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第48話 これは怪獣ですか? いえ、それは恐竜です……逃げちゃダメだ! いや逃げろぉおおおおお!!

 システム補助58%


 ズドォーン!


 開始早々にただならぬ爆発音からで申し訳ないが、別にダイのイングリッドが爆破された訳では無いぞ。


 爆破したのは、恐竜のチェーンガンの方だ。


「っしゃー! 次ぃー!」


 そしてそれを爆破したのは、まさかのダイだった。


 怒涛の回避劇の中でライフルをフルオート連射して恐竜の腹部にあるチェーンガンを狙い撃ったら、弾倉か何かに当たって小規模の爆発を起こしたんだ。


 恐竜が大破する程では無かったけどチェーンガンが破壊されただけでも幾分マシにはなった。(もっと)もそれは1機分の恐竜だけで、あとの6機はまだまだ撃ってくるけど。


「オラオラオラオラ、チェーンガンがなんぼの物じゃー! もっと波動砲撃って来いやぁー!!」


 そんな絶望的な状況に立たされていると言うのに、何故だかダイはハイテンションだった。


 既に体力は底をつき、いつ倒れてもおかしくない状態でありながら、なけなしの気力だけで魂燃やしながらイングリッドを操縦していたんだ。


 でもこれってさぁ、傍から見るとマジでヤバい感じなんだけど。


 何がヤバいって、追い詰められ過ぎてトランス状態に入ったダイが……何かに取り憑かれたかのような戦闘狂の暴れ方をしてやがんだよ。


 さっきまで逃げ回るしか無かったと言うのに、体力が底をついた途端に何故かライフルで反撃するようになったんだ。


「うぉりゃあああああ!!」


 別に反撃の余裕ができた訳じゃない。ほぼ決死覚悟での反撃だから、どちらかと言うとやけくそになったようなもんだ。


 故に状況は結局マズいままだ。てかダイは体力が尽きて疲労困憊、うっかりぽっくりあの世に連れて行かれてもおかしくない状態なんだぞ。


 目は霞んできてるし手足も思うように動かなくなりつつあるし、意識もハイテンションだがふわふわになってるし……いや、ふわふわしてるからハイテンションなのかもな。


 こんな状態でも辛うじて戦えてるのが不思議過ぎて逆に怖いんだけども。マジで怖いんだけども!


 だからと言って反撃を止める訳にはいかない。そんな事したら恐竜どもがたちまち波動砲で―――


『死ぬがよい』


 ―――って言って(くる訳ねぇーけど)集中砲火してくるに違いねぇーし。マジで死ねってか?


「死にさらせぇぇぇぇぇ!!」


 しかしダイも凄い。ここに来てまた恐竜のチェーンガンを破壊するに到った。今は少しでも反撃したいところだ。


 それはいいんだが……なんか、ダイのキャラが変わってるんだけど、これってかなりヤバい傾向だよな。追い詰められて壊れたのか、体力が尽きたと同時に頭がイッちゃってんのかは定かではねぇーけど。


 戦局は良い方向に転がっているかもしれないが、ダイのステータス的には絶対悪い方向に転がってる。だってこれ、どう見ても状態異常だろ?


「これで終わり……うぎゃぁ!」


 しかしそう上手く行く事はばかリでは無い。恐竜も波動砲を乱射してくるし、着弾時の衝撃波に煽られたらイングリッドでも簡単に吹っ飛ばされるし。ってか、そうなったし。


 流石に調子乗り過ぎたか。だがダイも直ぐに体勢を立て直して走り出す。走り続けていないと狙い撃ちにされるからな。


 四本脚が相手なら蜂の巣にされたが、恐竜が相手だと1発でペシャンコだ。当たったらシャレじゃ済まねぇーぞ。


「そんな甘っちょろい攻撃が当たるかぁー! もっと気合い入れて撃って来いやぁー!!」


 煽るなっ! お前余裕見せてるけど実は全然余裕無いんだからな! 今だって―――


「―――あれ?」


 て言ってる傍からふらつきやがった!? ダイ、逃げろぉー!!


「うぎゃぁ! うぎゃぁ! うぎゃぁ! コノヤロー!!」


 ふらついた隙を狙われて恐竜が波動砲を撃って来やがったが、ダイは必死で飛び退きつつも反撃する。恐竜のチェーンガンを破壊するには到らないが、牽制程度にはなった。


 だがそこで事態は急変した。


「……え?」


 躓いたんだ。特に何もなかった場所でダイは躓いて転んでしまった。


 理由は分かってる。さっきのふらつきと言い、今の躓きと言い、こんなミスはダイにはあり得ない……と言えなくもないか。コイツは元々ポンコツだったし。


 だが原因はそんな理由じゃない、限界が来たんだ。ダイの肉体の、戦える限界が。


「うぎゃぁ! ちょ、ちょっと待っ……うぎゃぁあああああ!!」


 元々無理があったんだ。骨と皮しかない木乃伊(ミイラ)の身体で恐竜7機を相手に全力疾走で逃げ回りながら戦うなんてな。


 体力はとっくに底を尽きている。それを気力だけで騙し騙しやっていたとしも、騙せるのはダイの気持ちだけで身体は素直にへばってしまう。


 すなわち肉体の限界だ。ダイの身体が悲鳴をあげている、これはその兆候なんだ。


「うぎゃぁ! く、くそ! くそ、くそ、くそ、くそぉ!」


 そしてそんなダイの限界が来た瞬間を恐竜どもが見逃す筈も無かった。


 寧ろこれ幸いと言うかのように執拗に撃って来やがる。考え得る限り最悪の事態だ、このままじゃやられちまうぞ。


「くそ、くそ、くそ、コンチクショー!!」


 必死にライフルで牽制しているが、それも時間の問題だ。


 (ろく)に動かない身体、碌に働かない頭、おまけに疲労と空腹の苦行コンボ。


 これに耐えて今まで戦って来れた事の方が奇跡だったんだ。だがそれも限界に来てしまったが故に耐え切れ無くなってしまった。


「うがぁー……あっ?」


 そして遂には―――ライフルの弾まで無くなってしまった。


 予備弾倉? 替えてる暇なんかあるかぁ!


「うわぁあああああああああああああああ!!」


 ―――ズドドドドドドォーン!!


 牽制の止んだ標的を狙い撃つのは造作も無い事だ。元々ダイに躱す余力も残って無かったんだからな。


 そんな格好の的と化したダイを相手に、執拗なまでの集中砲火を浴びせた恐竜どもに容赦は無かった。無人機なだけに容赦も慈悲も何も無かったさ。


 しかも受けたのは波動砲、1発くらえばペシャンコにされる威力の波動砲を、それも何発もぶち込んで来やがったよ。


 死んだ、これは間違いなく。


 何発も波動砲を撃ち込んだせいで粉塵が巻き上がってしまったけれど、あれを受けてダイが生きているとは思え無かった。


 粉塵が晴れて視界がはっきりすると、案の定波動砲の直撃を受けて大破。胴体が見事なまでに抉れて悲惨な姿に変わり果てていた。


 ……恐竜がな。


「た、助かったぁ〜……」


 そしてやられた筈のダイはどう言う訳か無事だった。それどころかイングリッドには何一つ損傷は見当たらない。


 理由は一目瞭然だった。ダイは躱し切れなかった波動弾を、()()()()()()()()()()()()


 同じ波動の力を用いたシールドが波動砲を防ぐだけの防御力を有しているのは実証済みだった。問題はエネルギー切れで暫く使え無くなっていたが、それもたった今回復したんだ。


 そう、回復したんだよ。何時間にも感じられたオーバーヒートの期間から、漸くな。


 本当にギリギリだった。あと少し遅かったらシールドでは防ぎ切れず、諸共叩き潰されていたところだったぜ。こう言う時に限って悪運がいいのもダイらしいけどな。


 それで、何で代わりに恐竜がやられているかと言うとな、シールドでガードした波動弾が弾かれて恐竜に当たったんだ。まぁ、それはただの偶然だけど。


 しかし巨体の恐竜に躓いて倒れたダイの間には距離があり、シールドを覆い被さるようにガードした状態は床とほぼ平行になっている。


 恐竜が撃つ波動弾は緩やかに斜め下に放たれる。床と平行にあるシールドに当たれば、V字状に弾かれるのは当然だった。


 それが複数だ。複数の波動弾を弾いた事で、数発の流れ弾が恐竜にたまたま命中した。しかも2機も。


「2機……倒したのか? やった……やったぞ!」


 全ては単なる偶然の重なりだ。しかしこの偶然もダイが最後の最後まで諦めず、粘って堪え抜いたが故に成し得たた奇跡の賜物に他ならない。


 つまりダイの根性勝ちだ。よくやった、ダイ!


「やったやった、これなら……ああっ! 出入口が!?」


 気付けばフロアの出入口を塞いでいた恐竜の死骸も、今の流れ弾が当たって吹っ飛ばされていた。よって塞がっていた出入口が開通したんだ。


 エネルギーが回復した今なら、SWEMブースターも使える。ブーストを使えば一気に出入口まで辿り着けるだろう。


「よし、ブースト70%解放!」


 ダイはなるべくブーストを解放して一気に出入口まで向かった。あんまり解放し過ぎると制御できなくなるんでな、70%に留めておく。


 出入口の先は狭い通路だ、恐竜の巨体では追っては来れない。そうなりゃこっちのもんだ。


 この恐竜戦、切り抜けられるぞ。


「って、ブーストオフ! スタビブレーキ起動!」


 なにぃいいいいい!?


 コイツ姿勢制御型緊急停止(スタビブレーキ)機能を使って止まりやがった! 何やってんの、ダイ!?


「……何やってんだ、俺は?」


 だから何やってんだよ!? さっさと逃げろよ!


「ここまで来て、今更逃げるなんて無いだろ!」


 だぁあああああ、そっちかぁあああああ!


「マックスだって言ってたじゃないか、戦えって。戦って戦って戦って、行き着く所まで戦えって。だったらここで逃げていい筈が無い!」


 それだって限度があるだろ! お前分かってんのか、自分が今木乃伊だって事が!?


 最近は脳筋思考に寄りつつあると思ってたけど、ここまで闘争本能に駆られていたのか、馬鹿野郎!!


「それにこんな奴ら、野放しにしていたら後々面倒な事になるよな。今叩けるうちに叩いておかないと絶対後悔する」


 それは……そうかもしれない。


 ああもう、コンチクショー! こうなりゃやけだ、とことんやっちまえダイ!


「ここで終わりにしてやるぞ、恐竜どもぉ!」


 こうしてダイは未だ5機が健在の恐竜どもに突撃した。足元は覚束ないし、いつ倒れても不思議じゃないって言う状態で。


 絶対逃げた方が良かったと思う……。


 当然恐竜どももチェーンガンを乱射しながら波動砲を撃って来る。しかし幸いな事に、5機の内2機はチェーンガンが壊れた奴だ。


 故にチェーンガンの弾幕は半分以下に減って、回避は随分と楽になった。


 あとは波動砲だけだ。波動砲も基本的に回避だが今回はそれだけじゃない。撃ってくる波動砲をよ〜く見極めて、これだと言う波動弾をシールドでガードする。


「今だ!」


 ダイは見極めてた波動弾の1発をシールドでガードし、弾いて別の恐竜に当てた。呆気ない程簡単に当たって、一撃で撃破したぜ。


 恐竜は旋回力こそ高いが単純に移動する機動力はかなり低い。つまり鈍足だ。


 まぁあの巨体だから無理もないけど、そのお陰で波動砲は簡単に当たるし、耐久力があっても波動砲の威力に耐えられる程じゃ無かった。だからちゃんと見極めてシールドで弾いてしまえば簡単に撃破できる。


 ただシールドで弾くには正面からでは出来ない。大体入射角30°以下で受けないとシールドの表面で破裂するだけだし。


 あとシールドのエネルギーだけどな、大幅に持っていかれる事を懸念していたんだが、それは表面で破裂する時だけだった。弾くだけならそんなにエネルギーは持っていかれずに済むんだわ、これが。


 だから躓いた時に集中砲火を受けてもエネルギーロスが抑えられたって訳だ、弾くだけで済んだから。結局、物は使い用なんだな。


「っしゃあああああ! 2機目だぁ!」


 そうやって立て続けにもう1機撃破した。考えてみればこれって、奴らが経過していたFF(フレンドリーファイア)を利用したものなんだよな。


 奴らFFを警戒して射線上に味方がいる間は全く撃って来なかったけど、この惨状を見れば警戒し過ぎと言う事も無かったと思わされる。


 ダイのコンディションは最悪のままだが、しかしこの流れは良いかもしれない。ひょっとしたら全滅させられるか?


 しかし恐竜どももバカでは無かった。残り3機となった恐竜は鈍足ながらも移動して、全機がダイの正面に立ちはだかりやがった。


 波動弾は弾くとしても後方にしか弾けない。だから全機が正面に陣取られると波動弾を当てる戦法が取れないんだ。


「っ!」


 そんな時、ダイは足元でナイフを見つけた。最初の恐竜戦で落としたナイフだ。


 接近か。……やれるのか、ダイ?


「やってやる!」


 ダイは迷わずナイフを拾って突撃した。当然恐竜どもも波動砲を撃って来るが、それらを必死に躱しながら接近する。


 そして再び、2機の恐竜が対角線上にくる位置へ来た。この位置ならFFを警戒して砲撃を止めるのは承知の上さ。


 その隙にダイは、まだチェーンガンが生きてる恐竜に向かって突進した。砲撃はしないと言っても接近すれば恐竜の尻尾鉄球が炸裂するが―――


「ジャマー!」


 それもジャマーで動きを静止させれば済む話だ。


 静止した恐竜の背面上に飛び乗ると、その背中にシールドアタックを叩き込む。眼帯野郎が使った技だが、流石に中々の威力だ。一撃で外装を破損させられた。


 その破損させた箇所から恐竜のジェネレーターを見付ける。思った通り、動力炉はそこにあったか。ならそのジェネレーター目掛けて―――


「ナイフトゥミートゥー!」


 機重を掛けたナイフの突き落としでジェネレーターを突き刺した。その瞬間ジェネレーターが停止していき、恐竜から力が抜けたようにガクッと倒れる。


「やった……って、うぎゃぁ!」


 すかさず他の恐竜が撃って来やがった。直ぐに回避したけど、味方ごと撃って来たと言う事はこの恐竜は機能停止したと言う事か。


 如何にFFを警戒してると言っても機能停止したらただの残骸だからな。そうなれば遠慮なく撃てると言う事か。


 しかしこの状況はいい。残りはチェーンガンが使えなくなった恐竜2機だけ、シールドもブースターも復活してジャマーも駆使できれば十分勝機はある。


「よし、ブースト30%解放!」


 [エラー。エネルギー残量0、オーバーヒートにより緊急冷却中]


「えっ?」

 えっ?


 オーバーヒート? また?


 ……考えてみれば、いくら弾くだけなら減り幅が少ないと言っても限度はあるし、かなりシールドの使い方も荒っぽかったような、気もする。


 そして決め手はあのシールドアタックか。あれでエネルギー残量がごっそり持っていかれたのだろうな。


「そ、そんな、ここまで来て……あれ?」


 そしてダイの身体も立っていられなくなった。


 元々肉体の限界が来ていたのに無理を通し過ぎたんだ。とうとう誤魔化しも効かない、本当に限界だ。


 やっぱこれ勝ち目無い? ……逃げろぉぉぉぉぉ、ダイィー!!

忘れてると思うがダイは一応高カロリー輸液を飲んで2日分のカロリーは摂取してるんだけどな、輸液って血管に流すから吸収が早いんだけど胃に流すと吸収が遅いから実質まだ2日分のカロリーは取れて無いんだわ。だからもう体力は減るわ減るわで減る一方なんだよな……死ねってか?

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