覚的に分かる。怪獣にやられて身に付いた悲劇の能力があるからな、クリアフォームを使ってたら奇襲は成功しないぜ。


「こんな無人機までいたのか。こりゃあ、まだまだ知らない無人機が出て来そうだな。もう少し気を引き締めよう」


 そうしろ。余裕こいてるけど、ヘマをしたら一瞬であの世行きになるのは最初から変わんねぇーんだ。無人機どもが容赦無く殺しに掛かるのは良く分かってるだろ。


 地下8階の拠点にしたって絶対に安心できるとは限ら無いんだ。さっさと出口を見付けて、このプラントから脱出しねぇーとな。


 仕切り直しだ、気合い入れて行くぞ。

え? 木乃伊体型? 勿論今も持続中だぜ。食えるようにはなったけど、3日そこらで体型はそう変わらんよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ